演じ屋
あなたは、演じ屋を知っているだろうか?
闇に溶け込み、影のような存在の演じ屋を。
その存在はあまりにも希薄すぎて
誰もが気づかずにいる。
俺は、その存在に気づいた。
街のある図書館で見つけた古い本のおかげで。
その本は不思議な雰囲気を出し、俺を引き寄せた。
そして、俺は初めてそこで演じ屋の存在を知った。
彼らは自分代行をするそうだ。
何故、そんな仕事をしているのかは理解できない。
目的でもあるのだろうか?
だとしても・・・何故彼らは身を潜めているのか・・・。
何故なんだ・・・。
そんな考えを思い浮かべながら俺が、学校から帰っているときだった。
俺は川原で、一人の男性を見かけた。
外見からして高校生くらいだと思う。
茶髪の髪をなびかせて、じっと空を眺めていた。
今思えば、その時が彼との最初の出会いだった。
「なぁ、空眺めてて楽しい?」
俺が話しかけると、そいつはゆっくり振り返り、にっと笑ってみせた。
「楽しい。」
そう言うと、また空を見上げた。
俺は、なんとなくそいつの隣に座ってみた。
その時までは気づかなかったが、こいつから甘い香水の匂いがした。
「なぁ、お前初めてみるけど、この街の人?」
「いや、隣町から引っ越してきたばかりだよ。」
「ふーん・・・幾つ?」
「21。」
「そうかー・・・」
意外だ。やっぱり人間は外見だけで判断してはいけないな。
つまり、こいつは童顔なのか。
「君、高校生?」
「あ?あぁ・・・アンタは?」
「ちょっと変わった劇団員。それと、アンタじゃなくて、水廼詩穏。シオンってよんで。」
「あぁ・・・俺は宮崎歩。そっか、劇団員さんね・・・何か舞台とかやった?」
「うーん・・・そんなのやらないよ。」
「やらないのか?」
「まぁ、『台本なしの舞台』って感じかな・・・。」
「は?」
俺はその時、シオンが言った言葉の意味が全然分からなかった。
だが、その意味はすぐに知ることになるのは、この時の俺は知る由もなかった。
しばらく話してから、俺たちは自分の家に帰った。




