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第五十三話

『どうですか? 落ち着きましたか?』


 そう英語で会話してきたのは明るい茶髪で碧眼の二十代前半のUSA海軍女性エバ・グリーン少尉。

 片脇にはノート・パソコンを抱えている。


『はい……大夫落ち着きました』


 同じく英語で返答を返す。 これでも伝統と格式を重んじる進学校に席を置いてるのだ。 これ位の英語での日常会話ぐらいはこなせる。 ……ホントの所は俺の幼馴染で剣術道場の刀部家の長女サキ姉に将来必ず役に立つという事で骨の髄まで叩きこまれたのだが。


 俺は永久の幻想島の結界外に出た直後、偶々UKイギリス海軍との合同軍事演習に遣って来たUSA海軍に助けられた。

 今はUSA所属ののフリゲート艦の個室をあてがわれている。

 

 ただ――どうも様子がおかしいんだよな。

 遭難者の救助を行っただけでその遭難者の俺の警護が厳重なんだよ。 この部屋の扉の外では常時二人一組で見張りが付いてる。

 単に遭難者を助けったって感じじゃない。


『それで――私の家族に無事だと連絡してくれたのですか?』


『ええ、勿論よ。 御家族の方はとても喜んでいたわ』


 と、笑顔で受け答えしてくれるエバ少尉。

 胡散臭い笑顔だ。 何かを誤魔化している者の笑顔だ。


 それに救助されたタイミングも永久の幻想島に出て直ぐだ。 まるであそこら辺から何かが出てくるのを待ってたって感じだ。

 こりゃ素直に家に返してくれるか疑問だな。


『所で貴方に見て貰いたいものがあるの。 良いかしら?』


『見てもらいたいもの? 何ですか?』


『これよ』


 そう言って彼女は脇に抱えていたノート・パソコンをテーブルの上に置いて操作する。

 そしてある動画を俺に見せる。

 

 これは……俺がヴィラコチャと戦っていた時の映像だ! どうしてこんなものが!


『映画か何かの動画ですか? これがどうかしたんですか?』


 映像はボヤケてる。 何とかごまかせるか?


『これは貴方が発見された海域――特異点と呼ばれる場所を撮影したものよ。 一ヶ月前、突如この海域に謎の飛行物体が飛来して空間に亀裂を生じさせたわ。 UKが直ぐに軍を出動させて亀裂に無人小型偵察機プローブを突入させたんだけど一機を残して空間の亀裂を通過する事は出来なかったの。 その一機もこの映像を送って暫くして壊れてしまったわ』


『にわかには信じられませんね。 しかもUKが国の機密に当たる映像を他国であるUSAに提供するとは考えられません。 それに……もし、それが仮りに本当の事だとしても私と一体何の関わりがあるのですか?』


『UKとは色々と協定を結んでいるの。 その内容は……第三者である貴方に話すことは出来ないわ。 それに関わりならあると私達は思っているの』


 と言って再びノート・パソコンを操作してパソコン画面を俺に見せる。

 画面には拡大された映像は俺の全身像。 幸いにも顔は封印開放状態なので今の容姿を変えている顔と似ても似つかない。


 だが問題が一つある。

 それは服装だ。

 俺は永久の幻想島でも普段はジャージを着ていた。 そう、ビラコチャと戦っていたあの時も今着ているジャージで戦ったのだ。

 たださすがに戦いでボロボロになったのでイリスに頼んで学校指定のジャージを買って来て貰ったのだが……まさかそれが裏目に出るとは。


『映像の人物の容姿は私と似ても似つきませんが、確かにこの人物の着ている服は私と同じような服を身に付けていますねぇ。 ですがそれだけです。 偶々偶然似たような服を着ていた可能性もあるでしょう?』


『そうね。 そういう可能性もあるわね。 処で――貴方の服、随分綺麗ね。 まるで新品のようだわ。 そう……三ヶ月以上海の上を漂流していたにしては』


『それはっ!』


 拙い! 相手のペースに引き込まれる!


『それに偶然釣り竿やペットボトルが積まれていたボートを海上で見つける事が出来る可能性なんて――1%も無いわよ?』


 彼女はニッコリと微笑んだ。


 俺は詰んでしまった……。


――日本 皇居 会議室


 此処では今皇室の――日本の神代の時代からの秘密と日本の将来に関わる人物の救出について話し合われていた。


「――以上の事から槍塚 真司(ヤリツカ シンジ)様がUSAに確保された事は間違いありません。 しかし、USAは知らぬ存ぜぬを繰り返し、此方の要求を聞き入れる気配はありません。 恐らくこのままUSA本国にシンジ様を移送すると考えられます」


 中年に差し掛かった男、韋駄 天義(イダ アマヨシ)は上座の席に座る女性国之宮 日陽(クニノミヤ  ヒヨウ)に報告する。


 アマヨシは代々皇室専属の情報部を統括する韋駄家の者である。


 そして上座に座るヒヨウは現天皇である国之宮家の長女で皇室の裏の組織を取り纏める代表でもあった。


「御苦労さまです。 引き続き情報収集をお願いします」


「承知しました」


「ヒヨウ様、願いの義が御座います」


 と其処で刀部 夜光(カタナベ ヤコウ)が発言して席から立ち上がり上座のヒヨウに頭を下げ礼をする。


「無礼であろう! 刀部! 立場をわきまえよ!」


 壮年の男がヤコウを怒鳴りつける。


「お前はシンジ様を守れなかった! 真の皇家直系でありアマテラス様の御血筋を引くシンジ様を! 貴様等が口出しする資格はもはや無い!」


 続いて年嵩の男がヤコウを糾弾する。


「良い。 発言を許します」


 ヒヨウはヤコウに発言の許可を出す。


「ありがとう御座います。 シンジ様の居場所についてですが発信機の信号が一時途切れておりましたが再び信号が発信されました。 其処で情報部の情報とすりあわせた結果、シンジ様の居所を指し示していると判断出来ます。 なのでどうか! 我等刀部にシンジ様救出の任をお与えくだされますよう伏してお願い申し上げます!」


 ヤコウはヒヨウの見える位置で床に両膝を付き土下座する。


「出しゃばるでないわ、ヤコウ! ヒヨウ様! この者の言う事などお聞き召されるな!」


「……良いでしょう。 ヤコウ、貴方達刀部に任ます。 くれぐれもUSAに気づかれずシンジ様の救出を行って下さい。 韋駄は情報部の総力を上げて刀部のバックアップをして下さい」


「承知しました」


「ヒヨウ様!」


 不満気にヒヨウの名を叫ぶ壮年の男。


「刀部は世界で唯一シンジ様の居場所を正確に把握出来ます。 能力も申し分ありません。 ならば刀部に任せるのが良いでしょう。 何か他に問題がありますか?」


「……御座いません」


「では刀部は直ぐにシンジ様救出に当って下さい」


「ははっ!」


 方針が決まった後、ヤコウはいの一番に会議室を出て行った。

 他の者もヤコウに続いて会議室を出て行く。

 

 一人会議室の椅子に座り窓の外の景色を見つめるヒヨウ。


「ああ、グンディール……早く貴方に会いたい……」


 その顔は恋の病に侵された乙女のものであった。

 ちょっと苦しい終わり方をしてしまいました。

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