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第四十五話

 風邪を引いて寝込んでいたので更新が遅れました。

 俺は永久の幻想島に繋がるゲートを開き、スキュレーを(ともな)いゴルゴーンハーフを担いで『海の島』に転移した。

 『海の島』にあるティアマトの舘の中やその中に設置してあるゲートは空間を(いじ)ってあるので巨体であるゴルゴーンハーフを持って帰っても舘の通路や部屋を破壊する事はない。


 これは元々、巨人族のような大型の種族の出入りを想定したのと永久の幻想島の内外から大型の物資を運搬する為の措置だ。

 その巨人族も今や女性しか残っていないが……。

 これも早急に解決させなければならない問題の一つだな。


 俺とスキュレーが永久の幻想島の『海の島』の舘、転移ゲートの部屋に転移が完了した時、ティアマトがわざわざ迎えに来てくれていた。


「お帰りなさいませ。 グンディール様。 既に浴室の準備ができております。 新しい着替えもそちらに」


 流石ティアマト、浴室の準備と新しい着替えの用意を既にしてくれていたか。

 ……しかし、何だろう。 ティアマトの視線が痛い。


「グンディール様。 ……そちらのお嬢様は?」


「彼女はスキュレー。 俺の恩人でもあり、その……事情があって連れて来た」


「また、いつものですか……はあ……」


 ティアマトが溜息を一つ盛大に吐く。

 またってなんだよ、またって。 そりゃあ、俺だって連れて来ないで済むんなら連れて来やしないぞ。


 ティアマトは侍女達にスキュレーの接待とゴルゴーンハーフの解体を指示する。

 天然物のゴルゴーンの肉の味は絶品だが、コイツはギリシアの魔女キルケーが生み出したもんだ。 ティアマトの侍女達には解体した後、血や肉や内臓は厳重に管理しローマの女神キルケとメデイアに渡して調べてもらうように、残りはブリギッテの工房に運ぶよう言付けた。


 ティアマトはゴルゴーンハーフの血で全身染まった俺と共に浴室に入る。 昔のように服を脱ぐのを手伝って、俺の背中を流す為だ。


 ティアマトも一糸纏わぬ姿となり、俺の前に裸体を晒す。

 角と尻尾が生えているがそれ以外は人間の女性と変わらない。

 と言うか、相変わらずいい身体してんな~……ティアマト。

 ティアマトに気づかれぬよう、俺はティアマトの身体をチラ見する。 だって男の子だもん!

 と、いかん、いかん! 大事な説明をしなくちゃいかんのだ。


 俺は浴室に入りながらスキュレーと会った経緯も含めてティアマトに説明した。


「その話、あたくしも聞いた事が御座います。 その権能が現実に存在しているとは……確かに保護が必要ですね。 しかし……」


「しかし――何だよ?」


 半目で冷たい視線を俺に向けてくる

 俺はそれを何食わぬ顔で背中で受け止めるが、内心は冷や冷やものだ


「また、グンディール様の花嫁が増えたと思いまして……」


「彼女はそんなんじゃあないぞ?」


 スキュレーとは今後、彼女の力について医療の神であるエイルやヒュギエイア達と相談するつもりなんだ。

 決して俺が無理強いして連れて来たんじゃないぞ。 そう、決して!


「本人はそう思っておりませんよ? 目を見ればわかります」


 うっ! 鋭いな。 女の勘ってやつか?


「……これ以上は増えないぞ。 て、言うか増えたら(たま)らん! 身が持たん!」


 俺は俺自身の決意をティアマトに宣言した。 いや、本心からだよ?


「残念ながら、その望み叶いませんよ。 グンディール様」


 ティアマト、イキナリ俺の決意表明を破壊! 俺は痛恨の一撃を喰らった! どー言うこっちゃ!? 


「ちょっと待て。 何かあったのか!?」


「それはサーガ様とウルド様よりお聞き下さい」


 言葉遣いは普通なのに何やら刺々しい感じがするティアマト。


「ウルド? ノルンのウルドが来てるのか?」


 おお! ひっさしぶりの知人の来訪! あれ? でもどうやって……ああ、もしかしてユグドラシルの枝を取りにノルニルを派遣した時にそいつ等に付いて来たのか。 それなら、死んでたヘズが生き返ってこの島に来てたのも(うなづ)ける。

 ウルド達が昔、ユグドラシルから取れる種や花やら使って作った薬で完全な死者蘇生が出来るって豪語(ごうご)してたもんな。

 

「はい、姉妹揃っておいでです」


 姉妹(そろ)って? おかしいな……あいつ等、ユグドラシルの世話が我等が使命って言ってたのに。

 そのユグドラシルを姉妹揃って離れるってありえんだろう。 何かあったのか?

