『納税は国民の義務である!』
真崎詩織
『納税は国民の義務である!』
新人研修の集合に指定された会場は国営コンベンションセンターの一室。
所在なさげな若輩者達が掲げられたモットーを見つめている。
その中に真崎詩織もいた。
かっちりめのパンツスーツは薄い水色。ぱっちりの瞳は長めのまつげが柔らかさを演出。側頭部高めの位置で一旦、纏め上げたゆるい三つ編み。それを両側でたらしているのでまるで垂れ耳ウサギのようである。
全体的に小動物のような印象を周りに与える少女。
ふんわりとして見える髪とその顔立ち。
そして、視線を下げると細い体。
その華奢な体に感じるものがある者もいるだろう。
そう、凹凸がほぼ感じられない華奢な体だった。
おそらく、18歳という年齢でありこれ以上の身体的成長が大幅に起こるとは考えられない。
幸か不幸か、その小動物のような面差し、華奢な肢体。あとこれで小柄であれば、法的に何の問題もないロリータコンプレックスプレイが可能だったろう。しかし、彼女は高身長コンプレックス。それなりの身長だ。
つまり、その身体的特徴を認めてくれる相手を伴侶として選ぶことになるのであろうことは明白な予測である。
それがこの物語の主人公真崎詩織である。
その内面は、堅実に公務員を目指す安定思考。
彼女はごく一般的な家庭(両親は共働きで祖父母が近所に住んでいて犬を飼っているちょっとやんちゃな弟がいる)に生まれ、地元で平均値の義務過程学校(共学)に通い、その後、公務員職業高等学校を経て、今ここにいる。
平均外の義務過程学校。それは軍学校と王室学院、外国人学校がその枠に入る。
この国は王国であり、王を含め貴族が闊歩する国なのだ。
その国内にあって、真崎詩織は取るに足らないありふれた小娘に過ぎない。
「番号を呼ばれた順に別室へおこしください」
先輩であろうスーツ姿の職員が扉を指し示す。
研修を受ける未来の税務職員たちは受験番号を呼ばれるごとに扉に消えていく。
緊張で周囲の同期同僚達とコミュニケーションすらままならない。
そして彼女が次の扉へと導かれてゆく。