【第二章】第三部分
和人の軽い体が小さなバネ音を立てて、針が時計回りに反応して、揺れながら停止する。目盛りは五分の一が赤ゾーン、残りは黒だが、和人の値は黒の前半で止まった。
「これは軽いですよ。全然問題ないですよ。天界承認基準を軽々とクリアしてますですよ。かなり軽いですよ。すごく軽いですよ。超絶軽いですよ。」
「基準のことはわからないけど、なんとなくムカつくのは気のせいかな?それに魔界に入ろうとしてるのに、天界承認基準って?」
「それを話すと長くなるのですよ。簡単に言えば、天界と魔界の力関係とでも言っておくですよ。」
「そうなんだ。今のボクのやることとは関係ないな。じゃあ、ここを通してよ。」
「どうぞどうぞですよ。」
開いていた門をくぐると、そこは雪国だった、などということはなかった。
「これって、何も変わらないじゃない。」
文句を言う場面ではないが、咲良がクレーマーになった。
地面がゴミでガタガタだったのが、コンクリートになっただけで、見える先が地平線であることは変わりない。
「門の中と外でどこか変わるとか、ひとことも言ってないですよ。たかが千円の入場券にどんなアトラクションを期待したのですかですよ。」
「だって、名前はドリームアイランドでしょ。ならば何かこう、遊園地的な場所だって思うのがフツーじゃない。」
「あのう、天使さん。まさかとは思いますが、デートに来たとか、心の中で期待感をムダに膨張させてたとかですかですよ?」
「バ、バカなこと、言うんじゃないわよ。」
「お兄ちゃん。浮かれたお姉ちゃんはほっといて、中に入ろうよ。ぎゅっと。」
またまた腕を掴んで、今度は露骨にボリューム十分な胸を押し付ける実亜里。
「何、破廉恥なバレンチノなこと、やってるのよ。」
「これのどこが破廉恥なんだよ。まあバレンチノという高級路線は正しいけどね。お姉ちゃんには、ゼッタイできない芸当だよね?」
実亜里は咲良の胸に視線ベクトルを合わせた。
「ちょっと、弱い者イジメはやめなさいよ。でもいつかは勝者になる未来があるんだからねっ!」
「それはムリムリ、無駄無駄無駄無駄無駄~!」
「ディオはジョジョに徐々に滅ぼされるんだから!」
「お二方、お静かにですよ。販売員が門の中をご案内しますですよ。」
こうして4人は、しばらく何の飾りもないコンクリートの上を歩いていった。