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けんぽう部  作者: 九重 遥
夏から秋へ
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69話 神代昔話

 昔、昔、ある所に神様がおりました。

 慈愛深く、美しい神様でした。

 けれど、その神様が突然狂ってしまったのです。

 原因はわかりません。

 けれど、狂ってしまったのです。

 生きとし生けるものを怨み、殺し、消滅させていったのです。

 人間は困りました。

 元の優しい神様に戻って欲しいと訴えかけましたが、話をすることも出来ませんでした。

 このままではこの地に住む生き物が全ていなくなってしまう。

 そう思ってた時でした、一人の男が現れたのは。

 ふらりとやってきた男は、ここに狂った神がいると聞き、退治に向かいました。

 人間が神様にかなうわけがない。

 それは考えるまでもない当然の摂理でした。人間がどれだけ強かろうと津波や地震や台風には勝てないのです。自然すら勝てない人間にどうやったら神様に勝てるのか。

 男と狂った神様の戦いは三日三晩続いたそうです。

 驚くことに、男は勝ったのです。

 狂った神を封印したのです。男は言いました。『狂った神は俺が封じた。しかし、この場所は怨念で人が住める場所ではなくなった』と。

 人々は男の言った言葉を聞き、住処を変えました。

 そして、戦いの場所は誰も住めぬ土地としてあり続けました。

 それから、数百年が経ちました。

 だが、狂った神様の怨念は未だ解けず、誰も住めぬ土地のままでした。

 そんな時に強い力を持った鬼が一匹この地に近づいてきました。

 何も知らなかったのか、度胸試しのつもりだったのかわかりません。

 だが、その鬼はしてはいけないことをしてしまったのです。

 狂った神の封印を解いてしまったのです。

 狂った神は鬼の体を奪いました。

 鬼の体を得て、鬼神は暴れました。

 復讐です。

 自分を封印した男に復讐したかったのです。

 鬼神は暴れ、暴れ、暴れました。

 たった一つの救いはその場には人間が誰もいなかったことです。怨念の蔓延る場所だったからです。

 鬼は森や山を破壊しつくしました。けれど、怒りが収まりません。破壊するものが少なくなり、場所を変えようと鬼神が思った時。

 また、一人の男がやってきました。

 神を封印した男とは違う男でした。最初の男と比べ、筋肉が凄かったのです。

 筋肉は言いました。『一緒に暴れようぜ。ストレス溜まってるんだろ。俺もだ』と。

 筋肉は鬼神を退治するというよりは暴れたかったのです。バトルジャンキーはこれだから困り者です。

 戦いは三日三晩続きました。

 暴れて、暴れて、暴れまくってお互いが動けなくなるまで戦いました。

 決着はつきませんでした。

 でも、暴れて気分はスッキリとしました。

 気分のスッキリとした鬼神は落ち着きを取り戻しました。そして、怨念の蔓延る場所で静かに暮らしたのでした。

 めでたし、めでたし。


「以上がこの死霊の森の出来た経緯とこれから逢う相手の紹介でした」

 アリアは説明を終えて、ふぅと息を吐いた。

「…………」

 セルミナは半眼でアリアを睨む。

「どうしました?」

「どうしましたも何もありませんわ! 黙って聞いていれば変なことを」

 クワッと目を大きく開き、セルミナは雄叫びをあげる。

 アリアからから語られた昔話。その荒唐無稽と思える話をセルミナは信じていないのだ。

「けど、事実ですよね、千歳様?」

「うん。初代と二代目なんだよね。出てきた男達って」

 その男達のことを考えでもしたのか、千歳は肩を落としうなだれる。

「ほ。本当のことですの?」

 千歳の様子にただならぬものを感じたのか、セルミナは一歩引きながら尋ねる。

「うん。全部本当だよ。魅澪さんって言ってね、元神様の優しい鬼だよ」

「千歳の言うことですから、信じることにしますが……神様で鬼なんて、現代の社会ではありえませんわ」

「吸血鬼様が自分のことを棚にあげまくってますね。アリアから見れば、吸血鬼も神様も鬼も幽霊も同じレベルと考えます」

 アリアとセルミナはじゃれあいがながら森へと進んで行く。

 そして、開けた場所に出た。

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