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けんぽう部  作者: 九重 遥
秋から冬へ
76/129

76話 千歳様ドギマギ

 今日も今日とて、部活の日。

 場所は物理実験室。

「何でセルミナさんがガーターベルト穿いてるのーー!?」

 千歳の絶叫が響いたのは。

「え? え? 何でそんな悲鳴あげられますの?」

 千歳に指を差され、悲鳴をあげられたのだ。

 セルミナが戸惑うのも無理は無い。

「え? それ? ガーターベルトだよね? ええっ何で?」

 千歳はセルミナの太ももにある黒い一本の線を見ながら声をあげる。

 ガータベルトはストッキングがずり落ちないように腰の辺りからベルトでストッキングを吊り下げて固定する。太もも部分のレース生地とそこから腰にかけて一筋のベルトが非常に妖艶な雰囲気を醸し出すのだ。

「何でって言われましても?」

 何でガーターベルトを穿いただけで驚愕の声をあげられるのか、そっちの方がわからない。セルミナも言葉に困る。

「アリアも聞きたく思います。何故、セルミナ様はガーターベルトを装備しておられるのですか?」

 さも、今までいたように自然に会話に参加してアリア。実際は、今しがた物理実験室に入ってきたわけだが。

「え? 別に校則違反ではありませんよね? アリアも穿いてますし?」

 突然会話に入って来たアリアに、非難されるように問いかけられ、セルミナは混乱しながらも答える。

「そう、それが問題なのです! アリアがイメチェンしようとした矢先にセルミナ様も!」

 アリアにも太ももから腰にかけて一筋のベルトが。セルミナが黒に対して、アリアは白と色違いなのだが。

「え? 別に良いのではなくて?」

 ガータベルトが被っていても問題はない。それがセルミナの見解だ。

 確かに。千歳も最初は驚いたが、特に被ろうと問題はないのだ。アリアがすると思っていただけにセルミナがガーターベルトを穿いてたことに驚いて悲鳴をあげただけだ。まぁ、それも失礼な話だが。

「違います! アリアだけのアドバンテージが害されたのです! それも、千歳様が最初に見てガーターベルトぐへへとなるはずが、先にセルミナ様のを見てしまうとは! アリア、一生の不覚です。こんなことなら、部活の時に初めてお披露目とか悠長なことを考えねば良かったです! 朝一番にお見せすればよかった!」

 授業が終わったのは同時ではあるが、着替える時間を取ったために部活に入るのが遅れたのだ。そのタイムロスが痛い。

「あら、そんなに千歳はガーターベルトが好きですの?」

「ちがっ……」

 セルミナはニンマリと笑う。

 千歳が慌てて否定しようとするが、セルミナがスカートの裾を手に持って、少し上げただけで目線がそこに釘付けとなる。男のさがだ。一本の線の伸びる先が気になってしまうのは。万人の漢がいれば、万人の男が同じ反応をする。千歳のせいではない。

 しかし、受け取った側は別である。

「オーホッホッホ、気分がいいですわ! 千歳がわたくしの美しさに釘付けとなるのは!」

「ちがっ、あれはその……」

 千歳は否定しようとするが言葉が出ない。

 現に行動で示してしまったのだ。見ようとしないと思うほど、目線はセルミナの太ももに行こうとする。

「オーホッホホホ。千歳に罪はないですわ! わたくしの美しさが悪いのですわ」

「ぐぅ、口惜しい! 千歳様、千歳様。アリアもガーターベルトですよ!」

「アリア、ストップ、ストップ!」

 アリアがセルミナに対抗して、スカートの裾を豪快にあげようとするのを千歳が懸命に止める。

「オーホッホホホ。千歳はわたくしのが見たいのですのよ、アリア」

 優雅に勝ち誇るのはセルミナ。

 机の上に座り、足を組み替えるのは天性のさがか。思わず、千歳の視線が釣られる。

「ぐぎぎぎぎぎ!」

 アリアが何処から取り出したのかハンカチを噛みながら呻く。

「ちがっ、つい、つい目がいっちゃっただけだから!」

「ほら! 千歳もついわたくしの美しさに見とれてしまうのですわ!」

「そういう意味じゃないよ!」

 もし、ここに緋毬が居れば、美しさどうこうというより、見せ方、チラニズムの勝利だなと分析してくれるが、惜しむらむは緋毬が今物理実験室に居ないことだ。

「もし、千歳が頼むのならこれからガーターベルトでいてもいいですのよ?」

「頼まないよ!」

「アリアの! アリアのアイデンティティーがぁぁぁ! このままでは千歳様がセルミナ様の足に頬ずりする未来が!」

「そんな未来ないよ!」

「計画ではアリアの足にぐへへへと頬ずりする千歳様が見られるはずだったのに!」

「そんな計画立ててたの!?」

「千歳。ちょっと引きましたわ」

「ここで素に戻るのは酷いよ! セルミナさんわかっててやってるよね!」

「千歳、どうしてもというのならわたくしの足に頬ずりしてもよろしくてよ?」

「しないよ!」

「次! その次はアリアの足で!」

「だから、しないって!」

 緋毬が来るまで永遠と二人に弄られる千歳であった。

 

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