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【第一章】第十部分

くるりと踵を返して委員長は、他の女子生徒たちの輪に入っていった。

「くっ。みっともないところを見られちゃった。もうおムコさんに行けない。」

『ぴー!』

泡を食って歌口をくわえた和人。

(あはん。)

「咲良様。いったい、どうしたの?」

(べ、別に何でもないわよ。やっぱり、逆上がりなんてできないわね。体育のザコを倒せないのは、ヤマナシケンにピッタリだわ。)

「ぐっ。そう言われると、反論できないなあ。それより委員長のことの方が。」

すっかり意気消沈の和人は焦点の定まらない目で周囲を見るともなく見ていた。するとグラウンドに奇妙なものがあるのに気付いた。グラウンドの隅に跳び箱が置いてあった。本来、体育館にあるものである。

(ヤマナシケン。どうかしたの?)

「どうしてこんなところに跳び箱があるんだろう。授業で使うはずがないし。誰か間違って持ってきたのかな。」

 その跳び箱がガタガタと揺れ始めた。古いのか、上のマット部分は破れている。

(地震だわ。でもこれぐらいなら大したことないわね。)

「おかしいよ。揺れてるのは、あの跳び箱だけだよ!」

 揺れていた跳び箱からニョキニョキと手足が生えてきた。それはやがて動き出して、生徒たちの方に向かってきた。

「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「きゃあ~!化け物!」」」」」」」」」」」」」」」」」」

生徒たちは教室へ逃げ去った。でも跳び箱モンスターは他の生徒に見向きもせず、和人の方へ向かってきた。

(ヤマナシケン、何してるのよ。さっきアタシは魔法を使ったんだから、今は使えないのよ。逃げるしかないわ!)

「でも、ボクも足を痛めていて動けないんだよ。」

(今は痛いとか、ケガしてるとか、言ってる場合じゃないのよ。足の骨が折れてもいいから走りなさいよ!)

「骨が折れたら、歩くこともできなくなるよ!」

 そうこうしているうちに、跳び箱モンスターは和人のすぐそばまで近づいてきた。

(このままじゃ、ヤマナシケンは跳び箱のマットの修復に使われるわよ。)

「そんなの嫌だよ。勉強も運動もできない上に、跳び箱のボロマットになってしまうとか、悲惨すぎるよ!」

(もうこれしかないわね。ヤマナシケン、リコーダーを吹きなさいよ!)

「え?どうして、この期に及んでそんなことをするんだよ?」

(説明してるヒマはないわ。早く吹いて!)

『ぴーひょろろ。』


『あはん。どどーん!』

咲良が登場したが、生徒たちはすでに逃げ去っていたので、誰にも見られることはなかった。

「魔法は使えないんだよね。どうするんだよ。」

「答えはこれよ。秘技・ガブリエル!」

咲良は和人の左腕をガブッとやったのである。

「痛い!何するんだよ!」

 出血はないものの、和人の腕の一部が消えていた。

「クレームを聞くヒマがないのは、役所と同じよ。やっとこれを手に入れることができたわ。」

 咲良は自分の手に黄金リコーダーを持っていた。

「今まで咲良様が入っていたのに、これじゃ、主客転倒だよ。」

「いちいちうるさいわね。天使には何でもありなのよ。これが本当の魔法のステッキなんだから。ヤマナシケンを食べたからやっと出せるようになったんだからね。魔法の威力は増大したわよ。」

「魔法のステッキだけじゃなく、コスチュームも変わってるよ。」

「そうよ。天使が魔法を使う時、これが正装なのよ。やっと落第点ギリギリから脱却できたわ。」

 白い三角帽子、白く長いマント、短いがふんわりした白いスカート。腰の大きなリボンが赤く、際立ってかわいく見える。


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