思い出と勉強会
ミーンミンミンミーン
「う…」
夏休みも終盤。俺はセミの鳴き声で目が覚めた。
この時期はムシムシとして、布団にいるのもツラいシーズンであるはずなのに…
「寒っ!!」
俺は寒さに耐えきれず、目を覚ました
「あ、おはよう裕吾」
「寒い!!何やってんの?」
部屋を見渡すと、クーラー&扇風機全開でベッドの周りに保冷剤が大量に置かれていた
「どうですか?涼しいですか?」
「寒いよ!!寒すぎて、鳥肌が立つ勢いだよ!」
「え~?寒いんですか?それじゃあ必殺技が使えないじゃないですか」
「必殺技?」
俺がそう聞くと、雪未がタライとドライアイスを出してきた
「………なにそれ?」
「タライにドライアイスを入れると保冷効果アップ♪」
「俺を殺す気かぁぁぁぁぁ!!」
よい子は真似しないようにしましょう(マジで)
~~~~~~~~~~~
「まったく…朝から殺人事件でも起きるかと思ったよ」
「ごめんなさい…そんな事知らずに」
「まぁいいさ。それにしてもちょっと寒い…」
部屋が冷え込んでいたせいか俺はちょっと寒気を感じていた
「あの…裕吾///」
「ん?」
「さ、寒いなら…私にくっついても…いいよ///」
「え?///」
いきなり雪未がそんなこと言い始めたので、俺は箸を止めた
「だ、だから…寒いならくっついた方がいいでしょ?///」
「いや…それは…///」
雪未は身をくねらせながらモジモジしていた
前に一悶着あってから、俺は雪未の事を意識してしまっていた。
改めて見ると…よくこんな娘と住んでいて、よく平然としてられたな
「裕吾…?」
「あ…いや…(汗)」
「くっついちゃダメ…///」
「うっ…か、勝手にしろ」
「うん。じゃ、勝手にする♪」
ぴとっ
雪未は俺の肩に寄りかかるようにしてくっついてきた
「う///」
「………暖かい?///」
女の子の体温が冷えた身体に心地よく包み込んだ。
そして、女の子特有のいい匂いが…///
「もう…いいかしら?ww」
「うぇっ!?か、母さん!?」
リビングにいきなり母さんが立っていた
「仲良いのはいいことだけど、私の存在を忘れないでね」
「べ、別に忘れていませんよ?早苗母さん(汗)」
「そうそう(汗)」
「ま、2人が仲良いのは前から知ってるしね。これからも楽しみだわww」
「ちょっ…///」
結局、なにかする度にからかわれている俺達だった。
「ところで裕吾、雪未ちゃん」
「なに?母さん」
「もうすぐで夏休み終わるけど、宿題は終わったのかしら」
「あー、もう終わったけど、雪未は?」
「……………」
「雪未?」
ぴとっ
いきなり雪未が腕に絡んできた
「裕吾って暖かいね///」
「雪未……………///宿題終わってないんだね?」
「う………そう…です」
「………勉強するか」
~~~~~~~~~~~
てなわけで、俺は雪未の宿題を手伝うことにしたのだが…
「まぁ…終わってないのはなんとなく予想は出来たんだけどさ」
「終わってない奴が多すぎるだろ!!!!!」
俺は自分の部屋で叫んだ
「もー、うるさいなー」
「でも、今日で終わらせるからいいじゃん」
「私はもう終わってるのにどうしてここに…」
てなわけで、宿題の終わってない奴らで俺んちで勉強会という運びになった。
「というか、お前ら夏休みまでもう3日しかないのに何してたの?」
(小月)「遊んでた」
(黒磯)「遊んでた」
(尾久)「遊んでた」
「アホか!!」
「だから、小岩に助けを求めたんじゃないか」
「そうそう。小岩なら何とかしてくれるよ」
「だからって…まぁ、しゃあないか…」
俺はあきらめて、勉強会を開始することにした。
~~~~~~~~~~~
カリカリ…
なんやかんやで俺達は静かに勉強を…
「ねぇ…みんなに聞きたいことあるんだけど」
「なに?黒磯」
「みんなで恋バナしない?」
「おい。勉強してからまだ1分しか経ってねぇぞ(汗)」
「でも、気になるよね?女の子の初恋とか」
「うんうん。」
ワイワイ…
「女の子ってさ。恋バナとか好きだよね」
「それを言うと怒られるぞ(汗)」
「ところで小岩は初恋とかないわけ?」
「初恋?」
「いや失礼。小岩は城崎っちゃんにフラグを乱立してるから、恋をしたことないか」
「どつくぞ貴様」
「冗談冗談wwさ、勉強するか」
「え?」
いつも俺をつついてくる小月にしては珍しく、素直に勉強し始めた
「お前、今日は絡んでこないのな」
