第五十話
1/17 今更ながら女神の名前が間違っているのを発見しました。
メディア ⇒ メデイア
アンデギィア ⇒ アンギティア
ご迷惑をおかけし大変申し訳ありませんでした。
食堂を脱出した俺達だったが、そんな俺を追い掛けて来る女神達。
「う”あ”あ”あ”~~~……。 グンディールざま~~~」
さながらゾンビの如く彷徨い、俺を逃すまいと追撃して来る。
て、言うか、もうこいつらゾンビだ! 気絶させて意識を刈り取ってるはずなのに白目を剥いて起き上がってきてこえーよ!!
唯一の救いは、彼女達が正気を無くしている所為で権能を使ってこない事だ。
権能を使われたら、流石の俺でもにこれだけの女神達相手には太刀打ち出来ん!
こうなれば一旦、舘の外に出て身を隠すしかあるまい!
「キルケ! メデイア! 催淫効果ってどれ位持続する!」
「それぞれ摂取した量で異なるけどー! 大体一日、遅ければ二日は掛かるよー!」
と、答えるキルケ。
二日かよ! アレを相手に二日はキツイぞ……。
「中和薬とか作れんのか?」
「作れない事も無いですが、それでも二日は軽く掛かります!」
今度はメデイアが答える。
二日も掛かるなら逃げまわるのと大差ないな。 どうするよ俺!
「仕方ない、一旦、海の島に逃げ込むぞ! 天の島だとあいつら飛んでくるかもだからな!」
「そうですね。 その方が妥当ですね……。 処でグンディール様、さっきから暑くありません?」
ウケモチさんが何処と無く色っぽい。
「そうそう、私もさっきから体が火照っちゃって……」
ヘスティアもウケモチさんと同じような発言をする。
二人共、何だか顔が赤く熱っぽい。 まさか!
「もしかして、二人共、あのお肉食べたー?」
キルケがウケモチさんとヘスティアに問いただす。
「ええ、食べましたよ?」
「でないと味の加減がわからないもん」
「おいおい、どのくらい食べた!」
「ほんの数切れだよ?」
「たたし、塊で一kgぐらいに成りますが」
「駄目じゃん!?」
そうしている間に二人の様子はみるみる変化し、食堂に居た女神達と同じくピンク色の雰囲気を醸し出し、瞳孔がハート型に成る。
「シンジさまー、わたくしをどうかお食べ下さいましー」
しなだれ掛かり俺に抱きついてくるウケモチさん。
「あ! ずるい! ウケモチさん! グンディール様! 私を先に食べて! その為に弟のゼウスに永遠の処女の誓を取り消して貰ったんだから……」
と、見た目十二歳に見える少女の女神は長い茶色の髪を乱して迫ってくる。 胸が薄くて幼さ全開なのに凄く魅力的に見える肢体を晒す。
くっ! これはもう手遅れだ!!
「悪い! 二人共!」
「きゃ!!」
ウケモチさんとへスティアの二人共に首に手刀を宛てて気絶させる。 が、それを意に介さず俺に迫ってくる。
「なんで!?」
「二人共、興奮状態にあるからその程度じゃ気絶しないよー」
アドレナリン全開って奴か! 仕方ない振りきって逃げる!!
そう決断した時、俺の体は光に包まれその場から掻き消えた。
――謎の部屋
「ん? 此処は……」
光が鎮まり俺はゆっくり目を開く。
エクストリームウルトラキングサイズを遥かに上回るベッドの上に俺は居た。
「なんじゃこりゃーーーーーーーーーー!?」
「ウフフフ……逃しませんよ、グンディール様……」
「サーガ!? どうして!?」
サーガは男の子の目には毒になるスケスケネグリジェに際どい黒の下着を身に纏った扇情的な姿を俺の目の前で晒していた。
「婚姻を結んだ時、グンディール様がヘタレて初夜を逃げ出さないように予めグンディール様を追跡してこの部屋に転送する仕掛けをブリギッテに頼んでおいたのですよ。 さあ、グンディール様、私と共に熱い夜を過ごしましょう……」
ジリジリとにじり寄るサーガ、そのサーガから必死になって逃げる俺。
其処でこの部屋の扉がバンッ!と開き、光が指す。 その光の中に人影が見えた。
「ちょおっと待った!!」
戦乙女のエイルだ!
