演じ屋3
「それはね、感じるんだよ。君のフリズムを。君には素質があるのさ。」
「つまり勧誘か。」
「…僕ら演じ屋は実に人数が少ない。だから人数を増やさなくてはならない。大切なマザーを守るためにも…」
シオンはその時初めて、切なそうな表示を表した。
きっと、冗談ではないのだと思う。
「でも、君はまだ学生だ。未来もあるだろう。だから強制はしない。だけど、一度だけ僕ら演じ屋の姿を見てくれ。今日だ。」
そう言って、シオンは一枚の紙と、腕時計のような無線を俺の手の内に押し込んで去って行った。
訳がわからない俺はシオンの後を追いかけたがシオンはもう家から出ていってしまっていた。
リビングへ戻り、紙を開くと
『今夜10時、虎馬会社のあの高いビルの上で他人の代行をします。いらしてください。』
備考で、朝飯の用意がしてあると書いてあった。
そういえば、なんだかいい香りがする。
まさかと思い、リビングのテーブルの上を見た。
するとそこには、立派な朝飯が置いてあった。
男性が作ったとは思えないような、立派な朝飯が。
「…やられたな、こりゃ。」
俺は苦笑しながら、テーブルについた。
「いただきます。」
何年ぶりだろう、他人にご飯作ってもらうの。
俺はさっさと朝飯を流し込み、学校の特別課外へ出席した。
「・・・で、あるから、無理数は循環しない有限小数なんだ。π=3.1415936535....」
数学先生が何か言ってるけど、俺の頭にはそんなの入ってこなかった。
やっぱ、シオンのとこが脳裏から離れないんだよなぁ・・・。
「おい、歩。どうしたんだ?外ばっかり見つめてさ。」
ふいに隣の席のダチが話しかけてきた。
「うーん・・・ちょっとね。」
「お前が悩んでるなんて珍しいな。あ、そうそう。これ、水廼って人から預かってたんだ。はい。」
「シオン?!」
一瞬戸惑った。
何故、こいつを俺のダチだとシオンは知っていたんだろう・・・。
そう思いながらも、こいつから小さい封筒を受け取った。
感触的には、分厚い。
開いて中を見てみると、トレーディングカードのような物が数枚入っていた。
カードには全く読めない外国語のようなものが刻まれている。
「何だこれ?」
「なんか、非常事態になれば使えるようになるって。だから大切に取っておけって。」
俺にとっての非常事態は家庭崩壊なんだがなぁ・・・。
使用期限過ぎたくない?
「ふーん・・・まぁとっとくわ。」
俺はカードをポケットに突っ込んで、再び授業へ集中した。
さて・・・今日は夜にパーティが始まるぜ。




