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第十話

 早朝の四時頃って、海鳥まだ寝てるかな?

――修学旅行中 早朝四時頃 客船内 


 私こと、刀部 百合(カタナベ ユリ)は同級生であり幼馴染の槍塚 真司(ヤリツカ シンジ)を探していた。

 シンジ君が朝早く起きて、何処かに行ってしまったまま、部屋からまだ戻ってきていないから。

 せっかくの修学旅行を一緒に二人きりで過ごそうと思ったから――と言う理由だけで無く私はシンジ君の影の護衛役を務めているからだ。

 勿論、それを理由に(サキ)姉さんや妹の琉璃愛(ルリア)を出し抜くつもりもあるけど……。


 シンジ君の家は普通の一般家庭。

 お父さんはサラリーマン、お母さんは専業主婦。

 そしてシンジ君は一人っ子。

 典型的な核家族。


 ただし、その血筋は普通では無い。

 皇家、()いては日本国政府がひた隠しにしているある重大な秘密を持っている。

 実は槍塚家、とある尊い血を引く直系の子孫なのだ。

 その事が(おおやけ)になれば日本どころか世界中が大騒ぎになって、国際問題に発展しかねない。

 

 その為、槍塚家は代々、皇家や時の権力者達が陰ながら保護していたらしい。

 私の家、刀部家もその守り手の一つなのだけど。

 そんな私はシンジ君の専属護衛役でもある。


 私は密かにシンジ君の体の中に埋め込んである発信機で居場所を探す。

 いつ、どうやって発信機を体内に埋め込んだかは私だけのひ・み・つ・♡

 どうやらシンジ君は船外の通路に居るようですね。

 私は早速、シンジ君の居る所へと向かう。


 高校に入学してから暫く立って角田 統牙(ツノダ トウガ)と言う同級生がシンジ君にちょっかいを掛けてきた。

 最初はからかう程度だったんだけど、日を追うごとに酷くなり、最近では暴力を振るったり、お金を要求して恐喝している。

 だから学校では常にシンジ君に張り付いているんだけど……。

 そうしていると、何故かシンジ君に対して、ツノダ君の暴力や嫌がらせが酷くなる一方。

 何でだろう?


 でも、だからってシンジ君に暴力を振るうのを見過ごしていいわけじゃないわ!

 こうしている間にもシンジ君にツノダ君の魔の手が伸びてるかも知れない。

 急いで行かなきゃ!


 私の進行方向には丁度、同じ方向に外国の男性三人が向かってる。

 どうやらこの船に同乗している観光客の人みたい。

 男性客の一人が携帯ビデオカメラで船内の様子を録画している。

 私はその横を通りすぎて先に進む。


 居た! シンジ君だ! 私はシンジ君に声を掛けようとした。

 すると通路の死角になっている角から誰かが飛び出してきた。

 その人物はシンジ君の足首を持つと勢い良く上に持ち上げて、シンジ君を船から下に広がる大海原に真っ逆さまに落としてしまった!


 私は不覚にも一瞬、そう一瞬だけ呆気に取られてしまった。

 でも直ぐに立ち直ると、近くにあった浮き輪を掴んでシンジ君が落ちた海に飛び込もうとした。

 だけどその行為をさっきの男性客達に止めれてしまう。


「離して下さい! 私、シンジ君を助けなきゃいけないんです! お願いします!! 離して下さいっ!!!!」


 私はあらん限りの声を出して叫んでた。

 そんな私を見てツノダ君――ツノダが私の所に慌ててのこのこ遣って来た。


「おい! カタナベよせ! アイツはもう助からない!」


「自分で海に落としておいて何を言ってるんですか! シンジ君が貴男に殺されなきゃならない理由なんて無いはずです!!」


 私は思わず手に持っていた浮き輪をツノダにぶつけた。


「お、俺はただ、お前に振り向いて欲しくて……。 そしたらアイツの入ってる剣術部顧問のトミノが、アイツがいなくなればいいって……。 こうしたら、お前は俺を見てくれるだろうって言われたんだよ!!」


 何を言ってるんだろう彼は! 私が好きなのはシンジ君だ! 例えシンジ君が居なくても彼に好意を寄せるなんて百歩譲ってもあり得ない! 何て幼稚な発想なんだろう! それにまさか、サキ姉さんに言い寄っていた私達の剣術部顧問の富野 景政(トミノ カゲマサ)がツノダをたぶらかしていたなんて!!


 ツノダはさっきの行為を見られていたのだろう。

 男性客は二人がかりでツノダを取り押さえた。


 そして船は進む。

 シンジ君を海の中に置き去りにして……。


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