【第三章】第三部分
蒼い目、青い髪の女子、名詩魅が制服ではなく、深紅のスーツを着てゆっくりと現れて、説明台についた。録音用のマイクを少し調整してから、話し始めた。
「許嫁、参考人として、偽りのないこと、宣言する。」
「許嫁ってどういう意味ですか?ハアハア。」
さすがにこの一人称はツッコミするしかない。
「質問された。∴自分のこと、説明する。許嫁、かずちゃんの許嫁。ポッ。」
名詩魅の頬に赤信号が点滅した。よく見ると頬を膨らましたり、縮めたりして、点滅してるように見えた。
「かずちゃんとはどなたですか。ハアハア。」
「さらに質問された。∴実名出すの、恥ずかしい。ポッ、ポッ。でも回答する。人間の木賀世和人ちゃんである。」
「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「木賀世和人!?」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
芳香議員だけでなく、議員の多くが声を出した。
「静粛にしてください。参考人の答弁中です。」
すかさず委員長が大きな声を出したが、彼女の声も震えていた。
名詩魅は淡々と答弁を継続した。
「許嫁、人間界に15年間住んでいる。いろいろ調査したところ、天界と魔界の緩衝地帯である夢の島で、『あるもの』を発見した。足を上にして埋められていた。∴最初、捨てられたマネキン人形かと思った。」
「ハアハアハアハア。マネキン人形とはこれ如何に?ハアハアハアハアハアハアハアハア~。」
言葉使いもすっかりタメ口になってきた芳香議員。
「それ、天界の偽装。時間質量の残ってる人間の死体だった。つまり『埋蔵資源』。それ、時間質量としては残り少ないが、仕えるもの。∴魔界に与えたくないという天界の意思、感じられた。」
「ハアハアハアハア。まさか、そんなことはあるはずがない。天界との条約の中で、埋蔵資源があれば魔界に渡すとなっており、ある程度はもらっている。騙されているだけだ。ハアハアハアハアハアハアハアハア~。やりたい・・・。」
芳香議員は最後に言葉を付け加えた。目が吊り上がっている。
「許嫁は証拠も持っている。∴それを投影する。相対魔法、術式・水、制限・オン。対象・空気、範囲・縦3メートル×横5メートル、時間・3分、到級1。発動!」
水魔法で作られたスクリーンに、夢の島の映像が映された。そこには、土魔法でゴミ土壌を掘り起こす名詩魅がいた。映像上の名詩魅の指さす方向には、人間の死体の山が見えた。
スクリーンを見ながら、委員席で満足そうに髭を撫でる百鬼議員。
「これで条約批准はなしだな。」
「ハアハアハアハアハアハアハアハア~。ぶち壊したい。バキッ!」
芳香議員は空手で答弁席の机を破壊してしまった。
委員会での採決では、野党の武闘派が勝利した。条約批准反対の結論となった。
「委員長、いったい何をやってるんだ!」
与党の穏健派議員たちが委員長席に詰め寄って、議事運営について責め立てている。
しかし、採決の結果がこうなったのは、与党からも条約批准反対の票が流れたからであった。