「エイル! グッド・タイミングだ!!」
だが、エイルは俺を無視してサーガに向かって近づき叫ぶ。
「サーガ様! 何グンディールを独り占めにしてんですか! 私も混ぜて下さい!」
「エイル!? お前もか!!」
「あらダメよ。 グンディール様の初めては私が貰うの……」
訳の分からない言い争いを始めた二人。 正気を無くしているせいで二人共、自分がおかしい事に気付かない。 そして、目の前の相手と言い争いに夢中に成っている。
脱出するなら今だ! 俺はそっとベッドの上から入り口に向かって移動し扉から外に出た。
ふう! 何とか逃げ切れたか……。 でもまた神々の舘に戻って来てしまったようだな。 俺は再度神々の舘から外に向かって脱出する事を余儀なくされた。
――神々の舘 玄関ホール前
よし! ここまでくればもう一息だ!
そう思った矢先、イキナリ足の力が抜け、カクンと膝が折れた。 俺は走って来た勢いそのままに玄関ホールに突っ込む。
なんだ! 足が! いや、体全身の筋肉が言うことを聞かない!
満足に喋る事も出来なくなった俺の目に人影が映る。
薬学の女神ヒュギエイアだ!
「な…で……ここ……に!!」
「グンディール様、すっかりわたくしの事をお忘れでしたね。 そりゃあ初めの頃に一回出たきり、しかもグンディール様は気を失っている時でしたから仕方ありませんが、それでもわたくしの事を忘れるなんて酷いじゃありませんか! なので、わたくしも実力行使する為に罠を張らせて頂きました。 この玄関ホールには筋肉弛緩剤を気化させたものを予め散布していましたの。 あ! わたくし達は予め中和剤を服用して居るので効きませんよ?」
ちょっと待て! わたくし達って……。
俺は全身に嫌な汗を流しながら俺の考えが杞憂である事を祈ったが、それも無駄に終わった。
「グンディール兄様! 最近ちっとも相手してくれなくて寂しかったんですよ……」
「そうそう、他の娘達の相手ばかりして幼馴染のあたし達の相手もしなさいよね!」
「私……そんなにうっとおしい女で御座いますか? グンディール様~!」
「ワタクシ、自分の恋路には妥協しない主義なのよ~。 だから、覚悟しなさい、グンディール~」
「ぐすっ! 私の事……忘れないで下さい! グンディール様!」
「グンディール様……この間の埋め合わせして頂に参りました」
「妹に手を出してはダメよ、グンディール。 私で我慢しなさい……」
昔馴染みの女神アシ、アナーヒター、チシュター、ラーム、それにアンギティアとシギュン、本邦初登場のスノフが順に発言し、俺の周りを囲っていく。
これはピーンチ! このままじゃあ俺、美味しく頂かれちゃう! どうしよう!!
「皆様、駄目ですよ。 それではグンディール様が引いてしまいます」
最後に出てきたのは幸運を掴む女神デイアドラだ!
地獄に仏、俺は視線でデイアドラに助けを求める。 が、
瞳孔が! 瞳孔がハート型に成ってる!!