 

「……他に変わった事は?」


「ブリギッテより伝言です。 グンディール様が以前調査を頼まれた絡繰の分析が出来たのでその解析結果を報告したいと」


「絡繰? ……俺の体から出てきた発信機の事か? そういえば頼んでたわ! 色々あってすっかり忘れてた!」


「グンディール様。 お湯をお掛けします」


「ん」


 ティアマトは桶でお湯を頭や背中に掛けて洗髪料や石鹸の泡を洗い落としていく。


「ふいいぃ~。 やっぱり此処の風呂は最高だな。 これで他の男連中も居りゃあ楽しいだろうに……」


「グンディール様……」


 今は居ない嘗てこの島に居た馬鹿で気のいい男達の事を思い出す。

 あの頃は本当に馬鹿やったなあ。 標的の女の裸を誰が一番最初に覗くか、とか。

 俺はその時の事を思い出し、笑みが(こぼ)れる。 だが、もう男達は居ない。 全員死んでしまった……。


 けれど、この島の住人達が全て居なくなってしまった訳では無い。

 (かつ)ての(にぎわい)をこの島に取り戻す! 当面の目標はこれだな!


「まあ、その為にもこの島の女達が気に入る男達を頑張ってスカウトしてこにゃあならん。 これから忙しくなるぞ!」


「そうですわね! グンディール様。 あたくしも知り合いを当たってみます!」


「おう、頼む!」


 俺は新たな目標を(かか)げ、それに向かって邁進(まいしん)する事を決意する。


――神々の舘 ブリギッテの工房


「よう! 前に俺が頼んだ発信機の解析ができたんだって!」


「グンディール! お帰りなさい! 以外に早かったんだね! それでゴルゴーはどうしたの?」


「ティアマトの処で解体してくれてる。 解体が終わったら、血と肉と内蔵以外はブリギッテの工房に運ぶよう指示してある。 ただなあ……」


「ただ?」


「ギリシアの魔女スキュレーが魔術と魔法薬でゴルゴーンとドラゴンを掛け合わせた魔獣なんだよ」


「へー、それは興味深いね。 その素材が届いたら差速、ミネルウァと協力して革鎧の製作に取り掛かるよ!」


 ミネルウァは知恵、家政、医学、技芸、芸術、染色、科学、商業、貿易の女神でまた、数と楽器を創案した女神でもあり共同体の守護神でもある。 ローマー時代での彼女はギリシアのアテナと同一視されていたが、本来、戦は専門外の女神である。


「で、発信機の事だが」


「そう! それ! あの絡繰、微弱な電気を動力にして動いてたんだよ! しかも! 中核に使われていたのは神の身体の一部だったんだ! 分解した当初は金属かと思ったんだけど、キルケやメデイアに調べてもらったら、生物の組織。 しかも、何らかの神の肉体みたいなんだ。 で、此処からが問題なんだけど、あの絡繰は動いてる限り、その一部はどうやら本体である神と共鳴していて何処に居ようとその場所を特定できるみたいなんだ。 そして、それは次元と結界で阻まれ、守られた永久の幻想島の中と言えども例外じゃあ無いんだよ!」


 まずいな……。 それは取りも直さず俺の行方とこの永久の幻想島の場所が特定された事になる。

 発信機を作ったのは多分刀部家(カタナベケ)の三女瑠璃愛(ルリア)で間違いないと思うが、発信機の部品に神の身体の一部を使用って……。


 ……もしかしてアレか!? 代々、刀部家の守り神の布都御魂剣(ふつのみたまのつるぎ)!!

 布都御魂剣って、奈良県にある石上神宮で祀られてる御神体だから本物と違うだろうって思ってたけどまさかの本物だったのか!!

 こりゃあ、びっくりだ!!


 そしたら、俺の居場所は刀部家と高天原、天津神の連中に知られてるな。

 こりゃあ、何らかの対策を取らなきゃならないな……。


「調べてくれてありがとな、ブリギッテ。 発信機とその神の破片は俺が預かっとくわ」


「うん、わかった。 一応、元通りにしておいたよ」


 ブリギッテは保管棚から発信機を取り出し、俺に手渡してくれた。


「処で、北欧からウルド達が来てるって聞いたけど何か知ってるか?」


「ううん――僕、新しい槍を打ち直すのに忙しくてそれは知らない。 ……そういえば、グンディール。 槍の名前は決まったの?」


「ああ、ユルン・メトスって名付けた。 意味は『全の槍』。 語源は俺の故郷のペルシアで俺がガキの頃に聞いた昔話に出てくる穂先をユルン、柄をメトスって言って全ての槍に変化し、全てを統べる万物の槍の事だ」


「うわあ~、すごい名前を付けてくれたんたんだねえ」


 そういえば槍の鞘について疑問があったんだ。

 次いでだ。 ブリギッテに聞いておこう。


「一つ質問なんだが、召喚の時、穂先の刀身に鞘が無いんだが、鞘って何処にあるんだ?」


「ああ、それなら普段槍がある次元だよー。 一々、槍の召喚、送還で鞘を着脱するのって面倒くさいでしょ? だから、特に鞘の指定が無い場合は自動で着脱するようになってるんだよ」


 確かに。 格好良く槍を召喚した後、わざわざ鞘を抜くのは……ありえんわな。

 細かい事まで気を配ってくれたんだな、ブリギッテ。


「それじゃあ、俺、サーガにも呼ばれてるからこれで行くよ」


「うん。 それじゃ~ね、グンディール」 


 ブリギッテに見送られて俺はサーガの居るセックヴァベックに向かった。


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