第六話
「う~~~ん」
俺は朝日の光を顔に浴びて、目を覚ます。
心成しか頭が少しクラクラする。
何でだろう?
あっ! そう言えば昨日、ルナに押し倒されそうになったんだ!
俺は直ぐに衣服の乱れと体の以上を調べる。
良かった……。 何もされて無い様だ。
其処にルナが遣ってくる。
「おはようございます、シンジ様。 昨日は良くお休みになられましたか?」
「う、うん。 ……おはようルナ。 処で昨日の夜の事なんだけど……」
俺はしどろもどろになりながら、昨日の夜の出来事をルナに聞こうとした。
「昨日の夜がどうかなさいましたか?」
「い、いや! 何もなかったんならそれでいいんだ!」
「そうですか……。 わかりました」
俺はルナの質問に誤魔化す。
そんな俺を見て首を傾げるルナ。
俺はホッとして溜め息を吐いた。
だがルナは、俺の心を読んだのか、俺に近づくと軽く抱き付きながら俺の耳に囁くように告げる。
胸が俺の体に当たってるんですけど……。
「昨日の夜は残念でした。 でも私、諦めませんから。 続きはまた今度と言う事で……」
すっと俺から体を離すルナ。
その顔には小悪魔の様な笑みを浮かべていた。
ルナさん。 そっちがアンタの本性か!
「お食事の用意が整えてあります。 食堂に来て下さい」
ルナは俺に頭を下げてから部屋を出て行く。
はあ~……ルナのあの言葉に切り返しが出来ないなんて俺もまだまだ子供だな。
俺は項垂れながら食堂に赴く。
道を迷う事無く食堂に辿り着く。
何かこの家――と言うか屋敷かな? やたら見覚えがあるんだけど……。 デジャヴか?
其処には日本人にはお馴染みの朝食が用意されていた。
ご飯に御味御付け、オカズは鮭の塩焼き、納豆に海苔に生卵、箸休めに大根の漬物。
お~、どれも美味しそうだ! やはり日本人の朝食はこうでなくちゃ! 普段の食事? ……ご飯に薄い味付けの味噌汁、申し訳程度の玉子焼きか目玉焼き、もしくは焼いて暫く立って冷めたウインナーに止めはタッパー入れた漬物のドカ盛り……。
あっ、イカン! 目から汗が出てきそうだ!
そうして朝食を感動して見ている俺の事を、いつの間にか俺の傍に居て、艶のある美しい黒髪を後ろ髪の真ん中の方で紐を使って一括りにしていた美人の女性が嬉しそうに見ていた。
その瞳は何処か懐かしいものを見ている様な感じだった。
「……あの~、貴方は?」
女性はハッとして我に帰り、自己紹介をしてくれる。
「あ、失礼しました。 わたくしは保食神と言います。 どうか昔のようにウケモチとお呼び下さいませ。 グンディール様」
「あの~、俺、グンディールって呼ばれてますが、その記憶無いんで、シンジって呼んで下さい」
俺がそう言うとウケモチは何処か寂しそうな感じがした。
「わかりましたグン――いえ、シンジ様。 さあ……、お食事が冷めてしまいます。 どうか、お早くお召し上がりを」
ウケモチに促され、俺はテーブルの席に付き食事を始める。
ウケモチが用意してくれた朝食はとても美味しく、何だかとても懐かしい味がした。
朝食を撮り終わると、ウケモチはそれを見計らった様にして俺に今後の予定を話してくれた。
「この後、半刻しましたらこの島の主だった者達と話し合いの場が設けられますので、シンジ様はその話し合いに御主席して頂きます。 それまでは広間でゆっくり御寛ぎ下さいませ」
「その話し合いって……強制ですよね?」
「はい、申し訳ありません……。 今後のシンジ様についてどうするかの方針を決める大事な会議ですので……」
俺は溜息を吐き、それを了承する。
「わかりました。 では半刻――一時間ですか? それまで向こうの広間に居ます。 時間が来たら呼びに来て貰えますか?」
「勿論です。 私が御案内致します」
俺はその言葉を聞き、広間の方に移動した。
会議かあ……。 何だか今から緊張するなあ……。