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第六十話

 去年の年末からPCのトラブルや一部ファイルの読み込みができないわ、治りかけてた病気が再発しかけたり等々色々ありまして執筆が出来ませんでした。


 投稿が遅れて申し訳ありません。 ちょっとずつ投稿していきます。

 雲一つない凪いだ海――なんだが、何かおかしい……。

 雷精がやけに騒ぐ。

 嵐か竜巻でも来るのかと思ったんだが風精は大人しいまま。 嵐や竜巻が来るのなら風精も活発に活動するはずなんだがその気配もない。

 不自然に、しかも一箇所に雷精だけが集まってきてる。

 それになんだか妙に身に覚えのある魔力が海風に混じってる。


 「この魔力はまさか……」


 雷精が集う場所、大気に混じる覚えのある魔力、嫌な予感がする!

 俺は全速力で其処に向かった。


 はたしてその場に居たのは――


「ロキッ! 何でお前が此処に居る!!」

 

「あれれ~? グンディール、どうしたの? 寂しくて僕に会いに来てくれたのかな~♡」


「巫山戯てろ! それより、お前……二人に何してんだ!!」


 トボけた調子で答えるロキ。

 相変わらず巫山戯た野郎だ!

 だが、それにしてもロキの体がやけに綺麗だ。 以前、俺は奴の体に幾つもの風穴を空けてやった。

 なのに、こんな短期間でその傷が完治するなんて変だ。 例え姿を見せても全身包帯だらけのミイラ男のような感じになってるはずなんだがな……。

 

 おっと、いかん! 今は目の前のロキに集中せねば!


 俺は直ぐ様ユルン・メトスを召喚する。 召喚したユルン・メトスを分離、メトス(柄)を岩に変じた織物の女神カビリャカとカビリャカがその胸に(いだい)ているその息子に向かって二人を守るよう命じて投げつける。

 するとメトス(柄)は俺の意思に応え、二人を守る大盾に姿を変えた。


 メトスのこの能力は神鎗ヴァルスロットからユルン・メトスに生まれ変わる時、鍛冶の女神ブリギッテの手により加えられた能力、様々な形状に変化する”変化の盾”である。


 俺は残ったユルン(刀身)が变化した突撃槍でロキが喚び出した雷球に向かって袈裟懸けに()いだ。

 斬撃は狙い違わず雷球に命中し、雷球は斜めにずれて一瞬訪れた静寂と共に弾けて轟音と爆風を撒き散らす。


 咄嗟に雷球の爆発から逃れたロキが俺に向かって文句を言ってくる。


「何すんのさ、グンディール! 僕の復讐の邪魔しないでよ!!」


 そう言って懐から一振りの両刃の剣を振りかざしながら空中にいる俺に向かってくる。

 俺はメトスでそれを受ける。


「復讐、だとっ!」


「そうさっ! 僕に恩を売って散々いい様に()き使ってくれたあのムカつく野郎! 創造神ヴィラコチャにだよ!!」


 鍔迫り合いの様な状態になりお互い押し合う。

 普段は飄飄としているロキだが、いざ戦いとなると優男の外見からは想像できない戦技を発揮する侮れない相手だ。


「それが何でカビリャカを殺すことに繋がる!」


 鍔迫り合いの状態から俺は力任せにユルンを振り抜きそのままロキを吹き飛ばす。


「うわっとと!」


 空中で急制動を掛け停止するロキ。

 そういえばロキが履いているあの靴、何処にでも行けるとか何とか言っていたな。 厄介な物をもっていやがる!


 そうだ! いっそ此処で奴をぶっ倒してぶん取っとこう! そうすりゃあ奴の行動範囲は狭まって悪さもそうそう出来ん筈!

 そしてその靴は俺の為に有効活用してあげよう!


 そう決めた俺は神力を開放し軍神として本領を発揮する。


「何でグンディールがカビリャカの事、知ってるの!?」


 油断なく剣を構え、警戒しながらロキが俺に問うてきた。


「昔、色々あったんだよ!」


 俺はユルン構えて無数の穂先の分身を創り出す。 メトスが無い状態では追尾能力は弱くなるがロキの動きを少しでも止められればそれで十分!!


 だが、此処でユルンの能力に俺も驚く。

 何と! 穂先の分身がでっかくなって俺が今握っている突撃騎槍の形になっていた! しかも威力も以前より上がっている!


「……もしかして恋敵? 女神を掛けて? ビラコチャと?」


 ロキはそんな俺を無視して何事か考えだしてブツブツと独り言を呟きだした。


「お前には関係ない事だ!」


 ロキが足を止めた! チャンス!


