【第二章】第四部分
「どこまで歩くのよ。」
「ショッピングモールまでですよ。」
「こんなところにそんなシャレたものがありそうには、とても見えないわよ。」
「そんなことありませんですよ。魔界だって、悪魔が住んでるんですからですよ。人間界と同じく、商業施設はあるですよ。」
門から1時間ぐらい歩いた地点に来た時。
「ほら、あそこをご覧くださいですよ。ちゃんとショッピングモールが存在してますですよ。」
入場券販売員が指したところには、陸屋根、平屋建ての白く小さな建築物があった。
『イレブン・セブン』という看板が見えた。
「何よ、あれって、ただのコンビニじゃないの。しかも営業時間が短いわ。」
「コンビニなんかじゃありませんですよ。昼の11時から夜の7時まで営業している超立派なショッピングモールです。食材から日用品、薬品、アルコールまで売ってるですよ。まさにショッピングモールそのものですよ。今日は掃除がまだだったので、今からやるですよ。相対魔法、術式・水、制限・オン。対象・ショッピングモール、範囲・全1棟、時間・30秒、到級1。発動!」
入場券販売員の手から水が強く噴き出し、彼女はホースのように操って、みるみるうちに建物を洗浄した。
「すごいね。これが魔法の正しい使い方なのかな?」
和人は感心しながら見とれていた。
「何よ。あんなの邪道じゃないの。」
咲良が不機嫌そうに、コンビニ入口に立った。
「あれ?ドアが動かないわ。故障かしら?」
「この世界には自動ドアなんてありませんですよ。電気代がもったいないですし、何より地球環境に大きなマイナスですよ。」
「はあ?ずいぶん貧乏な発想だわ。やっぱり悪魔って、下層階級なのね。」
咲良の言葉を聞いて、入場券販売員はちょっとムッとしていた。
4人は店内に入っていき、置いてある商品を眺めている。
「カップめんとか、お菓子とかあるわね。人間界なコンビニと商品は同じようだわ。」
咲良はカップめんを乱暴に手に取り、印刷された部分をよく見ている。
「この賞味期限の表示、手書きになってるわ。日付をマジックで書き換えてるわよ。」
咲良がパッケージをこすると、十年前の日付がコンニチワしてきた。
「賞味期限が切れたって、十分食べられるですよ!さっきから、古いものをバカにしてるですよ。ここには、新品はひとつもないですよ。でも生活には全然支障ないですよ。」
「ホント、あきれるぐらい貧乏なやり方だわ。今は飽食の時代なのよ。少しでも消費を高めて、物価上昇させないと、デフレ脱却できないのよ。どんどん要らないものは捨てていかないと。時代の流れに逆行してるわ。」
「いかにも豊か過ぎる天界の発想ですよ。もう許さないですよ!もったいないを愚弄する天界にはこうするですよ。普段は掃除に使っている能力を攻撃に使うですよ。相対魔法、術式・水、制限・オン。対象・無駄天使、範囲・全身、時間・1分、到級2。発動!」
水が竜のような形となり、咲良を捕まえた。
「店内にいる不審者は追い出すですよ。」
水の竜は前足でドアを軽く開けて、思いっきり咲良を投げ出した。咲良は地面に強烈に打ち付けられて、頭から出血した。