第二十三話
ルーと色々今後の事を話し合ってると、遠くの方から俺の名を呼ぶ声が聞こえてくる。
「グンディール様ーーーーーー! 何処ですかーーーーーー! 居たら返事して下さーーーい!」
ん? この声……イリスか。
「おう! イリス! こっちだ!」
俺は大声を張り上げ、伝達を司る女神イリスを呼び寄せる。
コイツは昔、ギリシアで神々の連絡役を遣っていたんだがゼウスに言い寄られた上に、そのゼウスの嫁さんのヘラに嫉妬で殺されそうになった所を俺が助けたんだが、行くとこなくて永久の幻想島に住まわせた。
「グンディール様! 良かった! 御無事で! 皆、心配したんですよ」
「ああ、わりぃ。 心配かけたな。 それより、来た早々悪いが直ぐに永久の幻想島に戻って病気治療と魔法に詳しい女神達、そうだな……アンギティア達をこっちに寄越してくんねえか?」
「えっ!? どうしてですか?」
「ティル・ナ・ノーグでも永久の幻想島と似たような伝染病が発生したらしい。 それを調べたいんだ。」
「でもでも、それにはグンディール様の通行許可証が……」
おっと、忘れていたぜ! 俺はヴァルスロットの穂先の短剣を鞘から抜いて切っ先を右人差し指に刺した。 すると直ぐにぷっくりと赤い液体が膨れ上がり、俺はその人差し指で空中に文字を描いた。
それが光り輝いて、やがて実体化する。
「これがあれば治癒と魔法関係の女神達はこっちに渡れる」
「!? グンディール様! もしかして記憶が……」
俺は苦笑いしながら答える。
「まだ完全じゃあ無いがある程度は記憶は戻った。 それより頼んだぞ! あ! 念の為、連絡用の伝令玉一個貸してくれ! それで永久の幻想島に居るサーガ達と連絡を取りたいから」
「わかりました!!」
イリスは俺に『伝令玉』を渡して急いで永久の幻想島に戻って行く。
この『伝令玉』、映像と音声を記録、再生、送信受信する機能を持つビー玉サイズの宝玉だ。
これで遠くにいる者と更新できる優れ物だ。
『伝令玉』は複数個あって何個あるかは俺も知らん。 今度、イリスに聞いてみるか……。
暫くその場で待っているとエイル、アンギティア、メディア、キルケ達が遣って来た。
「グンディール! あんた記憶が戻ったんだって!!」
「イリスにも言ったがまだ完全じゃないんだ」
「一体どうやって!?」
俺は顔を引き攣らせてエイルから視線を逸らす。
「……その件に関して黙秘権を行使する」
ルーにキスされて記憶が戻ったなんて口が裂けても言えるかっ!!
「……まあいいわ。 兎に角、喜ばしい事だわ。 それで、私達を呼んだ用事は何なの?」
「それは余が説明しよう」
ルーが俺達の会話に割って入り事情を説明する。
「ふーん。 男にだけ掛かる女体化する奇病ねぇ。 しかも、永久の幻想島と同じく種族関係なく掛かる原因不明の伝染病、と」
「それを調べてもらう為に呼んだんだ」
「わかったわ。 それじゃあ他の患者も見せてもらえる?」
「では我が国に案内しよう」
ルーの案内で妖精とダーナオシーの首都に道案内してもらった。
――ダーナオシーの首都
想像はしていたがこの国に住む人々は老いも若きも女性ばかりだ。
「ホント、女だけだな……」
「だから困っておる。 男にしか出来ん仕事が滞ったりしてのう……。 特に建築や鍛冶なんかは男が女体化した所為で筋力も衰えてしまってほとんどの者が仕事が出来んようになった」
首都の城下町の診療所に向かう。
其処はルーの祖父、医神ディアン・ケヒト営んでいた。
それを聞いたエイル達は難色を示した。
「あー、出来るなら会いたくないわ。 その人」
「何で?」
「アンタ、まだその辺思い出せてないの?」
アンギティアがエイルが嫌がってる理由を説明をしてくれた。
「医神ディアン・ケヒトは激情家で嫉妬深いんです。 それこそ、自分では治療できなかった患者を完治させた息子ミアハを剣で斬り殺してしまう程に。 しかも、妹である女神アミッドが父に殺された兄ミアハを生き返らせようと薬草を調合しようとした時、邪魔をして結局、蘇生させる事が叶わなかったんです。 ……それに激怒したアミッドはアイルランドから出て、放浪の末、グンディール様と出会い、今は永久の幻想島で私達と共に暮らしています。 ……ですから、アミッドは此処には来ていません」
俺はその話を聞き、顔を顰める。
確かにそんな奴とは俺も会いたくないなあ……。
とは言え、伝染病を研究しているのがそのディアン・ケヒト以外に居ないのだから会わないとな。
「爺様、いるかあ?」
ルーは診療所の入り口から声を掛けて中に入る。
俺達はルーに続いて診療所の中に入っていった。




