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第二十四話

「くそっ! どうしてだ! どうしてこれで男に戻らん!!」


 診療所の中にはヒステリックな声が響き渡っていた。

 その声の発生源は、憔悴しきった感じの目が釣り上がってキツそうなおばさんだ。


「爺様、相変わらず上手くいっておらん様だの?」


「……ルーか? 私に何のようです?」


「助っ人を呼んできた。 この病にもある程度詳しい者達だ。 これで少しは治療の目処が立つと思うが?」


「ふん! 私が心血注いで打ち込んでも病の正体を探り当てる事が出来なかったのに、そんな小娘達に何が出来るというのですか?」


 ディアン・ケヒトは尊大な態度でエイル達を卑下する。

 ……おい、いい加減にせんと俺、切れちまうぞ?


 だが、エイル達はそんなディアン・ケヒトの態度を気にする事無く診療所に居る患者達の診察を行なう。


「やっぱりね……。 永久の幻想島と同じ病原体が原因ね。 グンディール、念の為ティル・ナ・ノーグ全体を浄化しておいた方がいいわ。浄化の能力を持つ女神達を呼んで浄化して。 グンディールも念の為、浄化してもらっておいて。 穂先の短剣を持っていればアンタは無敵だけど、万が一って事もあるから。 アンタの女体化なんて勘弁よ」


「で、原因はわかったのか?」


「これはカオテイックウイルスよ」


「カオテイックウイルス?」


 エイルの言葉を引き継いで、アンギティアが説明をしてくれる。


「カオテイックウイルスとは病原体を魔術的な呪いで強化した物で自然界には基本的に存在しません。 しかもこのカオテイックウイルス、ベースとなる魔術はルーン魔術で構成し、しかも死者にも有効に働くとても強力で危険なものです。」


「……治療法はあるのか?」


「ええ、永久の幻想島に薬草があるからそれを調合してもらうようサーガ様に連絡すれば手配をしてくれるはずよ」


「わかった。 頼む。 ……それにしても病気の原因と治療法、わかるの早かったな?」


 顔を俯かせてエイルは語る。


「そりゃあ、この伝染病、永久の幻想島で起こった伝染病と同じで、しかも原因を大体突き止めてたしね。 後一歩で薬が出来るって所で男達は皆死んじゃったけど……。 今回はその経験が生きたって事よ」


「そうか……」


 そこでルーが興奮した面持ちでエイルに質問してくる。


「おお!? では、女体化した余ら男達を元に戻せるのだな!!」


「ええ、問題ないわ」


「これで妖精とダーナオシーが滅びずに済む!!」


 と、とても喜んでいるルーの後ろで何やらドス黒いオーラが立ち上っている。

 その発生源は先程から一言も口を開いていないディアン・ケヒトだ。

 ディアン・ケヒトの手には剣が握られていて、ゆらりゆらりとエイル達の下へ近づいていく。

 不味い!


「エイル! 危ない!」


「えっ!?」


 俺は目にも留まらぬ素早さでディアン・ケヒトとエイル達の間に割って入り、穂先の短剣でディアン・ケヒトの剣を受け止める。


「お前! 何すんだよ!」


「……あってはならない……私以外の者がこの病を治療出来るなど、あってはならないのだよ!!」


 などと目を真っ赤に充血させ狂気に満ちた瞳でブツブツと呟きながら俺やエイル達に斬りかかってくる。

 嫉妬深い激情家だとは聞いていたがここまでとは流石の俺も思ってなかったぞ!

 

「爺様! 何を遣っておる! 彼女達は島の恩人じゃぞ!!」


「黙れ、ルー! 邪魔をするならお前も道連れだ!!」


 ルーがディアン・ケヒトを諌めて止めようとするが聞く耳を持たない。

 駄目だコイツ。 正気を失っている。


「エイル、アンギティア達、取り敢えずこの診療所から出て、ディアン・ケヒトから離れるぞ!」


「わかったわ!」


「「「わかりました!」」」


 俺達はルーがディアン・ケヒトを抑えている間に診療所の外にでる。

 すると何処からとも無く高笑いが聞こえてくる。


「クックックッ! アッハハハハハーーー!! キャッハハハハハーーーーーーっ!!!!」


 俺はその高笑いの聞こえて来た場所を探り当てた。

 果たして、其処にはトンデモ無い奴が立っていた。


「ロキ……!」


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