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けんぽう部  作者: 九重 遥
春から夏へ
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9話 神社の吸血鬼

 それは大地を真っ黒に染めるような漆黒の闇と赤き月が爛々と輝いてる夜だった。闇と光、相反する2つのものが調和し、この夜を作っていた。

 逢魔が夜。尋常ではない何かがある。そんなことを感じさせる夜だった。

「今日は月が赤く見えるね。なんでだろう。御影さんとか知ってそうだよなぁ」

 我らが主人公、神代千歳はその赤い月を不気味にも思わず、むしろ明日御影さんに聞くことが出来たと喜んでいた。

「っと、到着」

 石で出来た階段を登り終え、千歳は目的地に着いた。

 中央には石の廊下が、廊下の先には朱色の鳥居と賽銭箱と幣殿が。

 つまり、神社だ。だが、普通の神社ではない。廃社された神社だ。

 役目が無くなり、誰にも管理されること場所。

「来てはみたものの……どうすればいいのだろうね」

 この場所を見てくるように千歳は頼まれたのだ。誰かが、この場所に来ているという情報があったのだ。いかに廃社された神社だろうが、元は神のいる場所。賊や暴徒に荒らされることは避けたい。

 平和的にお引取りをしてもらいたいと千歳がその役目に選ばれたのだ。

「とりあえず、一通り見て回ろうかな」

 ぱっと見る感じでは、神社が荒らされた形跡はない。人の住んでいる気配もない。

 情報があったらしいが、廃社されているとは知らずに参拝した人かもしれない。

 そう千歳は結論づけた。面倒な作業は早めに終わらしたかったのだ。だが、そうはいっても千歳は真面目である。最低限、神社をぐるっと見て回る必要があると思ったのだ。

 小道を通り幣殿の裏側へ。

 そこは、一本の大きな木がある崖だった。普通だったらその景色のはずだった。

「え…………」

 だが、そこにあるものが足されていた。

 翠色のワンピースを来た金髪の女性が木に手を当てて立っていたのだ。

 千歳からでは顔は見えないが、後ろ姿から判断するに美少女と思えた。すらっとした手足にキュッと引き締まったウエスト。女性にしては背が高く、モデルのような体型だった。

 そして、その女性は振り向いた。

「え…………」

 再度、千歳は驚きの声をあげた。

 振り向いた女性は千歳の思った通り美少女だった。目はパッチリと大きく、鼻は高いうえに、顔は小顔で可愛いより綺麗と印象づける顔立ち。金色の長い髪の毛先がくるっと螺旋を描いている特徴的な髪型だった。

 日本人ではなく、外国人。神社という日本の場所にいる外国人の美少女。

 だが、そのことに千歳が驚いたのではない。

「目が……赤い?」

 その美少女の目は赤かった。まるで月のように赤みを帯びて輝いていた。

 美少女は千歳の存在に驚き、そして千歳の方に向かってくる。

「貴方……」

「え? え? 僕は怪しい人物ではなくてですね、あの……」

 何を言えばいいかわからず千歳は変なことを言い出した。

「貴方、見ましたわね」

「え、え?何を」

「わたくしの目を」

「あ!」

 再度、その美少女を見ると目が蒼かった。深い海を思わせる蒼色だった。

「目がさっきまでと違う……」

「ごめんなさいね。気が緩んでましたわ。わたくしも貴方も運が悪かったのですわ」

「体が……動かない?」

 また眼の色が変わる。慈悲の海の色から憤怒のマグマを思わせる赤色へと。それと同時に千歳の体が意志に反して動かなくなっていく。

「大丈夫。命は取りませんわ。ちょっと今日のことをお忘れになるだけですわ」

 そう言って赤い目をした美少女は千歳の首に手をやり、首元が開けるようにシャツを脇にどかした。そして、口を開いた。犬歯が通常より尖ったその口を。

「君は……」

「そう。吸血鬼ですわ。けどご安心を。すぐに忘れますわ」

 千歳の首元に吸血鬼の口が届く一歩手前。

「千歳様。神社の中で婦女暴行とは神をも恐れぬ暴挙ですね」

二人のすぐ後ろにアリアが立っていた。

「ええっ!やってないよ!無罪、無実だよ」

 吸血鬼の手を押しのけて、千歳はアリアに弁明をはかった。

「ええっ!」

 吸血鬼の力で動きを封じたはずなのに、千歳は動き出したのだ。吸血鬼の彼女は理解できず思考停止し動きが止まった。

「で、この女性は誰ですか?」

「えっと、吸血鬼さんらしいよ」

 吸血鬼の力が効かなかった男とメイドロボの証であるセンサーをつけた美少女。

 吸血鬼の少女の脳内にチェックメイトという言葉が流れた。 

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