 俺はすかさず穂先の分身改め槍の分身をロキに向けて放つ。


「ん? うわっ!?」


 ロキは自分に迫り来る突撃騎槍の分身に気付くも時既に遅く、自身の身を無数の槍の分身が見事にロキを貫いた。


 これでロキもただでは済むまい。 いや、むしろこれは――

 

「こりゃあ、ロキも流石に死んだか? まあ、自業自得だ。 迷わず成仏しろよ」


 散々悪行――と言うより質の悪い悪戯三昧やり尽くしたんだ。 思い残す事は無いだろう。


 悪神ロキ、パチャカマック海岸にて永眠ス。


「い、いきなり酷いよグンディール! 死ぬかと思ったよ! それでも僕の親友かい!」


 ロキを貫く役目を終えた無数の槍の分身が全て消え去った後、俺の想像に反して奴の無事な姿が其処に在った。


「ちっ! 生きてたか……。 て、誰が親友だ、ゴラァ!!」


 靴をぶん取るため一応足だけは狙いから外していたがまさか五体満足無事とわな! ん? 五体満足? あれ? かすり傷どころか服も破れてない?


「……何でお前無傷なんだよ」


「フフン! 僕の叡智と神技を用いれば君ごときの単調で単純な攻撃、防ぐのなんて訳ないさ!」


 と、ドヤ顔でのたまうロキ。


 ムカッ! 俺の軍神としての力を馬鹿にしやがったな!


「ロキ、コロス!」


「わっ!? グンディールが本気で怒った! ちょちょ、ちょっと待って! ごめん! ごめんてば!」


 ロキは慌てた様子で懐から壊れた木製の人形を取り出した。


「それがどうした。 詫びのつもりか? だったら、もっとマシなものを用意するんだな」


「ち、違うって! これが僕が無傷でいられたタネ! ”生贄君(いけにえくん)”だよ! この人形が僕の身代わりに傷を全部引き受けてくれたんだよ!」


「なぬ! お前、いつの間にそんなもん作った!」


 ロキが言う事が本当なら俺の必殺技の一つが封じられてしまう! これは非常に不味い!


「ん~最近かな? 日本って国でマンガやゲームのサブカルチャーが流行りだした頃だから。 いや~、悪紳も目から鱗が落ちちゃうアイデア満載だよ、あの国!」


 Oh!  何てこったい! 俺の今の故郷、知らんうちにとんでもない奴にアイデア提供してたよ!


「それより、もしかしてグンディールってビラコチャとカビリャカ巡って対立してたの? ねぇ、そうなの? そうなの?」


 ロキは俺に近づき耳元で囁く。


「うるせぇ! お前には関係ねえだろ!」


 俺はロキを乱雑に振り払うが、ロキはひょいと躱すと嬉しそうに腹を抱えて笑いながら喋る。


「クッ、ケケケケ! こりゃあ傑作だ! あいつ、グンディールに喧嘩に敗れた上に愛しい女を奪われてやんの! ビラコチャ、格好ワリィー! ケーケケケッ!!」


 俺はロキの様子に疑問を覚えたので質問してみる。


「ロキ……何喜んでんだよ? お前、そもそもビラコチャ側だろう?」


 するとロキは歯を剥きだして激昂する。


「冗談じゃない! 僕がオーディン達に冤罪を掛けられて閉じ込められた洞窟から逃げ出して行き倒れてた僕にアイツ、僕を助ける代償に無理やり隷属させたんだよ! そんな奴の味方になんてなるものか! それにアイツに掛けられた隷属の力が消えた今が復讐のチャンスなんだよ!」


 ロキが言ってる隷属の力が消えたのは多分、俺がビラコチャをインカの神域に縛りつけた影響だろう。

 ん? ちょっと待て。 ロキのさっきの話から色々矛盾が出てきたぞ。


「冤罪って……お前が洞窟に閉じ込められたのってヘズを唆してヤドリギでバルドル殺させたからだろうに。 まあ、巫山戯てたバルドル達もワリィけどよ」


 アース神族の長であるオーディンの息子バルドルの無敵の体の秘密は母親のフリッグがバルドルの死の予言を覆そうとして万物の一つ一つにバルドルを傷つけないよう誓約をさせたからだ。

 けど、ヤドリギだけは幼すぎて誓約出来なかったんで唯一の弱点になったんだよな。


 初めはバルドルが傷つかないか試していた事がやがて国中の神々達から色んな物をぶつけられる競技という訳が分からんものになって調子に乗ってそれを毎日やってたバルドル達に苛ついた(まあ気持ちは分かる)ロキがバルドルの弟ヘズを利用した殺人劇だ。


