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けんぽう部  作者: 九重 遥
春から夏へ
19/129

19話 神代千歳2

 場所は物理実験室。

 放課後。

 その場所に残るのは緋毬とアリアと千歳のみだった。

「言ってよかったのかなぁ」

 何を指してるかを言えば、当然神代流のことだ。現代では相容れない武術。それを皆に言ってよかったのか。軽蔑されないか。

「私が判断したんだ。良いに決まってるだろう」

 一切の躊躇なく、緋毬は断言する。

 その返事の頼もしさに千歳は笑う。

「うん。ありがとう」

 幼なじみしか通じない意志の疎通。それが千歳には嬉しかった。

「しかし、本当に変な奴らを引き込んだなこの部活は……」

 緋毬はやれやれと肩をすくめる。

「まさか千歳が吸血鬼というKIWAMONOを連れてくるとは思わなかった」

「セルミナさんは良い人だよ!」

 千歳がバンと机を叩き抗議する。それだけは譲れないのだ。

「わかってる。さっきの言葉に負の意味は無い。だから千歳が打ち明けるのを許したんだ。なめんな」

「うぐぅ……ごめんなさい」

 抗議したはずが、逆に文句を言われる千歳。涙目だ。

 緋毬はそれを冷ややかに見ながら、指折り数える。

「まず、吸血鬼のセルミナ。これは人種が違うだけで普通の人と変わりがないな。強いて言えば腹を空かせて徘徊する程度だ」

「なんかそう聞くと、変に聞こえるね」

「実際、腹ペコキャラですけどね、セルミナ様は」

 緋毬が二本目の指を立てる。

「メイドロボのアリア。この世で唯一と言っても過言ではない心を持ったアンドロイド」

「はい、千歳様をマスターとして、絶対服従の日々を強いられています」

「その言い方、僕が悪役になってない!?」

「壊したら弁償だからな、千歳。こちらは弁護士の用意をしてある」

「壊すのが前提なの!? っていうか普通に考えても払えないよね!?」

「千歳様に殴られた部分が……エラーエラー、シュウリガヒツヨウデス」

「殴ってないよね!? わざとらしい片言だし!」

「千歳様の慌てる姿が何よりのご褒美ですので」

 アリアは頬を染め、顔に手を当てる。

 千歳はそれを釈然としない表情をするが、何も言えないようだ。

 そして、緋毬が指を新しく立てる。

「神代流の胡散臭い千歳……」

「前の話題が続いてるよ!? 胡散臭いのは神代流であって僕じゃないよね!?」

「正統後継者が何言ってやがる」

「うぐぅ」

「そして千歳の幼なじみのわたし。千歳と関わらなければどこにでもいる少女だった」

「いや、竜崎エレクトロニクスの令嬢だからね緋毬は。僕関係なしに一般人のカテゴリーに分けれなれないよね」

「うっせ、それでもセレブ分類だろ。KIWAMONOカテゴリーに分けられなかったよ」

「では、緋毬様は千歳様に関わったことを後悔しておられるのですか?」

 アリアが緋毬に問う。

 緋毬はその質問に鼻で笑った。

「するか。物心ついた時から千歳といるんだぞ。半身みたいなもんだ。嫌とかそういう事情は通り越してる」

「時折、緋毬様と千歳様の絆を羨ましく思うことがあります」

「絆言うな」

「緋毬、照れてる?」

「うっせー、次いくぞ」

 そして、最後の五本目。

「みー」

「御影さん?」

 緋毬は言い、千歳は首をかしげる。

「みーも隠しているが、一般人とは言えない秘密を持ってる」

 緋毬は御影の事情を知ってはいるようだ。

「聞いていいの?」

「本人に聞け。千歳ならいつか話してくれるだろう」

「そっか……」

 緋毬がそう言うのなら、そうなんだと千歳は納得する。

「千歳様はそう言いながら、御影様の拉致監禁、そして拷問の計画を立て始めた」

「モノローグ風に捏造しないでくれる!?」

「次回、千歳様刑務所で頑張る」

「捕まってるし!」

次回3話更新。

『お弁当』

『緋毬とセルミナのお弁当』

『御影とお弁当』

の予定です。

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