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旧マドンナ  作者: ろく
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ハイソな女というのは、大抵の場合避けられる。

ハイソで美人だと選ばれない場合が多い。

選ばれないというのは、仕事でリーダーに選ばれないとか、そういうものではなく、男性に選ばれないということだ。

男性からすると“遠くの美人より近くの普通の女”なんだろう。恐らく。

しかし、実際にはそんなに遠くない美人であることを多くの人は知らない。見た目の華やかさが邪魔をして、そうは見えないのだろう。

それに、男性達は「自分でなくても、より良い男性が選ぶだろう。」と思うので、彼女達は憧れであり、それこそ高嶺の花になってしまう。

彼女達はロレックスの時計を着ける男性を好み、差し入れはエルメのマカロン、レストランはロブションでないと許してくれないと思っている。

だが、多くのそんな彼女達はカシオの型落ちの時計でもいいし、コージーコーナーのシュークリームでもいいし、近所の居酒屋でもいいのだ。大雑把に言うと。

他の女みたいに、ここぞという時にロブションに行きたいし、本当に大切な記念日にロレックスの時計をプレゼントしたいと思っている。

小さい頃から美人だと言われ続け、立派に自立したハイソな美人は大概そうだ。


彩美に関しては別に自分が着飾っているので男性にはほとんど何も求めていない。

付き合う男性が特別個性的でなければ、着る服なんてどうでもいい。それに、自分でエルメのマカロンも買う。

男性にそんな与えられなくても、自分で得るからいい、そう思う。ただ、それが彩美を「金がかかる女」に見せているのだが。


今日も彩美はセルジオロッシ履いて出勤する。新作のサーモンピンクのサンダルにカーキのワイドパンツを合わせて。

職場に着いて売り場に行くと、新しいシフトが出ていた。

可哀想に彩美はほとんど古田とシフトがかぶっていなかった。それどころか、古田と中村

麻友のシフトがほとんどといっていいほど、かぶっている。

何度見ても、この2人は彩美を避けるかのようにシフトがかぶっていない。

誰も彩美がこのことに悔しがっているとも思いもしないだろう。別にそれでいいのだが、駄々をこねてシフトをどうしても変えて欲しかった。恋というものはどうも思い通りにならないが、それは高校までだと思っていた彩美には、もう絶望でしかない。

それにしても職場で恋愛するというのは、リスクが大きい。もし上手くいかなかったら場合、間違いなく腫れ物扱いされる。そのリスクを犯してまで狙っていた相手なのに。非常に悔しい。

彩美には計り知れないが、古田と中村 麻友には少なからず“可能性”がある。

古田が中村に恋をする、またはその逆になり得ることも考えられる。

はっきり言えるのは、1度くらい古田が中村 麻友を「この子可愛いな。」と思うことがあるということだ。

古田の感じからすると、周りの男子と同じように、中村 麻友のような“放っておけない女子”が好きだろう。彩美のような、まあ一癖ある女は、二の次になる。

まだ始まってもいないことに憶測で物を言うのはよくないと思うが、一足先に対策を練らないと、時は刻一刻と近づいてくるだろう。

そして、中村 麻友は今日も仕事が遅く、高い荷物を取れないだろう。

そして彩美はそれに苛立ちながら笑顔で助けてあげる。本当に苛立つだろうが。


中村 麻友の人間性が嫌いという訳ではないが、この場においては邪魔だ、と彩美は思った。

休憩中に先輩が言っていた、「彼女の携帯のケース、キキララなんだけど、キキララあまり好きでないんだって。」そう言って可愛いわよねと笑っていた。

呆れた。彼女はきっと、キキララ2人合わせた身長と月の直径と同じくらいということや、彼女達が双子星だということも知らないだろう。別に知ってて得する訳でもないが、何となく何もそれに対して知識がないまま身につけるのは“にわか”だと思う。

まあ見てくれだけで、物を選ぶのは有りがちなんだが、それの真意を知った上で使うということが正当な物の使い方だと思う。

特に、人から指摘されやすいキャラクターや音楽に関しては。

「好きなんでしょうね、見た目が。可愛いですもんね。」

こういう無知さや、どこかピントの外れた感覚が可愛らしいのだろう。

私はとてもじゃないが出来ない、と思った。

知識が豊富で困ることは一切ない。いつでも的を得ていたいし、それが美徳だとも思う。


そうやって、自分に自分で勝ったと思わせないと不安に駆られるのだ。

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お仕事小説コン
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