第十六話
――日本
一方その頃、日本では。
今、シンジが通っていた高等学校では大変な騒ぎになっていた。
学校内で現役の教師が女子生徒に乱暴を働き、二学年では学校の修学旅行中、男子生徒が普段イジメていた別の男子生徒を海に落とし、殺人の容疑の罪で地元警察が突き落とした男子生徒を拘束し、目下突き落とされた男子生徒の捜索に全力を費やしていたが今の処、手掛かりすら見つかっていない。
騒ぎはそれだけではなく、女生徒に乱暴を働いた教師は何と、教頭や校長、果ては理事長とまで結託、金の横領や乱暴した女生徒達を脅して売春行為を働かせていたのを暴露し、全国のメデイアに晒された。
騒ぎの発端となった学校は歴史も古く、日本でも有数の進学校だったので、騒動の大きさは通常の学校のは比ではない。
「まさか、そんな事になっていたとは……。 どうして、ちゃんと儂に報告せなんだ!」
刀部家当主、刀部 夜光は頭を抱えて悩んでいた。
守るべき対象のヤリツカ シンジから守護者であるサキが逆に守られていた上に、サキの身を狙っていたトミノ カゲマサに唆されたツノダ トウガ。
そのツノダはユリに懸想し、ユリを手に入れる為に邪魔者であるシンジを海に落とし命を奪った。
当事者であるサキとユリは床に正座させられ、共に顔を俯かせ肩を落として泣き続けていた。
「これでは御先祖様……武御雷様に申し訳が立たん……。 それに天照大神様や裏皇家、他の守部達にも顔向け出来ん……。 我等は一体どうすれば良いのだ……」
項垂れるヤコウ。
と、其処へ孫娘の三女、ルリアが遣ってくる。
「お爺、シンジ兄の居場所がわかった。 しかも、生きてる可能性が高い」
「何!? ほんとかルリア!!」
「シンジが生きてるのか!?」
「いっ、一体何処に居るの!!」
「私の部屋に来て。 それから説明する」
ヤコウ、サキ、ユリは言われた通り、早速ルリアの部屋に向かう。
ルリアの部屋にはヤコウの妻伊津美、息子で三姉妹の父学、マナブの妻佳奈、三姉妹の兄聖が既に来ていた。
ルリアは世界地図が表示されたパソコンのモニター画面を指差しながら説明する。
「まず、シンジ兄が生きてる根拠。 シンジ兄の体の中にはユリ姉に頼まれて作った発信機が埋め込まれてる」
「何じゃと!? 何という事をしとるんだユリーーー!!」
「ひいぃぃぃーーーーーーっ! ごめんなさい! お祖父様! でも、シンジ君を守るのに必要な処置だったんです! 許して下さいーーーっ!」
ヤコウの剣幕に、反射的にヤコウに許しを請うユリ。
「それでユリはいつでもシンジの居場所が特定できたんだな……」
ジト目でユリを見るサキ。
「……その話しは後だ。 で、ルリア。 それがどうしてシンジ様が生きとる証拠になるのじゃ?」
ヤコウは取り敢えず話しの続きをルリアに促す。
「此処を見て。 シンジ兄が海に落ちた海域付近。 此処から発信機の信号がきてる。 シンジ兄に埋め込んである発信機の電源にはシンジ兄の体から発生する生体電気を使ってる。 だから……」
「死んでおればその信号が途絶えているが、生きているからその信号が発信され続けているというわけか!」
「その通り」
だが其処で何やら疑問を感じた三姉妹の兄、ヒジリがルリアに質問する。
「なあ、ルリア。 発信機の信号受信距離の限界ってどうなってんだ? 幾らなんでもシンジが海に落ちた場所と此処日本じゃあ離れすぎてるだろ?」
「実は発信機と受信機にに布都御魂様の欠片を使ってある。 だから世界中何処でも信号の受信が可能」
驚愕するヤコウ。
「な、な、な、何という事をしとるんだお前は! 布都御魂様は見た目は剣でも、神様なのじゃぞ!!」
目を剥いて怒声をルリアに浴びせるヤコウ。
だがそれを涼しい顔して受け流すルリア。
「布都御魂様に頼んだらくれた」
「……それなならば良い」
すぐに怒りが鎮火したヤコウ。
流石に神様本人が与えたのなら文句の付けようが無い。
「ただ、問題が一つ。 この信号の発信地点。 最近発見された特異点から発信されてる」
「「「特異点?」」」
ルリアを除いた刀部家全員が首を傾げる。
「そう、この場所。 時空の歪みが生じてて、此処を通過しようとするとその場所を一気に跳び越えて、反対側の離れた場所に移動する、まさにその跳び越える途中の場所から信号が発信されてる」
「何と面妖な……」
「それにこの海域にはある伝説がある」
「伝説とな?」
「昔、名もわからない神様が、迫害され、住む土地を追われた者達を匿う為、創造した島がある。 その島の名は……」
「まさか!? 永久の幻想島!!」
「そう。 お爺、知ってるの?」
「知ってるも何も……」
ヤコウは間を開けて語る。
「槍塚家の御先祖様、天照大神様との間に子を成した外なる神、軍手威流様が住まう島じゃ!」
衝撃の事実を語るヤコウ。
これは皇家である国之宮家に連絡を入れなければならない。
そう思ったヤコウは、直ぐに国之宮家へ繋ぎを取った。




