【第三章】第九部分
実亜里が四方を囲まれると同時に、入場券販売員の前にも、能面を被った赤セーラー服がひとり立っていた。10メートルぐらいの距離を保っている。
体からはグレーの靄のようなものが出ており、全体的に姿はぼんやりと見える。
「この販売員に対して、ザコ悪魔がひとりで対峙するとはいい度胸ですよ。販売員は武闘派悪魔ですから、穏健派委員長の部下には、対天使以上に容赦しないですよ。覚悟するですよ。」
風が吹いて、能面の回りの靄が取れてきた。そこに見えたのは翁の能面であった。
「その能面、シュミが悪いですよ。せめて女子中学生はイケメン面を被るですよ。最低でもドラえもんかドラミちゃんにすべきですよ。」
入場券販売員の軽い挑発には、微塵も乗る様子のない翁能面。
「あなたに黙秘権はありますが、実社会では何も言わないと、窓際族予備校に入れられますですよ!相対魔法、術式・水、制限・オン。対象・翁能面悪魔、範囲・全身、時間・10秒、到級5。発動!」
水色の竜が現れて、入場券販売員の上空をぐるぐると回っている。
「まずは安売りスーパーの試食でもしてみるですよ。」
竜は翁能面に向かって飛んでいき、頭から体当たりした。体積比率で言えば、竜は翁能面の百倍ぐらいある。
当然、翁能面は吹っ飛ぶか、粉々に破壊されるしか選択肢がなかった。
『ドン!』という衝突音が響いた。後者が選ばれた?
数秒後。翁能面は現在地に止まっていた。
「当たった感触は良好、つまり手応えがあったですよ。でも地に足がしっかり着いてましたですよ。盤石な感じがしたですよ。大地に根が張るとは、こういうことを言うのでしょうかですよ。でもここは、大地ではなくゴミ地面ですから、根付くことはあり得ないですよ。」
「相対魔法、術式・火、制限・オン。対象・武闘派悪魔、範囲・全身、時間・10秒、到級3。発動!」
大きな炎が入場券販売員を襲ってきた。形は炎のままであったが、青色をしており、温度はかなり高いと思われる。
「はっ!」
入場券販売員は気合いを入れるような叫び声をあげて、竜を自分のところに呼び寄せた。
『ジュウウウウウウ~。』
蒸発した湯気が積乱雲のように立ち昇った。
「危なっかしいですよ。翁能面さんは到級3で、こちらは到級5ですよ。ツーランクも販売員の方が上ですよ。これはどうしたことでしょうかですよ。販売員がまさかのスランプに陥ったということでしょうかですよ。」
「相対魔法、術式・火、制限・オン。対象・武闘派悪魔、範囲・全身、時間・10秒、到級3。発動!」
再び青くて大きな炎が入場券販売員を襲ってきた。




