【第二章】第六部分
「不完全再構築が成功したわ。」
「それは敗北宣言みたいですよ?」
「いろいろお世話になったわね。今度はアタシからお礼をするわね。」
「ついに来るですよ、楽しみですよ。」
「相対魔法、術式・、制限・オン。対象・クソ販売員、範囲・全身、時間・1秒、到級3。発動!あれ?何も起こらないわ。」
「あれ。どうしたですよ。音沙汰ないですよ。商品仕入に失敗したかですよ?」
「お、おかしいわね。って、やっぱり、3秒超えはムリだったわ!」
「あら?もしかしたら魔法商品在庫は3秒ですかですよ。そんなに手元がないなら小売業はできないですよ。」
「きょ、今日はたまたま偶然レアでめったにない体調不良で保健室強制送還状態なだけなんだからねっ。」
「はいはい、よくわかりましたですよ。ならば、こちらからは値引きセールで十分ですよ。もったいない精神にピッタリですよ。相対魔法、術式・水、制限・オン。対象・無駄天使、範囲・頭、時間・3分、到級3。発動!」
再び水の竜が現れた。何もない場所で体をひねりながら優雅に空中を泳いでいる。
「聞いてないわよ、こんな戦い!一方的惨殺行為だわ。」
しゃがんで攻撃をよけた咲良。
「座っての雑誌立ち読みはダメですよ。って、それは座り読みが正しいですよ?なんか変ですよ。もうどうでもいいですよ。トドメで完売するですよ。」
逃げる咲良は身を隠す場所もなく、竜を避けようと、しゃがんだり、走ったりを繰り返すだけ。
「タダの人間が何するですよ。これは悪魔と天使の局地戦なのですよ。販売員はここで大勝利を収めて、その勢いで、夢の島を占領するですよ。」
「夢の島を占領?あんなところ、土地としての利用価値はないよ。」
「タダの人間はホント知識不足で愚かですよ。もったいない精神からすると、いくらでも付加価値を生み出すことができるですよ。天使は大したことはなかったですよ。魔界の厳しい訓練に比べたら月とスッポンポンですよ。魔界は天界を過度に恐れているのですよ。魔界穏健派の腰抜け連中が、天界がほぼ独占している時間質量のことを気にし過ぎてるのですよ。いくら大量の時間質量を持っていても、それを生かす技術がなければ、この天使のようになってしまうですよ。販売員の家は貧しいかったから、厳しいのには耐えられたですよ。販売員は、授業料タダの学校に通ったですよ。昼間は仕事、夜は勉強。仕事で疲れていて、夜の勉強は辛かったですけど、家計の足しになるし、授業料免除という制度は得難いものだったですよ。だからひたすら頑張ったですよ。でも辛いことは我慢はできても、辛さは変わらないですよ。そんな中で、仕事の監督兼勉強の教官から、こんなことを言われたですよ。『貧乏なのは親のせい。親みたいになるな!親父が死んだのが悪い!恨め、それをエネルギーにしろ。時間質量なんかいらない。魔力の源は恨みだ!』。父親が早く死んでそのショックで母親が病気で寝込んでいたですよ。販売員がやっていた産業廃棄物処理は臭くて暑くてベタベタして寒くて冷たくて、すごくいやな仕事なのに賃金が低い。だから余計にムリしたですよ。そんな販売員に、教官は『母親を恨め!』と言ってきたですよ。自分のことをどうこう言われても我慢する販売員も大好きな母親のことを悪く言われると、アタマに来たですよ。でも教官にたてつけばすぐにクビですよ。授業料タダだから文句が言えない。教官のドヤ顔は超ムカついたですよ。そこにつけ込んでくる教官はさらに販売員の母親をけなすですよ。無抵抗な販売員は、悔し過ぎて涙も出なかったですよ。教官たちが悪いというより悪魔社会の成り立ちが悪いと気づくのに時間はかからなかったですよ。これが武闘派の洗脳の仕方だと気づいた時には天界への憎しみが本能となっていたですよ。無駄天使に個人的な恨みはありませんが、刷り込まれた本能はもはや変わらないですよ。ちょっと、喋り過ぎたです。じゃあこれで天使を仕留めるですよ!」
呪文を唱えようとした入場券販売員。
「ちょっと待った!」
和人が咲良と入場券販売員の間に割って入り、両手をかかしのように広げて、通せんぼした。