「いやぁw俺もたまには真面目に勉強しないといけないしなww」
なんか不穏な笑いを浮かべる小月。何か考えてるのか
「あ、裕吾…///」
くいっ
「え?」
いきなり雪未が俺の袖を掴んでくる
「この問題が分からないんだけど…教えて?」
「っ……………///」
上目遣いで雪未は言ってきた。う………可愛い///
「ど、どこだ?」
「うん!あのね…」
「むーーー」
ぴとっ
「は?」
すると尾久も俺の袖を掴んでくる
「私もこの問題分かんない…///」
「え?いや先に雪未を教えな」
「私は教えてくれないの?………」
「ぐ……………///」
尾久が子供みたく頬を膨れませて拗ねはじめた。可愛い…///
「でも、二人同時に教えるのはちょっと…」
「じゃあ、私から教えて」
「私も教えてよ」
「いやぁ…こんな展開を期待してたんだよなぁww」
小月は分かってたように言う。
「お前…知っててからかうのを止めたのかよ(汗)」
「俺は小岩の新しいからかい方を発見したのさ」
「お前…」
やっぱり小月は小月であった。
「ねぇ…ここの問題教えてよ~」
「うぅ…(汗)」
~~~~~~~~~~~
「さて、そろそろ休憩するか。」
皆、一区切りついたようなので俺はお茶を用意することにした
「じゃ、俺はお茶用意してくるよ」
「おぉ。頼むぜ」
ガチャ…
「よし。卒業アルバム探すぞ」
「うん♪」
ガサガサ…
小月と尾久は小岩の机を探し始めた
「え…沙紀さん、正孝ダメだよ!勝手に漁っちゃ…」
「え~?由香里ちゃんは気にならないの?小岩の過去」
「それは…気になりますけど…」
「じゃ、小岩に見つかる前に探さないとな」
バコン!
「痛っ!?」
いきなり背後から頭を叩かれてしまった
「お前ら…油断も隙もないな」
「くそぅ。バレたか」
「バレたかじゃねぇ!勝手に漁るな」
「すまんww実は小岩の卒業アルバムを見たくてな」
「あぁ…別に言えば、見せるのに」
俺は机の引き出しから中学のアルバムを出した。
「ずいぶんすんなりと出したな」
「別に隠すようなことないしな」
「今はスキャンダルだらけなのに?ww」
「お前らのせいだよ!!」
俺は自分のクラスのページを開いて、皆の前に見せた。
ページには懐かしいメンツと雪未の写真もあった
「小岩と城崎っちゃんは同じ中学なんだ」
「あぁ。ほら、そこに写真が」
俺は雪未の写真を指さした
「これは2年の文化祭の時かな。喫茶店やってたんだ」
写真にはコック姿の俺とメイド服姿の雪未が写っていた
「………この時から城崎っちゃんってメイド似合うな…」
「……………」
確かにまったく違和感ない。
「確か文化祭の時は雪未がこの服のままお化け屋敷に入ってお化け驚かせた事あったなww」
「裕吾!?///その話は…」
雪未は慌てたように顔を赤くした
「雪未可愛い~ww」
「うぅ…///」
「……………」
しかし、尾久だけはアルバムをじっとのぞき込んでいた
どうしたんだろう?
「尾久?どうした?」
「あ…うぅん。ちゅ、中学の時の小岩もいいなって」
「?」
なんだろう?いつもの調子に見えないのは
「あ、これは何?」
黒磯があるページを見ていた
「あぁ…それは体育祭の時に雪未と一緒に実行委員やったときか」
「わぁ!雪未可愛い」
「可愛いなんてそんな…///」
「でも、それは小岩に言われたかったり?」
「ふぇ!?///そ、そんなこと…///」
「小岩~雪未に可愛いとか言ってよ~」
「はぁ!?///」
いきなり黒磯に囃し立てられて、俺は顔を赤くした
「なんで皆の前で雪未に可愛いとか言わなくちゃいけないんだ」
「じゃあ小岩は雪未ちゃんのこと可愛いとか思わないんだ?」
「それは…」
俺は雪未の方に向き直ると
「べ、別に言ってほしいわけじゃ…///」
「……………」
なんかこれは言わないといけない空気なのか…
しかし、尾久の前でそんなこと言うと恨まれそうで怖い
だが…
「か、可愛いんじゃないか?///」
言ってしまった。
「え~?もうちょっと言い方ないの?」
「皆の前で言えるわけねぇだろうが!!んなこと」
言ってしまったが…可愛いのは事実だ。
でも…尾久は怒ってるだろうなぁ(汗)
チラッ
俺は恐る恐る尾久の方を向くが
「……………」
あれ?尾久は怒ってるどころか、俯きがちな顔をしていた
「お、おい?尾久?」
「え…?」
「大丈夫か?」
「へ、平気…」
どうしたんだ?尾久のいつもの元気さがない
「……………」