表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
けんぽう部  作者: 九重 遥
春から夏へ
8/129

8話 終わりの始まり

「廃部の危機だ!」

 今日も今日とて部活の日。

 場所は物理実験室。

 春の爽やかな空気の中、緋鞠は千歳を見ながら声をあげた。

「ええっ!」

「おや」

「短い間ですが、皆様と一緒にいられて嬉しかったです」

 緋鞠の声に三者三様の反応をする。

「アリア、諦めちゃだめだよ。一体どういうことなの?」

 部活が始まって1週間も経っていない。

 なのに廃部の危機とはどういうことなのか。千歳は緋鞠に問いかける。

「よくぞ聞いてくれた。千歳のせいだ」

「僕のせい?」

「ああ。自分の胸に聞いてみるといい」

 緋鞠は腕を組み、厳かに千歳に言った。

「ええと………」

 考えてみるが、いっこうに思いつかない。

「千歳様、アリアの知らない間に何かやばいことをしましたか?」

「いや、そんな記憶ないけど」

「本当ですか? ちょっと若さを持て余して、婦女暴行とか女性を無理やり手篭めにしたり、暴力で女性を言いなりにさしたりしませんでしたか?」

「それ全部一緒の意味だからね! そんなことしてないよ!」

「犯罪者は皆そういうのです。しかし、大丈夫です。犯罪者となっても、このアリア千歳様の味方でございます」

「アリアのせいで犯罪者にされそうなのですけど」

「それはそれでございます」

「そうなの!?」

「ええ」

 ウンウンとアリアは頷いた。

 千歳は半分以上納得出来ないが、どうすることも出来ず無理やり納得するしか無かった。

「ということで、私達の答えとしましては千歳様が婦女暴行をした結果、部活の存続が危機になったでいかがでしょう?」

「残念ながら、不正解だ」

「残念なの!?」

「違いましたか、残念です」

「残念って言ってる!!」

 御影は千歳とアリアのやりとりを微笑ましく思いながら、緋鞠に自分の考えを述べる。

「正解は部員が足りないのではないかね?」

「みー、正解」

「あぁ……」

「やっと思い出したか」

 そういえば緋鞠が部員が足りないと言っていた覚えがある。

 ポンと手を打ち、納得の表情を千歳は浮かべる。

 それを見て緋鞠は。

「てめ、なんで正解を聞いてのほほんとしてやがる。部員の確保は千歳の仕事だろうが」

「痛い、痛いよ、緋鞠」

 背伸びをして千歳の頬を引っ張る。餅のように千歳の頬が広がる。

「今月中、つまりあと1週間ちょっとで部員を確保しないと廃部だね。私達の高校は部活を作るのは簡単なのだが、存続はシビアで困るよ。もっと生徒会長が融通をきかしてもいいはずだ。彼女はこれだから困る」

 ぶつぶつと御影が不満を述べる。内容が規則から生徒会長のことになっているが。

「部員って何人必要なんですか?」

「1人だね」

「1人ならまだ簡単ですね」

「その1人を捕まえられないだろうが」

「うぐっ」

 痛いところをつかれ、千歳はうめく。

「幽霊部員でいいなら何人かOK貰ってはいるよ」

「幽霊部員か……」

 千歳は何もやっていないということではない。部活に名前だけの所属ならという返事は貰えてはいる。

 廃部の危機は免れたはずだが、緋鞠の返事は芳しくない。

「最悪、それでもいいが。できたら、ちゃんとした部員が欲しいな」

「やっぱりそうだよね」

 返答がわかっていたのか、千歳は緋鞠に同意する。

「どんな人がいいかなぁ」

「面白いやつがいいな」

 それは難しそうだ。千歳は緋鞠の納得する人物を見つけられるか一抹の不安を宿した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