演じ屋8
遠く幼い頃の話をさせられた。
それはまだ、俺自信が物心もついていないような頃の話だ。
当時このビルは廃墟のプレハブ小屋の下に地下施設を極秘で作り上げており、そこで研究者達が新人類計画をしていた。
街からは強制的に子供達が年々何名かづつ強制的に実験対象として研究所へ送られていた。
その子供達は、研究所の新人類計画のために身体に何か不思議な力を注入されていたらしい。
注入された子供達の大半は、意識不明状態に陥ったり、死亡したりしたとハロルドはいう。
しかし、その時3人の子供が奇跡的にそのような障害にあわなかった。
そして、その子供達は人間の知能を大幅に越え、運動能力も人並みはずれているという結果が出た。
その結果に喜んだ研究者達は施設の中で子供達を育て、兵器として仕上げた。
最初は子供達に人間的豊かな喜怒哀楽は存在せず、研究者達は手間をかけることなく育てていけたのだが、いつの日からか子供達は自我を持ち始め、不信感を持ち始めた。
映像教育の中で動いている子供達は外の世界にいて楽しそうにしているのに何故自分達はこの冷たいコンクリートの中に閉じ込められているのだろう?
そんな思いが子供達の胸の中に渦を巻いていた。
「逃げよう。」
一人の子供がそう発言した。
しかし、そうたやすくは逃げ出せなかった。
警備は厳重で、朝から夜までずっと警備員が巡回している。
監視・防犯カメラもいたるところに設置してある。
だから、その決断から2年も延長してしまった。
「君達はどうやら自我を持ち始め、不信感を抱いていたようだが、幾分物事を分かるようになった年だ。真実を言おう。」
ある日研究者達はそう子供達に告げて、子供達を決して近づけさせなかった地下部屋に連れて行った。
中に入ると、そこには大きな機械と、一人の女性がいた。
しかし、女性は動かない。
「この子はね、君達の母だ。」
そういわれて良く見るように背を押された。
しかし、近くでよく見ると、まだ女性は幼さが残るぐらいの年頃の少女であった。
「この人がお母さん?」
「でも、僕らよりちょっと上くらいの年頃だよ?」
「こんな小さな子から僕らは生まれないよ」
最もな意見だったが、意味は全く違った。
「いいかい?君達に注入された不思議な力の源を維持して、増殖させてくれているのは彼女なんだ。だから、それを注入された君達は、彼女の子供ってことになるんだ。」
「「「ふーん」」」
「そして、更に・・・我々が今のように生活できるのも、彼女のおかげなんだ。」
そこまで聞かされた。
ハロルドにその先を聞いてみるが、ハロルドにもあまりにも幼い日の記憶なのでそれ以上は覚えていないらしい。
「そうなの・・・じゃあ、俺たちはそのマザーを守る兵みたいなものなんだ・・・」
「そう。でも、マザーの心臓は私たちでもあるんだ。」
「何故?」
「私たちはマザーのデータで身体を構成されていて、半分以上は国家のデータです。だからマザーに近づかれないように私たちは自分自身も守らなくちゃいけないんだ。」
「・・・マザー・・・ね。」
俺は改めて自分がそうゆう存在だと知って、ショックを受けた。
「でも、恐れないで。」
そう言い、ハロルドは立ち上がり、扉へ近づいて少し手で押しやりながら歩を振り返り
「私たちも同じ存在です。一人だと思わないで。」
と言い残し、優しく微笑んで部屋から出て行った。
一人取り残された部屋には沈黙の時が流れた。




