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第三十七話

ネットの回線が混雑して更新が遅れました。

 俺はへズから槍を受け取ろうとした。

 ブリギッテは槍を完成させてくれたんだな。


 ん? そう言えば何か忘れてるような……。

 そうだ! ヴァルスロットを完成させた時、酷い目にあったんだった!


 と、俺がヴァルスロットを作ってた時の出来事を思い出した直後、それは起こった。


「「あっ!?」」


 そう、新しい槍が俺の手をすり抜け、俺の心臓に突き刺さったのだ。

 槍と一体化した証明、俺の心臓の血液から槍の刀身の鞘が作られるんだった! すっかり忘れてた!


「グンディールさまあぁぁぁ!?」


 俺の心臓に槍が突き刺さった状態に、驚愕して俺の名を呼び絶叫するヘズの声が聞こえる。


「大丈夫だ! 驚かせたな、ヘズ」


 心臓に槍が突き刺さったままだというのに普段通りに対応する俺にホッとするヘズ。


「全くです! また誤って槍で刺殺したかと思いましたよ! ……処でそれ、本当に大丈夫なんですか?」


「ああ! これが俺の新たな半身である槍と一体化した証だ!」


 槍が徐々に俺の体から心臓に流れる血液と共に抜け出し、その血液が槍の穂先の刀身に巻き付いて、やがてそれは刀身を覆う鞘と化す。

 それと同時に俺の中に在った過去の記憶と以前に比べ遥かに増した神気が体の奥底から溢れだす。

 どうやら神に――グンディールに完全覚醒したようだ。


 俺の纏う大量で、それでいて濃密な黄金の神気が俺の周りに居る者を驚愕させる。

 ちなみに、一番驚いてるのは俺だ! 何だ、この神気は! これじゃあまるで創造神クラス……いや! それさえも遥かに超越した力だ!


「は、初めて見た……。 こんな凄い神気……」


 間近で感じているヘズは呆然としている。


「なっ、何やこの神気!? わての力を遥かに超えとる……!? 信じられへん!!」


 いつの間にか俺達の近くに戻っていたヴィラコチャは目の前の現実を受け止められずにいた。

 完全に完成した槍の柄の能力、ありとあらゆる傷や病、状態異常を瞬く間に完治する能力でヴィラコチャに負わされた傷が一瞬で治癒する。


「待たせたな、ヴィラコチャ! 俺の準備は万全! 今度は俺の方から行かせてもらう!」


「なあ!? ちょ、ちょ、ちょっと待ったてな、グンディールはん! 話し合おうな! ほら、よう言うやろ! 人類皆兄弟! 平和が一番! 暴力反対!」


 俺はヴィラコチャをジト目で睨む。


「お前がそれを言うか! そもそも俺たちゃ神で人じゃねえ!」


「おや? これは一本取られましたわ」


 ハハハと笑うヴィラコチャ。

 それで誤魔化したつもりか!


 俺は新たな槍の力を解放する。

 すると、槍の穂先の刀身がが伸びて、柄が縮む。

 これは! この形状は大剣!? いや、よく見れば違う! そう、これは突撃騎搶ランスだ!


 ブリギッテの奴、ホントいい仕事してくれた! これ、色んな意味で俺好みじゃねえか!

 俺はテンションアゲアゲ、アルティメットテンション(意味不明)だ!

 おっ! 今、いい事思い付いたぞ!


