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けんぽう部  作者: 九重 遥
秋から冬へ
81/129

81話 初代マジぱねぇッスよぉ!

 今日も今日とて部活の日。

 場所は物理実験室。

「そう言えば、初代の話はどうなりましたの?」

 漫画を読み終えたセルミナがふと、そんなことを言った。

「ああ、そう言えば私も気になっていたね」

 勉強してた手を止め、御影も話に乗る。

「んー、ちょっと待ってくれ…………よし、いいぞ」

 パソコンでゲームをしていた緋毬は、切りのいい所でセーブをして、皆の方向へ振り向く。

「んじゃ、アリア。新しいお茶をよろしく。甘いのがいいな」

「じゃあ、ココアがいいな」

 最後に千歳。飲み物のリクエストをする。

「では、ココアで。暫しのお待ちを」

 アリアは一礼して、給仕の準備をする。

 そして、ココアが皆の手に渡り、話が始まる。

「初代の話だっけな。初代の何が聞きたいんだ?」

 事情を知る緋毬が御影とセルミナに問いかける。

「前回、千歳君は神代流の武術は二代目が体系づけたと言ってたよね。では、初代は何をしたのかなと思うんだ」

 神代の歴史の中で正統後継者の名前は三人しか許されていない。その三名は特別視されているのだ。二代目はわかった。なら、初代はということだ。

「うん。そうだね。まず最初に言っておくとね、初代のことについて残っている資料はほとんどないんだ。だから推測の部分も多くなるよ」

 そこで、千歳はココアを一口飲む。

 乾いた口が潤い、糖分が頭に周る。

「神代流は一度途絶えたからなぁ」

 千歳の様子を見て、緋毬は説明にフォローを入れる。

「え?」

「ですわ?」

「うん。前言ったけど、神代流の発祥は飛鳥時代とも戦国時代とも言われるほど昔なんだ」

「確かに。春の時にそう言ってたね」

 御影は過去を思い出しながら頷く。

 千歳が物理実験室の机を粉砕した時、そう説明してたのだ。

「あれは千歳のギャグかなにかだと思ってましたわ」

「ギャグって……」

 セルミナの言い分に絶句する千歳だが、わからないわけではない。

 むしろ、普通の感覚ならギャグ以外何物でもないのだ。

「初代が神代流を起こしたのは飛鳥時代なんだ。だけど、神代流を誰にも教えなかった。だから、そこで神代流は一度途絶えたんだ。で、復活したのが戦国時代」

「初代は誰かに教えようとしなかったのかい?」

 御影の問いに、千歳は首を横に振った。

「教えれなかったんだろうね。二代目が天才なら、初代は天災。突然変異なものだから」

「あれがゴロゴロといたら世界が終わるな」

 緋毬の呆れた声に、千歳は苦笑する。

「くっく、そうだね。暴れる神を退治したという逸話もあるからね。そんな人間が沢山いたら神様も困っちゃうよね」

「神って……」

 そんな馬鹿な御影は思った。

 冗談染みた言い方だったので真偽がわからない。

 対してセルミナは夏に一度説明を受けた。今も信じられない話だが、馬鹿な話と一蹴する気にはなれなかった。自分でも分からない心の判断に戸惑いを覚える。

「初代は蓋世不抜にして万夫不当。森羅万象を操り、神の代行をする者。怪しげな術を使い、数々の奇跡を起こし、遺産を残した。その一つが神代流に伝わる鏡。これがあったからこそ、時代が跨いでも二代目が神代流を継いだんだ」

「あ、あの話についていけないんですが」

「そういう風な話と思っておけ。今この場で常識は無意味だ」

 セルミナの戸惑いを緋毬が切り捨てる。

 千歳にしても今話したことは真実と思っているので助けることは出来ない。自分に出来ることは話を続けることだけだ。

「神代鏡って言うのだけどね、この鏡。神代流の継承の儀にも使われるこの鏡は使用者に力を与えるんだ」

「ということは千歳君も」

「う、うん。そうだよ」

「千歳は華奢なのに力があるだろ。あれは元々の体質ってのもあるんだが、それ以上にこの鏡のお陰だ。神代の力を十全に使える用に体を創り変えられた」

「す、凄いね……」

「まぁ、適性とかあるけどな。誰にでも使えるわけではない。つか、使えない」

「残念ですわ、使ってみたかったのにですわ」

「アリアには何でセルミナ様が力を求めるのか理解出来ないのですが」

 お前、吸血鬼で人より力があるだろと言いたいのだが、セルミナが吸血鬼であることを知らない御影がいるのでアリアはそれ以上言わなかった。

「ええと……」

 空気が弛緩したのを入れ変えるように咳をして空気を入れ替える。

「二代目が八人のライバル達を倒して暇になった後、とある祠で鏡を発見したんだ。そして、神代の名前を継いだ」

 そして、

「だから二代目が神代流の武術の型を作ったのなら、初代は神代の流れを作ったと言えるんだ。だからこそ、僕らは神代流と言っているんだ。神代の流れを汲み、伝え、その技を使う者と」

 そう言って締めくくった。

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