 その上ロキはバルドルを生き返らせるの邪魔したし。


 「それが冤罪だって言ってるんだよ! そもそも僕は悪戯に命を賭けるけど命を確実に失うような悪戯なんてしないよ! しかも相手はアース神族だけでなく他の神からも愛されてるあのバルドルだよ! アレを殺すだなんて北欧の神々を敵に回す様なものだよ! それこそ僕の命なんて幾つ在っても足りないよ!」


 言われてみれば確かにその通りだ。


「じゃあ、バルドルを殺した真犯人が別に居るって事か?」


「そんなの僕が知るわけ無いじゃん。 それにその時僕はグン――いや、何でもない」


「おい、何故途中で言葉を切る? そして何故俺から目を逸らした?」


「怒らない?」


「話の内容による」


「じゃあ話さない」


「い・い・か・ら・は・な・せ!」


 俺はロキの頭頂にユルンの刀身の腹で連打する。


「いたいいたいいたい! わっ、分かったら! 話す! 話すよ!」


「初めから素直に話せば良いものを。 で、何だ?」


 ロキは頭頂部を擦りながら答える。


「そもそもその時、僕は女神に化けてグンディールを誘惑して子供を作ってグンディールをビックリさせるっていう悪戯に夢中に成ってたんだよ。 だからバルドルの事なんて知らないよ!」


「あの時期やたらと俺を誘惑してきた女神はお前か!?」


 ゴンッ!


 俺は怒りに任せてロキの頭をユルンで思い切り殴った。

 

「いった~!? ちょっとしたお茶目な悪戯じゃないか! しかも結局未遂で終わったし……。 折角あと一歩で悪戯が成功しそうだったのに」


「子供拵える悪戯なんて質が悪すぎるわ!」


 あの時期の俺は剣術スキルを求めて荒行の真っ最中だったからな。 とはいえ女神に化けてたロキは結構俺好みの美女で不覚にもドキドキしちまったぜ。

 しかもその上”私を抱いたら剣術スキルが手に入る”何て言うもんだから悩んだ挙句に決心して抱こうとしたら姿を暗ましてがっかりしたんだよな……。


 まさか、あの時の女神がロキだったとは。 危うく抱くとこだったぜ!


 あの時の女神が消えたのって化けてたロキがオーディン達に捕まったからだったんだな。

 運が良かったぜ。 もしあの時、ロキを抱いてたらと思うと恐怖で鳥肌立ってきた……。 


「何んでそんな悪戯仕掛けた!」


「いやあ~、グンディールが女を知らないって言うからさ。 もし、女の体を知ったらその後どうなるか試してみたかったんだよね♡」


「だからってそれを実行に移すな! ……はあ~、ビラコチャとカビリャカの話から随分脱線しちまったな。 結局、お前は復讐の為にカビリャカ殺すのか? だとしたら俺はお前を殺す。 まあ、幻想島の男達の件もあるから結局、殺し合いすんのに変わりないがな」


 俺はユルンの切っ先をロキに向けて構える。


 それに対してロキは首を左右に振って答える。


「カビリャカは殺さない。 どうせグンディールが保護の名目で幻想島にお持ち帰りするんでしょ? だったら後は動けないビラコチャのとこに行ってその事を含めて有る事無い事奴の耳元で囁いてやれば悔しがるビラコチャの顔を拝めるからそれで僕の気は晴れる。 それとねグンディール。 君と再会した時に話した通り僕は幻想島の男達を殺すつもりはなかったんだよ。 いずれ転生して復活するであろう君と敵対して本気で怒らせるつもりはなかったし、ましてや君は僕の数少ない友人だからね。 これでも友人は大切にする方だよ僕は。 僕がオーディン達に復讐する為に作ってたカオティックウイルスだって只の動物に変身するだけのものをビラコチャに見つかって命令されて仕方なく幻想島にバラ撒いたんだよ。 まさかビラコチャの奴が僕の知らない間にカオティックウイルスを弄って死病に変ていたのには驚いたよ。 だから急いでワクチン作ったけど間に合わなかったんだよ」


 と、ロキは説明、弁解するが――


「それを証明する証がないから信じられん。 それに何よりお前だから尚の事信じられん」


 俺はそれを切って捨てる。


「あ~もう分かったよ! ちょっと待ってて!」


 そう言ってロキはルーンを唱え始めた。


 お読み頂き有難うございます。

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