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求める少年  作者: 夢はニート
6/6

第6話

芸能人の引退。

何かと世間では騒がれる内容だ。まぁ、引退する理由は人それぞれ違うが、大体は育児や犯罪などに手を出して、謝罪の言葉と共に芸能界を去っていく。だが、上北 朱音、いやRenaについては少し事情が分からない。これまで、熱愛というありがちな報道さえもなかった彼女がどうして…。

と、こんな感じでニュース番組では報じられている。ニュース番組としてはありがたいネタだ。売れっ子歌手が突然の引退!、視聴率も上がるであろう。

それとは反対にファンにとっては随分と酷なものだろう。理由がない別れ、それは、残された者にとっては悲しい出来事だ。…現に俺も同じだから。


「びっくりだね、少年。…まさか、あの売れっ子歌手でドラマなどにも出ている彼女が引退だなんて。」



悲しいよ、そう付け加えて言ってる割には全然悲しくなさそうだ。、と言うか普通に楽しんでいるようにすら思える。



「少年も悲しいだろう。何せ、同じクラスなんだから。」



「…はい?」



どっかの刑事さんみたいになっちゃったよ。

どうして、この人がそんなことまで…いや、この人ならアリエッティだわ。と、すると、どこで知ったんだ。…ネットはあり得ない。この人携帯すら持たない、いや使えないほどの機械音痴なのだから。…テレビでは放映されてないし。と、すると…。



「担任、ですか?」



「ご名答。…うん、頭の速さは前と変わらないな。少年、安心したよ。」



「俺はまったく、安心できませんけどね。」



あの、クソ担任。一さんと担任は繋がってたのかよ。

だから、あんなにも俺を呼びだして…あれ、確か今日も放課後呼ばれてたような…。忘れよう。うん忘れるのとか、超得意。…明日、行きたくないぁー。



「で、俺を呼んだ要件は何ですか?」



たぶん、きっと俺がここにいるのは偶然ではない。一さんと担任が仕組んだ事だろう。担任が関わっているのだとしたら、おおよそ要件の内容はわかる。



「上北 朱音についてだ。彼女がどうして、芸能活動やめた理由を『意味』を私は知りたい。」



ほーら、やっぱり。

担任はきっと上北朱音が芸能活動をやめる事を入学前に知っていた。だが、その理由はさっぱり分からなかった。そして、そのことを何らかの繋がりがあった一さんに相談した。それを、聞いた一さんは辞める理由、つまり『意味』に興味を持ってしまった。そして、担任に言ったのだろう。



〈上北朱音と藤原蓮を接触させろ〉



学園の案内が何よりの証拠だ。転校生が二人だけで、全く知らない学園の中を歩き回るなんて効率が悪いにも程がある。

すべて事実なのかは分からない。

これは俺の妄想で幻想でただの意味のない空想なのかもしれないのだから。



「…拒否権は?」



「あると思うか、少年?」



過去の恩義がある以上、俺に出来ることがあれば、何でもするのが彼女との約束。この人を可愛いと思ってしまった、自分を恨みたい。



「はぁー、分かりました。…で、報酬は?」



「10万」



一さんは机の引き出しから、紙袋を取り出し机の上に置く。

これは彼女と俺とのもう一つの約束。俺が出来ることがあれば、何でもする。その代わり、それに見合う報酬をくれ、と。

中身を確認して、鞄の中にいれる。コーヒーをすべて飲み干し、ソファーからゆっくりと立ち上がる。



「お邪魔しました。」



「うん、気をつけて帰るんだよ少年。」



返事をしないまま一さんの家を跡にする。外は日が沈み、夜になっていた。ここから、アパートまで歩いて30分くらいかかるであろう。



「えっ?うそっ、Rena引退なの!?」



「えー!?私、好きだったのに…」



通り過ぎる中学生達がスマホを片手に話し合っていた。今回の案件は少し難しい。彼女は引退をどんな想いで発表したのだろう。彼女はどんな想いでこれまで続けてきたのだろう。上北朱音がRenaとして、どんな『意味』を持ちながら始まって、どんな『意味』を持ちながら終わるのか、見つけ出さなくては。









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