【第一章】第十七部分
「ヒドい!なんてことをするんだ、実亜里!」
「仕方ないでしょ。これぐらいやらないと、お兄ちゃんは止まらないよ。バカだから。」
「なかなかやりますわね。説明の手間が省けましたわ。木賀世さんのいる未来では、この程度の殺戮は児戯に等しくてよ。」
「ボクの未来?そんなこと、全然わからないよ。とにかくボクの黄金リコーダーを返してよ。」
「ならば全部吹いて探し当てたらいかがですの?仮に一つ目で探し当てる幸運を得たとしても、安っぽい命との引き換えになりますけど。ホーホホホッ。」
「お兄ちゃん、これはあきらめるしかないかも。」
「いやだ。この中に本物があるなら、見つけて帰るんだ!こうしてやる!」
和人は委員長にめがけて走り出し、いきなり唇を奪った。
「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「キャーッ!」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
和人は悲鳴の鳴りやまない中で、片っ端から、金色リコーダーを吹きまくった。
「これも違う、これも違う!」
暴れ馬のように、次々と女子を襲って、すべての金色リコーダーを吹いたが、咲良が出てくることはなかった。
「これはビックリしましたわ。まさかワタクシのファーストキスを奪うとは。」
頬を赤く染めて、複雑な表情で和人を睨む委員長。
「うん。憧れの人にこんなことするなんて、どっちにしろボクの人生はゲームオーバーだよ。ならば賭けに出るのみだったけど、騙されてたみたいだね。」
「いやご立派ですわ。ワタクシが悪魔だと気づいての大奇行、いや勇断でしたわね。」
「それも賭け。委員長が悪魔でなかったら、クラスメイトから殺されるだけだったよ。悪魔ならば、ボクの口を食べてしまうだろうから。それならばボクの口は半透明な安全部位に変わるから、毒に当たることもないよね。でも本物がここにないということまでは考えなかったよ。悪魔がボクを狙う理由はまだよくわからないけど、それより本物がどこにあるのか、委員長は知ってるの?」
「そうですわね。それを言わない妹さんもなかなかの策士ですこと。」
「まさかお兄ちゃんがあんなことやるなんて、想定外だったよ。委員長に見切りを付けて、委員長のことをあきらめてもらい、ウチに帰るシナリオだったんだけど。」
「実亜里!?それってひどくね?ボク、また自分の体を失ったんだよ。委員長の唇を奪っておいて、その言い草はないよ。ほら、国民すべてを敵に回したよ。」
「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「木賀世、ヘンタイ、木賀世、どヘンタイ、木賀世、超絶ヘンタイ!」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
「でもボクには、別に悪気があったわけじゃないし、エロい考えからやった行為でもないし。」
「エロでない?それは少々残念ですわ。」
「「ええ?委員長、それってどういう意味?」」
和人と実亜里は、しっかりハモった。これでふたりは血のつながりのある兄妹認定された?
『ぴーっ!』
久しぶりに黄金リコーダーの音が響いた。
「そこか!」
「いや~ん。お兄ちゃん、大胆!」
和人はタップン、タップンの実亜里の胸元に頭を突っ込んだ!
「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「キャーッ!木賀世、ヘンタイ、木賀世、どヘンタイ、木賀世、超絶ヘンタイ!」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
和人非難連呼がリフレインされた。
和人は非難を完全無視して、実亜里の胸にむしゃぶりついて、何かをくわえて取り出した。
そして半透明の唇で思いっきり吹いた。
『ぴーひょろろ♪』
音は腑抜けであったが、しっかりと空気は抜けた。