「ヘズ! 少しそいつの相手しててくれ! すぐに戻る」


「わかりました。 グンディール様」


 俺はヴィラコチャをヘズにまかせて、ワルキューレに介抱されているウェーリタースの処に行く。


「大丈夫か! ウェーリタース」


「グンディール様! 少し体が痛む程度で大丈夫で御座いますわ」


「そうか。 なら、お前に頼みがある」


「頼み?」


 俺は、ウェーリタースに耳打ちする。


「!? グンディール様……それ、かなりエグいですよ……」


 蟀谷(こめかみ)から一筋汗を垂らして苦笑いするウェーリタース。


「なに、全てはこの島の平和の為、皆の平穏の為、そして何より自分勝手で我儘なアイツの為だ。 ほら! これで皆が幸せになる!」


 俺が一度言いだしたら聞かない事は彼女もわかっている。

 それに彼女もこの島や仲間をいいように好き勝手してくれたヴィラコチャを許しはしないだろう。

 だから、俺に協力してくれるはずだ。


「わかりました」


ウェーリタースは一つ溜息を吐いて首肯し、俺の突撃騎搶に手を添えて真名と言霊を織り込んだ神力を込める。


「……終わりました。 でも、本当に宜しいので? インカの神々に恨まれるのでは?」


「ああ、それなら大丈夫だ! インカの奴等、ヴィラコチャがどうなろうと知ったこっちゃねー奴ばっかだからな。 なんせヴィラコチャ、あの性格だから昔から人や動物、神々に嫌われてやんの! それでもヴィラコチャに恩がある奴は居るだろうが、此方に非がない事と力を示せば黙るし、逆にインカの神々には感謝されるだろうよ」


「そうですか……。 それは……なんと言うか……ロキより酷くて憐れですね……」


「言われてみればそうだな……」


 と、イカン、イカン! 此処で時間を食ってる暇は無い!

 俺は直ぐ様、取って返す。


 お! ヘズの奴、ヴィラコチャといい勝負してるじゃねえか! あれでアース神族の中じゃ役立たず扱いされてんのが不思議な位だ。

 もしかして、ヘズの奴……いや、いいか。 それより、今はヴィラコチャだ!


「ヘズ! もういいぞ! 下がれ!」


「わかりました!」


 ヘズの乗る昆虫巨人は俺の指示通り俺の後方に下がる。


「さあて、ヴィラコチャ。 お互い、これで最後にしようや!」


「同感や! わてもそろそろ疲れてきたさかい、そうしまひょか!」


 ヴィラコチャは杖をクロスさせ、神力を溜める。


 一方、俺はウェーリタースの能力と神力を込められた突撃騎搶に(かつ)ての槍、ヴァルスロットの能力の一つを発動させる。

 穂先の刀身が敵を倒す為に必要な数に分裂、敵の弱点である属性に変化し、どんなに逃げようと隠れようと何処までも執拗に自動追尾して敵の防御を無効化した上で必ず敵の急所を貫き、次々と敵を倒す。


 唯一、槍の持ち主である俺が技を解除しない限り、永遠に追いかけっこが続く。


 これこそ俺が幼い頃、十万の魔族を一瞬で殲滅した技である。


 ちなみに、俺の槍は他神族の神器、アース神族の主神オーディンのグングニル、ダーナ神族ダーナ・オシー太陽神ルーのブリューナク、クー・フーリンのゲイボルグなどは皆、ヴァルスロットをモデルに創りだされた物だ。


 その槍の力をヴィラコチャに向かって放つ。


「その技で来よりましたか! でも無駄でっせ! その技はとうの昔に見切ってまっせ! 言霊で……!? しもた! 言霊、封じられとったんや!」


「おいおい! そんな大事な事忘れるなよ、間抜け!」


 分裂した穂先の刀身はヴィラコチャに向かって一直線に突き進む。

 一方、ヴィラコチャはその穂先の攻撃を防ぐ唯一の方法が封じられている為、あたふたしている。

 為す術無く、ヴィラコチャは俺の技をまともに受けて永久の幻想島の結界を突き破って遠い彼方に飛んで行く。


「さらばヴィラコチャ! 二度とインカの神域から出てくんじゃあねえぞ!」


「……それどういうことよ?」


「ん? あ、気が付いたかエイル。 なあに、ウェーリタースの能力と神力でヴィラコチャの全ての力を封じてインカの神域に縫い付けた。 これで一万年位は地上に出てこれない」 


「でも、一万年経ったら出てくるんでしょう? 大丈夫なの?」


「力を封じられ、神域に縫い付けられている間にヴィラコチャの神力はインカの神域に流れ込み、他のインカの神々の力となる。 だから、一万年たったらヴィラコチャは何の力も無いヨボヨボの爺になってるよ」


 俺の話を聞いたエイルは顔を引き攣らせる。


「エグいわね……」


「この島と住民に手を出した罰だ! ホントなら殺されても文句は言えんぞ!」


「まあ、それもそうか。 処でグンディール、から……」


 エイルと話している途中、突然、俺の視界がグニャリと歪み、音も耳の奥で反響してよく聞こえなくなる。

 オマケに体がフラフラして立っていられなくなり、勝利の喜びを顔に浮かべたまま俺は地面に(くずお)れた。


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