第十九話
水晶で出来たセックヴァベックの館。
その館の執務室の椅子に座るサーガ。
そして、そのサーガに報告をするエイル。
報告の内容は勿論、シンジ――グンディールについてだ。
「それで、その後のグンディール様の様子はどう?」
「転生前と変わらずのヘタレですね。 女の子に手の一つも出してませんよサーガ様。 まあ、今はそれでいいんですけどね。 ……問題は神に覚醒した後ですよ」
サーガとエイルは溜息を漏らす。
前世、グンディールが転生する以前、グンディールとただならぬ関係になった女性は彼女達の知る限り心当たりは全く無い。
勿論、サーガやエイルも同様。
グンディールが手を出してくれないから、彼女達は生娘のままだ。
彼女達だけでなく、この島に住む住人でグンディールのお手つきとなった女性は全種族中、誰一人としていない。
だからと言ってグンディールが同性愛者というわけでは無い。
実はグンディール、ムッツリが付く程のスケベで女性達が泉で水浴びやお風呂で入浴しているのを除く趣味があった。
その上、グンディールは面食いでグンディールに覗かれる未婚の女性、特にその回数が多い女性は島一番の美人に認定され、自慢になり、男達からは嫁の貰い手にと沢山名乗りを上げてくる程だ。
その為、若い女性達は今か今かとグンディールが覗きに来る事を待ち望む程だった。
「体に以上は無いのですよね?」
「それは勿論。 毎朝、グンディールのベッドに忍び込むアシ様が元気一杯のグンディールの愚息を確認していますから。 でも、それで良く女性に手を出さないですよね、グンディール」
「彼は妙な所でストイックですから。 情欲に流されず己を保てるのですよ」
「でもでも、それも問題じゃありません? こっちはカモン・ウェルカム状態でお預け食らう雌犬みたいなものですよ!」
「例え方が嫌らしいですよ、エイル。 ……まあ、実際そうなのだけれど。 他に転生前と変わった所は無いですか?」
「……実は、此処だけの話ですけど。 転生前より神力が相当上がっているんです。 以前の約伍、六倍くらい」
「ご、五、六倍って……」
「この数値は最低値です。 神に覚醒したら更に跳ね上がる可能性もあります」
「……その原因は何だと思いますか?」
「東洋の、しかも創造神や最高神クラスの血筋の一族に転生した……と言うのはどうでしょう?」
「東洋……確かウケモチや菊理媛神の出身地、大和――今は日本と言いましたか?でしたね。 創造神は伊邪那岐命の男神と伊邪那美命の女神の二人、最高神はアマテラス。 その三人の内の誰か……あるいは全員の血を引いている可能性もありますね」
「それと、もう一つ。 グンディールの神力が思った以上に速く上がってきています。 ですので、神に覚醒する日も半年早まりそうです」
「そう、それは朗報なのだけれど……。 兎に角、貴女は今まで通りグンディール様の動向を監視、護衛を続けて下さい」
「わかりました」
エイルはサーガに報告を終えると頭を下げ礼をしてから、執務室から出て行った。
サーガは此処最近、胸騒ぎがしている。
世界各国の神、悪魔、魔族等の動きが活発化していると言うイリスからの報告。
そして、アナンケーやノルニル、アンテウォルテ達運命の女神からも警告めいた予言がなされている所為だ。
それは、『神々の復権』。
この地上に再び神々が降臨する事を示唆していた。
その為、一刻も早くグンディールの覚醒が待ち遠しい。
「気の所為、だと良いのだけれど……」
サーガは物憂いげにセックヴァベックの窓の外を見上げていた。




