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第三十三話

 更新が遅くなって申し訳ありません。

――ギリシア ヘパイスト工房


「駄目だ! 駄目だ! オリハルコンはとても貴重な金属なんだ! 他所に分けられる程の量は無い!」


「其処を何とかなりませんか? ヘパイスト様」


 元ギリシアの知恵の女神ソフィアとギリシアの鍛冶の神ヘパイストとの交渉は難渋していた。

 オリハルコンについての交渉の材料としてソフィアは色々と貴重な金属や魔法の道具を持ってきていたのだがヘパイストはそのどれにも興味を示さなかった。


「しつこいぞ! 何度言われようが幾らソフィアでも譲るわけにはイカン!!」


 だが交渉の最中、ヘパイストがチラチラとソフィアの隣にいる人物をちら見している視線の動きをソフィアは見逃さなかった。

 交渉をスムーズに運ぶ為、ソフィアと同じく元ギリシアの露の女神のパンディアを連れてきていた。


(掛かった! やはりパンディアを連れてきて正解でした)


 彼女は絶世の美貌と永遠の青春を持った女神だがそれ故、ギリシアの最高神ゼウスを始め、他の好色の男神たち(一部女性を含む)に言い寄られていた処、グンディールに助けて貰った経緯で永久の幻想島に移り住んだ。

 であるからパンディアは出来ればギリシアに帰郷したくなどなかった。


 しかし、大恩あるグンディールの為にと言われれば断ることも出来ず、ソフィアに『これを逆に利用すればグンディールの気持ちを自分に向ける事が可能なのでは?』と諭され、嫌々ながらも承諾したのだ。


 ソフィアはパンディアに目で合図を送る。

 『ヘパイストを誘惑せよ』と言う合図だ。


「そないなイケズ言わんと分けてくれませんか、ヘパイストス様~。 そんなんじゃあ、男が廃りますよ?」


 ヘパイストにしなだれ掛かるパンデイア。

 しなだれ掛かったパンデイアの豊満な胸の谷間をチラッと覗き見、生唾を飲み込むヘパイスト。


「うっ! うむ! それもそうだな! だが、タダでとはイカンぞ!」


「それは勿論! ウチらに出来る事なら何でもやらせてもらいます」


 パンデイアは心の中でウンザリしながら愛想笑いを顔に貼り付ける。


「うおっほん! では言うぞ。 パンデイアよ、お前はワシの妻になれ!」


「それは出来ません」


 真顔で即答するパンデイア。


「なんで!? 何でもやると言うたただろ!」


「飽く迄もウチらに出来る事限定です。 それにヘパイスト様、アフロディーテ様と婚姻中に余りに相手にされなかったから武器の発注に工房を訪れたアテナ様を無理矢理手籠めにしようとして溜まっていた精をアテナ様の足に掛けてその所為で子供が生まれたでしょう?

その話が女神の間で広がって、ヘパイスト様の女性人気が零から一気にマイナスになったんですよ?」


「うっ! それはその……若気の至リと言う奴で……」


 しどろもどろで答えるヘパイスト。

 更にソフィアが追い打ちを掛ける。

 

「しかも離婚した後、女神カリス様と再婚しているのでしょう? そのカリス様との夫婦仲はそれなりに上手くいっていると聞きます。 それなのに、今、パンデイアを娶れば亀裂が入り、カリス様との離婚の危機が訪れますよ。 それでも良いのですか? ヘパイスト様」


「……そのカリスとも表面上は仲が良いように見えるが、実際の夫婦仲は冷えきってる。 もうどうしようもない程にな……。 だから、ワシには新しい愛が必要なんだ! パンデイアの愛が! その為にもパンデイアよ! ワシに嫁ぎ妻となるのだ! 幸せにするぞ!」


「二人も不幸な女性を作って何言うてんねん!」


 すかさず反論するパンデイア。

 其処でソフィアがパンデイアの肩を軽く叩き、自分の方に振り向かせる。


「仕方がありません。 パンデイア、ヘパイスト様のお嫁に行きなさい。 これもヘパイスト様と何よりグンディール様の為です」


 さも残念そうに語るソフィア。

 実は彼女、ヘパイストの私生活の情報を手に入れていて、こうなる事も想定済みである。

 グンディールの寵愛を受け、ライバルを減らすまさに一石二鳥のソフィアの作戦。


「ちょっと待ってなソフィア!? 話が違うやん! ウチはグンディール様に嫁ぐんや! それに仮にこのままコイツと結婚しても、この先不幸しか待ってないやんか! ウチ、絶対そんなん嫌やで!」


「とにかく! ワシはパンデイアを嫁にする以外、オリハルコンを渡さんからな!」


 場が混沌とし始めた時、ソフィアが持っていた虹と伝令の女神イリスの宝玉から通信が入る。

 その通信に出るソフィア。


「はい、此方ソフィア……はい………はい、そうですか……わかりました。 ではそのように……」


「どうしたんや、ソフィア?」


「……撤収の指示です。 何でも、オリハルコンよりも遥かに格上の金属が手に入ったようでオリハルコンが必要無くなりました。 残念です」


 ソフィアは心から落胆した。


「まさかソフィア!? こうなる事予想してウチを連れてきたんか!!」


「何の事だか私にはさっぱりわかりません」


「誤魔化すなや! ……でも、オリハルコンが要らんようなったのは助かったわ。 ほな帰ろか」


「待て待て! パンデイアよ、ワシの嫁になる話しはどうした!」


 ソフィアとパンデイアの話しを聞いていた足が不自由なヘパイストが立ち去ろうとする二人の前に先回りして立ちはだかる。


「ああ、ヘパイスト様。 オリハルコンの話しな。 要らんようなったからその話しも無しや」


 パンデイアは肩を竦めて戯けてみせた。

 それを聞いたヘパイストは肩を震わせる。


「巫山戯るな! 今更無かった事になど出来るか! よし! こうなればソフィア共々手籠めにして、我が妻にしてやろうぞ!」


「何で私まで!?」


「策士策に溺れるやな」


「旨い事言ってないで逃げますよ!」


「わかってるて!」


 ソフィアとパンデイアは示し合わせたかのようにヘパイストの片足をそれぞれ左右で蹴りつける。


「ぐぎゃあ!」


 妙な悲鳴を上げて()けるヘパイスト。

 その隙にヘパイスト工房を脱出したソフィアとパンデイアの二人。

 が、その後を不自由な足で追いかけてくるヘパイスト。


「逃がさんぞー!」


「しつこいですね!?」


 ヘパイストの執念に驚くソフィア。


「こんなん、骨折り損のくたびれ儲けや! この件はグンディール様にキッチリ請求するで!」


「同感です!」


 追ってくるヘパイストから懸命に逃げる二人であった。


――永久の幻想島 神々の館 シンジの部屋


 その頃、シンジはベッドの中で寒気を感じていた。


「風邪でも引いたかな?」


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