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第三十九話

 ヴィラコチャの襲撃から三日経った。

 防衛の女神セークーリタースと共に俺は永久の幻想島の結界を修復し、たった今、それの作業が終わった処だ。


 緊急の作業が終わったので、俺は俺の槍を作ってくれたブリギッテ達に会いに食堂に向かっている。

 女神達は寝食を忘れ、槍作りを頑張ってくれたのだ。

 その御礼と労いの言葉を言う為に会いに行く途中だ。


 食堂に着いた俺を出迎えたのは、ヘスティアにの料理を貪り喰らう知識や技術を司る女神ミネルウァやブリギット三姉妹達、槍にさらなる加護を与えてくれた強さと力を司る女神ストレーニアや突き貫く事を司る女神ペルトゥンダ達であった。


 次いでにスタミナドリンクもガブ飲みしている。

 大丈夫か? 飲み過ぎると体に毒だぞ。


「ふぁ、ふんえーる。 ふぁにかよふぅれも?」


「……口の中の物をちゃんと食べて飲み込んでから喋ろううな、ブリギッテ」


「うんぐ。 で、何か用でも? グンディール」


「ああ、この槍を作り直してくれたお前等に礼をと思ってな。 それと、俺から蜂蜜酒と葡萄酒の(おご)りだ。 好きなだけ皆で飲んでくれ!」


 ウィルトゥースと九天玄女が俺の後から蜂蜜酒と葡萄酒の入った樽を担いで食堂に入って来て皆に振る舞う。


「「「うわあ! ありがとうございます! グンディール様!!」」」


 女神達は皆、喜んで酒をコップや盃に汲んで飲み交わす。


「それとな、ブリギッテ。 この槍の能力を聞いておきたいんだが……」


「ああ! そうだね! ちゃんと説明しないとだね!」


 俺はブリギッテから槍の取説を聞いた。

 内容は以下の通り。


 1、新しい槍の能力はヴァルスロットの能力を全て継承している上に新しい能力

   も備わっている。


   ただし、作り手であるブリギッテ自身にも把握出来ていない能力や力がある

   が、必要に応じて槍が自ら教えてくれるらしい。


 2、この槍には複数の形態がある。


 3、穂先と柄が合体した完全状態では突撃騎搶ランス状態では最大全長六

   mで突きだけでなく斬撃も可能、スピア状態では柄は伸縮自在だが俺

   は大体三m位で固定して使っている。


 4、穂先と柄の分離状態では穂先はこちらも斬撃が可能な全長二mの突撃騎搶

   の一形態を、柄は槍と盾の二形態を追加。


   柄の槍形態では穂先の形状は俺の意志で自由自在。


   盾の形態は柄が縮んで盾の持ち手となり、柄の両端に取り付けられた穂先と

   の接合金具や石突きの金属から盾を構成する金属が増大し、盾を構成する。

   こちらも俺の意志で自由に形状を変更可能。


 5、普段は別次元に存在し、必要に応じて召喚、送還が可能。


 6、そして名前はまだ無い。


 等である。


「ごめんね、グンディール……。 本当ならグンディールにも使える剣を作ろうとしたんだけど、僕には剣に似せた突撃騎搶ランスが精一杯だったの……」


 申し訳無さそうに詫びるブリギッテ。

 それに対して俺はブリギッテに満足気に微笑みかける。


「いや、俺はこれで満足だ。 ……剣の権能を諦める決心をさせるぐらいにな」


「えっ!? グンディール、あんなに拘っていた剣の権能を諦めちゃうの!?」


 ブリギッテの大声で食堂に居た女神達がざわつく。

 そりゃそうだ。 子供の時から長年に渡って拘り、欲した能力を俺が諦めると言うんだからな。

 それを知っている者達からすれば驚くだろう。


「ブリギッテ、お前の作り直してくれたこの槍はそれだけ俺を満足させる代物だ。 流石、鍛冶の女神だよ」


「グンディール……」 


 感極まってポロポロと涙を流すブリギッテ。


「これは凄い事です! 兄様に剣の権能を諦めさせたなんて!!」


「そうね! あたしもビックリだわ! 誇っていいわよ、ブリギッテ!!」


「本当に凄い事です~!」


