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けんぽう部  作者: 九重 遥
春から夏へ
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26話 御影の暇潰し

 今日も今日とて部活の日。

 場所は物理実験室。

 そこに緋毬と御影と千歳がいた。

「御影さんの暇潰しって……勉強道具?」

 千歳が半ば驚愕しながら呟いた。

 千歳は勉強が嫌いではないが、やりたいとは思わない作業だ。

 先日、各自暇潰し道具を持ってこいと言われ、御影が持ってきたのはノートと参考書だったのだ。御影はそれを広げ黙々と勉強している。

「ん? どうしたんだい、千歳君?」

 千歳の呟きに反応して、御影は顔をあげる。

「え、いやあの…………」

 御影に直視されて戸惑う千歳。

 唇付近にシャーペンを当てて首を傾げる姿は普段の大人びた表情が変化し、少し子どもっぽい印象を与えるのだ。

 そのギャップに千歳は見入ってしまい少し恥ずかしさを感じる。

「なんで勉強しているのですか?」

 少し照れながらも、千歳は御影に聞く。ふむ、と御影は頷いて。

「なんでと聞かれたら困るけど、私は無趣味でね。時間潰しに勉強がちょうどいいかなと思ったんだ」

「じゃあ普段も、もうちょっと静かにしていたほうがいいですね」

「いや、そのままでいいよ。無音じゃないと集中出来ないわけではない。話をしながら勉強するのも楽しいんだ。勉強が出来て皆と会話できる。これほど楽しいことはないよ」

 会話はわかるが、勉強も楽しいとは。

「ふぁ……真面目なんですね。凄いです」

 千歳は思わず感嘆の声をあげる。

「ふふっ、そう言われると照れるね」

 照れ隠しにシャーペンで頬を掻きながら、御影は千歳の賞賛の声に答える。

 御影は照れてはいるが、まんざらでもなさそうだ。

 だが、ここで終わりではなかった。

 それまで携帯をいじってた緋毬が会話に参加したのだ。

「みーは別に真面目ではないぞ」

「え!?」

「ひー、ひーちゃん!?」

 緋毬が参加したことで口々に驚きの声が出る。

 それを緋毬は睥睨しながら真実を述べる。

「みーは授業中の大半は寝てるか別のことをしているぞ」

「ひーちゃん、しぃー!しぃーだよ、それは!?」

 御影は口に人差し指を当てて秘密、秘密とジェスチャーをするが、すぐ側に千歳がいるので意味が無い。

「秘密ったって、もう色んなクラスで話題になってるぞ」

「嘘!?」

「ただでさえ目立つ容姿なのに、机にクッションを敷いて寝てたら噂にならないとおかしいぞ」

「ぐっ……」

 緋毬の言葉に御影は反論出来ず呻く。授業なぞ睡眠時間は何物でもないと寝る姿はあっぱれとしか言いようがない。当然、噂になる。

「で、でも、千歳君にはこう上手く騙してくれてもいいじゃないか! 年上として出来る女性のイメージを保ちたいんだ!」

「同じ年齢ですよね!?」

 同学年だが、御影の中では千歳は年下のようだ。

「今崩れるのも、後で崩れるのも一緒だろ。むしろ、後の方がタチが悪い気がするぞ」

 御影の考えはわからんと緋毬は首を振る。

「御影さん、授業で寝てるんですねぇ……」

「ぐっ、寝てはいるが、ほらあれだ。成績は悪くはないぞ」

 千歳の何気ない一言に御影は慌てるが、信頼回復を図る。

「みーは頭は悪く無いからな。ぶっちゃけ良い」

「そ、そうなんだ。授業で一々時間をかけて学ぶより、自分で勉強した方が効率がいいからね。だ、だから効率化を図っているわけだよ」

「凄いような凄くないような。でも、よく先生に怒られませんね」

「ふっ、このために先生の弱みを握ってるのさ」

「うわっ……」

 信頼回復失敗。

「ちょっ、考えてみてくれ千歳君。私は別に悪いことはしてないんだぞ。授業を邪魔するわけではないし、否定するわけでもない。ただ睡眠に費やしてるだけなんだ」

「うわっ……」

「また千歳君の好感度が下がってる気がする!?」

 御影は頭を抱えイヤイヤと首を振るが、その長い髪の毛が千歳にバンバンと当たる事実をまだ気がついていない。

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