演じ屋2
自宅に帰ってしばらくした時、俺はテレビである不思議なニュースを見た。
それは、ある場所で殺人事件があり、記憶喪失になっていると思われる息子に現場検証をさせていた時のことらしい。
警察が、息子がしばらく一人にしてくれと言うので、一人にしていた間にその息子は死んだはずの自分の兄を見たと証言しているのだ。
本当に目の前に実在し、触れることができ、喋って、動いていたという。
誰もが息子の精神状態が悪いと考えていて、精神病院へ向かわせたのだが、精神状態はいたって正常だったという。
だということは、幻覚を見たわけでもないのだろうし・・・。
何かその現場で、実在した人物を見たことになる。
一体、その息子さんは何を見たんだ?
そう俺の中で不思議な思いが引っかかりながらも、俺はそのニュースの真相が公開されるのを待つことにしてニュースが終わるのと同時にテレビを変えた。
「・・・・・・。」
今、家には俺一人。
時刻は12時5分前。
ちょっとだけ気分が良くなりそうな綺麗な月夜だ。
ただ、やはり一人でいるというのは少々寂しい気もする。
一人ぼーっとしてテレビを何気なく見つめていると、ふと、俺の耳に硬いものを叩く音が聞こえた。
それは、まるでノックをしているような気がした。
俺はまさかと思い、唯一近くにある窓に近づきカーテンを開けてみた。
すると、そこには・・・
「猫?」
「ウニャー・・・」
「お前どっから来たんだ?」
黒い小柄な猫は俺の足元に近寄ってきて、家の中に入ってしまった。
まぁ、猫だから仕方ないと思い、とりあえず家の中に入れておいてやった。
今日は少々肌寒いからいいとしよう。
さっさとカーテンを閉めて、俺は猫を連れて二階の寝室へ向かい、夢の世界へダイブした。
猫が何か鳴いていた気もするけど、眠いから勘弁してくれ。
お前と遊んでやっている程俺は体力残ってないんだ。
勉強でカロリー消費するし、学校って意外と精神状態に悪影響が及ぶというか・・・。
とかなんとか言っている内に、俺はいつの間にか眠ってしまっていた。
「うーん・・・」
朝日がまぶしい。
つか、何か重い。
なんだろう、人の重さみたいな・・・それ的な暖かさというか・・・。
とりあえず、息苦しいので俺は一旦目を開けた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
硬直時間約30秒。
俺は目を開いて一日の始まりの朝に、とんでもないものを見た気がする。
だって・・・だって・・・・さ。
「シオン・・・?!」
そう、俺の目の前には幸せそうに眠ってるシオンがいた。
紛れもなく昨日川原で会った、ちょっと変わった劇団員、水廼詩穏。
「シオン―――――――――ッ!!!」
早朝から近所に俺の怒声が響き渡った。
「すみません・・・いや、別にそっち系の趣味とかはないですから。断じて。」
「じゃあなんで俺ん家の俺のベットで俺と一緒に寝てんだよ。」
「・・・昨日、猫拾いましたよね。」
「あぁ、拾った。」
「あれ、私です。」
「ふーん・・・・・・・・・・・・・・・はっ?」
いやいやいやいや、人間が猫になるなんて無理があるだろ。
「あ、疑いましたね?今、絶対疑ったでしょう?」
「当たり前だ。人間が猫になれるわけないだろう。」
「・・・普通の人間ならね。」
俺はその時、シオンの言葉の意味が全く分からなかったが、
この後シオンが見せてくれた真実によって理解した。
シオンは、ベットのシーツを引っ張り上げ、自分の姿が俺から見えなくなるようにシーツの壁を作った。
俺の視界からシオンが消えて、シーツが床に落ちるまでほんの数秒。
そのシーツが落ちた瞬間、俺は目を見開いて驚いた。
「うそ・・・?俺?」
俺の目の前には、俺がいた。
それ以外何もいえない。
呆然としていると、俺の目の前の俺がクスクス笑い出した。
「そう驚かなくてもいいだろう?」
俺は俺に向かって近寄ってきた。
つか、シオンは何処に行った?
何でシオンのいたところから俺が出てくるんだ?
「・・・もしかしてまだわかんないんですか?」
俺が俺にそう言ってきた。
そんなこといわれても分からない。
「シオンだよ。」
そう言い、俺からシオンに変わった。
まぁ、ヅラ外しただけだったが・・・。
「えっ・・・シオン?じゃあ、あの短時間で・・・?」
「君の身長174cm。僕の身長165cm。上げるためにはピエロが使うスティルトって言う竹馬もどきを使用。更に君の肌の色に合わせるために少々メイク。最後に髪の毛かき上げて、歩君の髪型と同じ桂を装着。あとはさっと着替えるだけ。」
そんなに多くのことを短時間で・・・なんて奴だ。
「でも待て。猫はどうやって?」
「人間の変装は実力ですが、猫は『特別な力』で」
「特別?」
「貴方は・・・演じ屋の存在を知っていますか?」
シオンは低いトーンで俺を座った目で喋りだした。
その表情をみていると、俺は何も反抗できなくなるくらい恐ろしさを感じた。
シオンは語った。
演じ屋は、ただの変装屋としてか捉えられていないが、実際は違うらしい。
そもそも演じ屋は一般人がなれるのではない。
ある特定の条件に当てはまる人間だけだという。
「その条件はただ一つ。『ハロルド』とフリズムできる人だけ。」
「フリズム?」
「同じ音素が重なり合って響くとことさ。」
「うーん・・・で?」
「それにより、僕らは演じ屋になる。すると、フリズムが響きあったことがきっかけである特別の力が使えるようになるの。魔法みたいなね。」
「そうか・・・んじゃ、もうひとつ質問だ。」
俺は真剣にシオンを見て、真相を問い詰めた。
「お前は何故、俺の家に来た?」
そう聞くと、シオンはクスリと笑って見せた。




