第十四話
昨日は偉い目にあったなあ……。 あの二人から何とか逃げ切ったけど。 今度、会った時はどうしようか?などと考えていた俺が滞在している神々の屋敷の俺の部屋にサーガが訪ねてきた。
「グンディール様に会って貰いたい女神が居るのです」
「俺に? 何で?」
サーガの話しは以下の内容だった。
永久の幻想島で突如、原因不明の男だけに掛かる死の伝染病が萬延した時、その治療に当たった女神の一人、アンギティアがその伝染病を治療出来なかった事でショックを受け、引き篭もりになってしまったそうだ。
そのアンギティアを元気づけてやって欲しいしと頼まれた。
「死病をどうする事も出来なかったのはこの島にいる私を含めて全ての者の責任です。 ですが、彼女は繊細な上責任感が強いので余計にショックを受けてしまって……。 ですので、グンディール様、彼女に会ってあげて下さい」
俺は暫く考えた。
俺がグンディールなのは確か何だろうけど、今の俺はその時の記憶が無い。
だから、そのアンギティアって言う女神の事を俺はよく知らない。
だから俺が会う事で余計に心を傷つけてしまいかねない……。
「難しいですね……。 そもそも会ってくれるかどうかわからないですよ?」
サーガは俺にニッコリ微笑み掛ける。
「大丈夫ですよ。 グンディール様……シンジ様ならきっとアンギティアも心を開きます」
「はあ……会うだけ会ってみますが、あまり期待しないで下さいね?」
「はい、宜しくお願いします。 シンジ様」
――アンギティアの部屋の前
俺がアンギティアに会いに来ると言うので、アンギティアの姉妹、メデイアとキルケが付き添いで付いてくる。
やはり血の繋がった姉妹、姉の事が心配なのだという。
少し迷いはあったものの俺は覚悟を決めてアンギティアの部屋のドアをノックする。
「――はい、どなたでしょう?」
「あの、俺、シンジ――グンディールですけどアンギティアさん、俺と話しませんか?」
「!? グ、グンディール様! も、申し訳御座いません! この永久の幻想島に住む男達を死なせてしまいました! ですので、私は貴方様に合わす顔がありません! どうかお引取りを!!」
「姉様! グンディール様に失礼ですよ! 御部屋から出て来てください!!」
「そうだよー! アン姉ー! 出てきて皆でお話ししようよー!!」
だが、アンギティアは出てこない。
ただ、ただ、ドア越しで『ごめんなさい……、ごめんなさい……』と謝罪の言葉を吐き出すだけだった……。
――深夜 アンギティアの部屋の前
アンギティアはお腹が空いたので、何か食べ物を漁りに台所に向かう為、部屋から出てくる。
此処数年、アンギティアはこのような生活サイクルで暮らしていたそうだ。
「よう、アンギティアさん。 やっと出てきたか?」
アンギティアはビックリして体を硬直させる。
俺は、アンギティアの部屋のドアの横で、座ってアンギティアが部屋から出てくるのをストーカーの如く待ち伏せしていたのだ。
アンギティアは正気を取り戻すと直ぐに自分の部屋に飛び込んだ。
そして安堵の溜息を突くアンギティア。
「へー、此処がアンギティアさんの部屋かあ。 俺、てっきり引き篭もりの部屋みたく、散らかってんのかと思ったよ。 綺麗に片付いてんな」
「!?」
俺はアンギティアが部屋に戻る際、素早く忍び込んでいたのだ!
「グ、グンディール様?」
「おう! 此処ではそう呼ばれてるな! ……最も、俺は神に覚醒前らしいから記憶は無いけど。 それより、俺と話ししようぜ! アンギティアさん」
アンギティアは諦めの溜息を吐き、グンディールと向き合う。
「私と何を話し合おうと言うのですか……? 私はこの島の男達を伝染病から救えなかったっ! 助けられなかった無能な女神なんですよ!!」
俺は頭の後ろを片手で掻きながらアンギティアに言う。
「この島には他に病気の治療が出来る女神がいるんだろ? アンタが自分を責めるのは勝手だが、アンタの言い分じゃあ、その女神達も 責めてるように聞こえるぜ?」
「!? そ、それは! そんな事はっ!!」
「それにだ。 生きもんて言う奴は、例え不老不死でも死ぬときは死ぬ。 俺が育った国では、七十年前に敵国から凄まじい破壊力のある爆弾落とされて都市が丸々一つ吹っ飛んだ。 それが二回あった。 そん時、男も女も、年寄りも赤ん坊も皆死んじまったそうだ。 無くしたもんはもう、取り戻せ無いけど、だからってウジウジしてても始まんねえよ。 大事なのはこれからおんなじ事が起こった時、二度と繰り返さないようにする事じゃあ無いのかい?」
「……グンディール様」
俺は苦笑いしながらアンギティアにオチを言う。
「なんて偉そうな事言ってる俺だけど、おんなじ失敗繰り返してんだな、これが」
「グンディール様あぁぁぁーーーーーーっ!!」
「うおっとお!」
アンギティアは泣きながら俺に抱きついてきた。
「ごめんなさい! ごめんなさいぃぃぃーーーっ!!」
涙、鼻水を流しながら俺に詫びるアンギティア。
「だから、もういいって……。 せっかくの美人が台無しだぞ?」
「うん! うん!」
それから暫く、アンギティアは俺の胸の中で一頻り泣いた。
俺はそんなアンギティアの頭を優しく撫でてやった。
「グンディール様……」
「ん、何だ?」
泣き止んだアンギティアが俺に頼み事をしてきた。
「私に、御体を診察させて下さい」
「えっ! 今から?」
「はい! 駄目、ですか? グンディール様……」
アンギティアは不安そうな目で俺に懇願する。
仕方ないな……。
「ちょっとだけだぞ?」
「はい!」
俺はアンギティアの健康診断を受ける事にした。
しかし、その健康診断で俺は思わぬ発見をする事になる。
なんと! 俺の体から小型の機械が出てきたのだ!
「何でしょうかこれ? 僅かに他の神の神力が感じられますが……」
この機械、形状、大きさからして盗聴器? いや、俺の脈動盗聴してどうするよ? 変態だぞ、そいつ。
と、いう事は残る可能性は一つ、発信機だ。
なんで発信機? 俺、そんなもん埋め込まれた覚え無いぞ? て言うか俺にそんなもん仕込んでどうすんだ?
あっ! そういえば、同級生で幼馴染のユリの奴、俺が何処行っても居場所を必ず突き止めてたな……。
まさか!? これがその仕掛けか!!
「……中、どうなってんだろう?」
「分解するならブリギッテに頼んだほうが良いですよ?」
「ブリギッテ?」
「はい、鍛冶やこういう絡繰なんかも得意な女神なんです」
俺は明日、早速そのブリギッテさんに会いに行く事にした。




