20話 コミュ力
シュウさん(以下、し)「ちょっと聞いてくださいよ」
山田さん(以下、山)「いや、その前に言うべきことがあるんじゃない?」
し「ん?」
山「『ん?』じゃなくて、これ、新年一発目だよ?」
し「あー。あけましておめでとうございます! 今年もよろしくお願いします!」
山「ビックリマークつけても誠実感はどこにもないけどな」
し「まぁいいじゃないですか。これ見てるのなんてごく少数ですよ?」
山「少ない読者を減らすなよ」
し「まぁそれは置いといて」
山「置いておくのか……」
し「つい先日、友達と飲みに行ったんですわ。ほんで一件の居酒屋に突撃。スライド式のドアを開けると、入口で待ってたらしい先客と遭遇。その瞬間、友達が……」
友達 「今待ってる感じっすか?」
し 「!?」
先客 「あ、はい」
友達 「混んでるみたいです?」
先客 「三分くらい待っててって言われましたよー」
友達 「じゃあ俺らは五分くらいっすかね?」
先客 「かもしれないですね」
店員 「お待ちのお客様……ご一緒ですか?」
友達 「別で二人なんですけど席あります?」
店員 「あーちょっと待ってもらえますか?」
友達 「五分ぐらいですか?(笑)」
先客 「アハハ」
店員 「そのくらいですね。先にお待ちのお客さまご案内しますね」
し「……ってことがあってさ。僕はもう隣で愛想笑いを浮かべて立ってるだけでしたよ。完全に友達のコミュ力の高さを思い知らされたね」
山「あんただって接客業してるんだからそれくらいできるようになりなさいよ」
し「友達の職業のせいもあるんだろうけど、どう考えてもあのシーンだけ見たらただのリア充だったもん。あのままナンパするのかと思ってちょっとドキドキしちゃったわ」
山「つまり自分のコミュ力の低さを思い知らされたというわけか」
し「あのくらいっていうのはできて当然なんだろうか?」
山「さぁ?」
し「僕は複雑な駅とかで迷子になっても、そこらへんの人になんて話しかけられないから、案内板とか探したり直感で移動したりするくらいはコミュ力が低いよ。きっと友達はすぐにそのへん歩いてる人とかに話しかけたりするんだろうなって思った」
山「でも同じ職場の人からは『別にシュウさんもコミュ力低いわけでもないでしょ』って言われてたでしょ?」
し「そうだけど、その人だって普通にナンパとかしちゃう人なのよ? そんな人から言われたって……ねぇ」
山「まぁコミュ力の話はもういいや。キリないわ」
し「はい。次は今年の抱負ね」
山「急に新年らしいことをし始めおった」
し「今年はね、もっといろんな人と知り合いたいと思ってます」
山「ほう」
し「圧倒的に友達が少ないので、友達までいかなくても知り合い程度の間柄の人間を増やしたいと思ってます」
山「ナンパすんの?」
し「できねぇよ。えっとねー、マンガ書いてる人とかイラスト書いてる人とかなんか作ってる人と知り合いたい。あとは読者さんと作家さん」
山「かっこよく言うとクリエイターだね」
し「そうそう。創作してる人ね。もちろん作曲もフィギュア作りも創作だよ」
山「なんでそうオタク趣味ばっかり例に上げるのさ」
し「だってオタクですしおすし」
山「はぁ……」
し「それと抱負とは違うんだけど、やってみたいことがございます!」
山「言ってごらん」
し「全然知らない女の子に声をかけて、三千円あげるから赤裸々に自分が体験した恋愛を話してもらいたい」
山「おまわりさーん!」
し「国家権力になど負けない!!」
山「ただの犯罪かナンパかアダルトビデオだよ」
し「そうなんだよね。そこに引っかからなければ大丈夫だと思ってるんだよねー」
山「大前提として、有り余るコミュ力が必要なんぢゃね?」
し「知ってた」
おしまい




