【第二章】第八部分
「さて、入場券販売員、聞きたいことがあるんだけど、教えてくれるかしら。」
会話の主導権は咲良にリターンした。
「販売員のスリーサイズなら聞かない方がいいですよ。」
入場券販売員は咲良のフラット胸部を見てニンマリした。慌てて胸を押さえた咲良。
たしかに入場券販売員>咲良という不等式は成立していた。
「ち、違うわよ。べ、別に負けてなんかいないわよ。目の錯覚よ。魔界の光が異常に屈折してるのよ。小さく見えてるだけなんだから。そんなことはどうでもいいの。入場券販売員は、このスケスケお兄ちゃんを元に戻す方法を知らないのかしら?」
「少なくとも販売員にはできませんですよ。でも『魔界の番人』と呼ばれるお婆ちゃんなら、治す方法を知ってるかもですよ。すごい魔力を持っている悪魔ですよ。」
「お婆ちゃん?なんだか頑固そうね。こちらの言うことを聞いてくれるかしら?」
「お姉ちゃん。どんな相手でも頼み込むしかないよ。他に手立てはないんだから。その婆ちゃんに会おうよ。」
「そうだよ。ボクもそのお婆ちゃんに会ったら、誠心誠意お願いするよ。」
「意見調整は終わったですよ。それでは魔界の番人のところに向かうですよ。」
「その婆ちゃんはどこにいるのよ。」
「魔界の最高峰クラスの山にいるそうですよ。山のどの辺りに住んでいるかは誰も知らないですよ。販売員も会ったことはありませんですよ。」
「その山の名前はなんて言うのよ。」
「腐士山と呼ばれてるですよ。」
「すごくイヤな感じの名前だわ。」
「腐というのは、ゴミ捨て場ということですよ。魔界の山の多くはゴミが固まってできたものですよ。単にゴミを重ねた山が多いですが、ゴミ捨て場が地殻変動で隆起して山になったものもあるですよ。腐士山は後者に当たるらしいですよ。」
「そういうことなの。わかったわ。善は急げよ。早く行きましょう。って、ここからどれぐらい離れているのよ?」
「かなり遠いですが、風魔法で飛んで行けばすぐに着くんじゃないかですよ。じーッ。」
入場券販売員はじっと咲良の顔を見ている。
「な、なによ。どんなに見ても何も出ないわよ。」
「何かをくださいとか言ってるんじゃないですよ。」
「わかってるわよ。出ないっていうのは、空を飛ぶような魔法は出ないってことよッ!」
「それですよ。素直になればいいのですよ。飛ぶなんてカンタンですよ。まともな魔法使いがふたりいるんだから大丈夫ですよ。じゃあ、こうするですよ。」
入場券販売員は和人をお姫様抱っこした。
「あわわ。こんな姿勢、恥ずかしいよ。」
「販売員の分際で、お兄ちゃんになんてことするんだよ。お兄ちゃんはみあが運ぶんだよ!」
「それは無理ですよ。ダメダメ天使は販売員にはゼッタイに乗らないですよ。」
「たしかに。仕方ないなあ。じゃあ、お姉ちゃんはみあの背中に乗ってくれる?」
「この組み合わせしかないわね。急ぎましょう。」
こうして二組は魔界の空に舞い上がって、フルスピードで雲の彼方へ飛んで行った。




