6話 友達契約
シュウさん(以下、し)「オフ会かー……」
山田さん(以下、山)「やってたんだってねー……」
し「裏山小太郎だよねー……」
山「え? だれ?」
し「羨ましいよねー……」
山「あんた友達からも言われたでしょ。『やったらええやん』って」
し「……僕の都合で召集かけて僕の都合で僕のために集まってくれる人がどれだけいると思ってるのさ! それに第一、初対面の人たちだらけの空間で場を仕切るなんてそんな高等技術、誰ができるんですか! 酒飲まなきゃ無理だよ! 酔ってないと無理だよ!!」
山「まぁ落ち着け」
し「それに一番最初に待ち合わせした時に、『あ、〇〇さんですか?』って声掛けに行くのがすでに難関だよ! ゾルディック家の門を開けに行くぐらい難関だよ!」
山「違う人だったら困るもんね」
し「それもあるけどさ、そのあと何話したらいいかわかんないじゃん」
山「そっち?」
し「その人が緊張したらよく喋る人で、ずっと喋ってくれる人ならいいよ。でももし互いに緊張しちゃって黙りこくっちゃったら余計に嫌じゃん。早くほかの人来ないかなーなんて言っちゃったら、『あっ……(察し)』になること間違いなしじゃん」
山「ひでぇマイナス思考の妄想やな」
し「常に最低の想像をしておくことで、ハードルを下げるという効果をもたらします」
山「そんな下準備いらねぇよ。準備のしすぎで、行動できてないじゃん」
し「イメージトレーニングした結果の行動です」
山「お前はどっかの軍隊なのか?」
し「人生は戦いだよ山田君」
山「もういいわ」
し「もういいの?」
山「シュウに行動力がないことはよくわかった」
し「そんなことないよ。全然知らないラーメン屋とかによく一人で入るし、一人カラオケとかも行くし、ゲーセンにだって行くし、昔は一人で大阪・京都旅行を敢行したし、大阪に行った時だって20万くらいの貯金だけを持って一人暮らししたわけだし、結構行動力あると思うよ。えへん」
山「ただのぼっち自慢だったけどね」
し「はっ! 謀ったな…」
山「謀ってないよ。ほぼ自爆だよ。それにしても旅行に行く友達とかいないわけ?」
し「いないわけじゃないけど、一緒に行ってくれるんだろうか? 断られそうで聞いたことないや」
山「じゃあ今度聞いてみればいいじゃん。一人で楽しむのもいいけど、誰かと共有する喜びも大事だって偉い人は言ってました」
し「でもなぁ…」
山「(なんだこいつ。めんどくさいな)」
し「考えても見てよ。昔からの幼馴染みと旅行に行くんだよ?」
山「それがどうしたのさ」
し「なんか…恥ずかしくない?」
山「は?」
し「いや、そーゆーBL的な意味じゃないよ?」
山「そんなこと微塵も考えてなかったわ」
し「彼女と行くならともかく、なぜ飛行機とかでも隣同士で座って、電車の中でも隣同士、もちろん寝る部屋も同じ、そして行動するのも一緒。周りから見たら『付き合ってんのかこいつら?』って思われかねないじゃん」
山「お前、絶対それ本人に言うなよ?」
し「……きっとこれまでは見てないはずだから大丈夫。うん。ツイッターでつぶやかなければバレないバレない」
山「まぁ結局は自分のBL的妄想が、ただの腐女子クラスにまでレベルが上がっちゃったから、そーゆーのが恥ずかしいというわけ?」
し「ちげぇし。そんなこと言ってないじゃん。それは事実だけど、今回の問題とは全然関係ありません」
山「違うの?」
し「個人的に、誰かと旅行に行くのが苦手なんだよね」
山「ん?」
し「僕、こう見えて旅行とかにはすごい興味があるんだけど、雰囲気を味わって終わりーみたいなところがあるんだよね」
山「DVD買って満足、みたいな感じ?」
し「そうそう。京都に行った時も、『おー!寺だ!』って独り言言ってたからね。そこまで下調べもしないし、知識も取り入れないから、ノースケジュール・ノープランでとりあえずそこに行ってからの行動ってなるんだよね」
山「それはそれでいいんじゃないの?」
し「一人ならね。食べ物とかにも無頓着だから、ホテルで普通にコンビニ弁当とか食べてたし。でも誰かと一緒だとそういうことできないじゃん?」
山「あーわかるわ。でも一人で気楽ーっていうのがぼっちの原因だもんね」
し「そうなんです。ちょっとさみしいけど、そーゆー窮屈なところと天秤にかけた時に、ぼっちでいたほうがマシ、って考えちゃうのがぼっちなんだよね」
山「友達はいるけど、全然遊んでないもんね」
し「休みが合わないっていうのもあるんだけどさ。申し訳ないとは思ってます。今度飲みに行こうね」
山「見てんのかよ」
し「いや、一応見てたら困るじゃん」
山「見てたらここまでの会話が全部アウトだよ」
し「友達いなくなったらどうしよう。マジでぼっちだよ」
山「プロのぼっちは自分を追い詰めるのが上手いな。もう芸人魂のレベルだよ」
し「誰がワールドクラスのお笑い芸人だよ!」
山「そこまで言ってねぇよ」
おしまい
これ見られてたら、もう金で友達契約してもらおう。