俺は地獄で閻魔様と出会ってしまった……。
「グンディール様、そろそろ私も待つのが限界なんですよ? わかってらっしゃいます?」
ディアドラは俺の顔の前で膝を付き美しい手で俺の頬をそっと撫でる。
あ、これもう駄目だわ。 食われる。
諦めかけたその時、俺を囲っていた女神達全員が何の前触れもなく崩折れる。
「一体全体どうなっておるのじゃ、グンディールよ……て、何と情けない姿を妾の前で晒しておるのじゃ!!」
俺のピンチの救い主は褐色の肌に銀色の髪、銀色の瞳の美女。 冥界とこの『地の島』の管理人、女神エレシシュキガルである。
「エレ…シュ……ガル……!」
「ん? 薬を盛られたか。 ちょっと待っておれ。 今、薬を……在った」
エレシュキガルはヒュギエイアの胸元に手を突っ込んでまさぐり、中和薬を見つけて俺に飲ませてくれた。
どうやらエレシュキガルは正気のようだ。
「ふう! 助かったぞエレシュキガル! あれ? エレシュキガルはなんで正気なんだ?」
「それは今まで妾の管轄である冥界で仕事をしておったので夕餉に遅れてしもうたのじゃが、来てみればこの騒ぎ。 一体全体何があったのじゃ?」
「それは後で説明する! 今は一刻も早くここから離れるぞ!」
俺はエレシュキガルを連れて、外に脱出した。
神々の舘から離れた森の入り口に来た時、メデイアとキルケがダークエルフ族の女性を数人引き連れて神々の舘に向かう所であった。
「グンディール様ー! 良かったよー! 心配したよー!」
「グンディール様、ご無事で何よりです! グンディール様がイキナリ消えたんで、もしかして誰かがグンディール様を舘に引き戻したかと思い、ダークエルフ族の助力を得てお助けに向かう途中だったんですよ!」
「心配かけて悪かったな……キルケ、メデイア。 危ない処をエレシュキガルに助けて貰ったんだ」
俺はメデイア、キルケ、エレシュキガルの三人にそれぞれ事情を説明した。
「ふむ。 事情はわかったが、これからどうするのじゃ?」
「催淫効果が切れるまで、我等ダークエルフ族の里に隠れて居て下さい」
そう言ってダーク・エルフ族の巫女のソレーユが提案する。
「いいのか?」
「はい! グンディール様ならば大歓迎です!」
「それじゃあ頼む」
「はい! ではこちらに……」
俺達はソレーユの案内でダークエルフ族の里で二、三日世話になった。
甲斐甲斐しく世話をしてくれるソレーユに対しヤキモチを焼くメデイア、キルケにエレシュキガル。
エレシュキガルのヤキモチははわかりやすく、子供のように頬をぷっくり膨らませる。
そこで俺がその膨らんだ頬にキスをするとプシューと音立てて顔が真っ赤に染まりアワアワと思い切り動揺して可愛い反応をしてみせる。
などと、ソレーユや女神達と戯れていたらあっと言う間に時間が過ぎた。
俺達は催淫効果が切れた女神達が居る神々の舘に帰還した。
――神々の舘 お仕置き部屋
そして現在、俺達の目の前でウィルトゥースと九天玄女が天井から縄で吊るされている。
縄は勿論、神力を封じる特別製だ。
「さて、言い訳はあるかな? あっても聞く耳持たんがな!」
「そんなものは無い!」
清々しい返事をするウィルトゥース。 こいつに反省を求める俺は間違っていたか……。
「そんな~、儂関係無いのに……」
「ウィルトゥースを止めなかった時点で共犯成立だぞ! 九天玄女!!」
俺は二人の罰を皆を代表して言い渡す。
「皆と協議した結果! 七日間そのままの状態で食事抜きと飲酒禁止に決定した!」
「へ? ちょっ、ちょっと待った! それは勘弁してくれ! グンディール!!」
「儂等、食事と酒が唯一の楽しみなのに七日間も我慢できん!!」
ウィルトゥースと九天玄女が急に慌てふためき動揺する。
やはり罰は罪を犯したものには耐えられないものを与えるに限る!
「それだけ皆、今回の件には怒っていると言う事だ! 此処でみっちり反省してろ!!」
「「そんな殺生な~」」
そして俺はお仕置き部屋の扉を閉めた。
二人が反省して更正する事を切に願う。
後日談。
ミイラのごとく殆ど皮と骨だけの変わり果てたヘズと再会した時、ふと疑問に思っていた事を尋ねた。
「ヘズ、ゲルセミに連れ去られてる最中、正気だったよな? なんでだ?」
「……僕は鹿や鶏肉以外余り食べないんですよ。 だから、あの時も肉を食べていなくて正気のままだったんです。 ……でも、あんな目に合うなら肉を食べて正気をなくしていた方が良かったですね。 ハハハハー」
目は虚ろで乾いた笑いを発するヘズ。
仕方ない。 後であの肉をちょっとだけ食わせるか……。