「そうですね。 私もこんな日が来るとは想像出来ませんでした」


 驚く俺の妹分のアシと幼馴染のアナーヒター、ラーム、チシュター。


「おめでとうですわ! ブリギッテ!」


「……めでたい」


 妹を祝福するブリードとブリーイッド。


「ううん! これは皆が協力してくれたからだよ! ありがとう、皆!!」


 女神達全員がブリギッテを祝福する。

 そんな中で俺は前々から疑問に思っていた事を口にする。


「処でブリギッテ、俺の部屋にあった俺の愛用の革鎧知らない?」


「えっ!? ……愛用って、もしかしてゴルゴーンの革鎧の……?」


 ゴルゴーンとはヌーによく似た青い体表、鋼鉄の鱗を持つ魔獣で目には石化の力が宿り、その瞳を見たものを石化する。

 もっとも、ゴルゴーンは常に頭を下げ、視線を下に向けている為、石化される事は殆ど無い。

 ただしコイツ等、隠形の術に長けていて滅多にその姿を晒す事は無い。


 狩猟を司る俺でさえコイツ等を探し当てるのに困難を極め、狩るのに百年以上かかった難物だ。


 ゴルゴーンの革鎧があったらビラコチャとの戦いで攻撃を受けても楽に受け流せたんだが……。

 

「そうそう! アレ、ずっと探してんだけど全然見つかんないんだ。 俺が死ぬ直前まで確かに俺の部屋で保管してあったはずなんだけど……」


――ピタッ!


「……」


 俺のこの言葉でブリギッテや食堂に居た女神達は一斉に皆動きを止め、沈黙する。

 そして、ブリギッテを始め全員俺から目線をそらし、俺と目を合わそうとしない。 何故だ?


「……その様子だと何か知っているな。 ブリギッテさん」


 ブリギッテは俺に詰め寄られ観念して事の真相を語りだす。


「……え~と、言い辛いんだけど実は……」


 俺が死んだ当初、俺の事を慕っていた女神達が毎晩、代わる代わる俺愛用のゴルゴーンの革鎧を抱き枕に涙で濡していたらしい。

 最初の頃はブリギッテのメンテナンスで保っていたそうだが、その内にメンテナンスが追いつかなくなって壊れてしまったそうだ。

 その壊れたゴルゴーンの革鎧を女神達がバラして鱗や革の切れ端を使ってアミュレットを作ったんだと。


「て、おい! 人が大事にしてた革鎧になんて事してくれてんだ!! ゴルゴーン探すのすんごく苦労したんだぞ!!!!」


「それは自分勝手に死んだあんたが悪い! 皆、悲しくて寂しかったんだからね!!」


 俺の物言いに反論するアナーヒター。


「そのアミュレット、お前は作らなかったのか?」


「勿論作ったわよ」


「……」


 もう呆れて何も言えんわ……。


「少々お待ちを。 グンディール様」


 其処で話に割って入る知恵と叡智を司る女神ソフィア。

 俺は溜息混じりで尋ねる。


「なんだ? ソフィア」


「ゴルゴーンに関してギリシアで興味深い話しを耳にしました」


「興味深い話し?」


「なんでも一体のゴルゴーンが時折、ギリシアの神域に現れては暴れまわっているそうです。 しかもそのゴルゴーン、体表は藍色でその鱗はミスリルで出来ていました」


「それは本当か!? ソフィア!」


「はい。 ヘパイスト様の工房で働くキュクロプスに鱗を見せて頂ました。 確かに藍色の珍しいミスリルでした」


「よっしゃあ! でかしたソフィア! ちょっくらギリシアに行ってくるわ!!」


 俺は喜び勇んで神々の館から飛び出した。

 俺がいなくなった食堂では勝ち誇った顔のソフィアがVサインをしていた。


「皆様、貸一つです」


「「「あんたもアミュレット作ったでしょう!!」」」


 声を揃えて訴える女神達に対して、ソフィアは。


「それはそれ、これはこれです」


 女神達の言葉をバッサリ切り捨てた。


 ちなみにゴーゴン三姉妹のメデューサの姉二人はグンディールにアテナの呪いを解いて貰い、永久の幻想島の神々の館で暮らしています。

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