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王と王妃の結婚の話  作者: さなみさぎめか
エミリの日々
3/17

 朝食を済ませ、執務室へ向かう。会談や公式訪問など特別な公務がない限り、ギルバートが即位してから欠かさず行ってきた習慣だ。

 最近、その習慣に一つ厄介な習慣が加わった。


「おはようございます、陛下」

「……ああ、エミリ……おはよう」


 ギルバートの自室から執務室に続く廊下で、王妃エミリはにこやかにギルバートに声をかけた。


「今日は午後から雨が降るそうです。きっと遠乗りのご予定は中止ですね」

「……いや、まだ中止になるとは……」


 しかし、外は既に黒い雲が太陽を覆っており、激しい雨が降ることは間違いないだろう。


「いかがですか? 今日は小ホールでお茶でも……」

「悪いが、雨なら予定を一つ繰り上げなければいけない」


 何か言いたげなエミリの視線を感じながら、早々に話を切り上げる。


 挙式から一月が経った。

 エミリはこの一月の間、飽きもせずギルバートに朝の挨拶をしに来るのだ。


 寝室を共にしていないので、朝の挨拶ができないのは分かる。

 だが、何故わざわざ挨拶しに来るのか。

 必ず断られると分かって、何故ギルバートを誘うのか。


 ギルバートは毎朝目覚めると、まず王妃の誘いを断る算段をはじめるようになった。


「健気ですね。毎朝断られるのはさぞお辛いでしょうに」

「……トマス。何が言いたい?」


 ギルバートは隣を歩く執務官を睨み付けた。

 そもそも、臣下達が強引に縁談を進めなければ、自分は毎朝こんな苦労をしなくても良かったのに!

 いずれ結婚するにしても、多少は自分の意見を取り入れてくれると思っていた。

 それが全くかなわず、ギルバートは怒っているのだ。

 そんな状態のギルバートの事など考えず、毎朝現れるエミリも気に入らなかった。


 もう、王妃と言う立場をくれてやったのだ。この他に何を望むと言うのか。

 ギルバートは執務官に辿り着くと、ため息をつきながら仕事を探した。


「繰り上げる予定はありませんでしたね」


 トマスの冷ややかな視線が降り注ぐ。

 この執務官は、国王である自分に容赦がない。


「だから、お前は何が言いたい?」

「いえ、別に」


 実際、王妃から逃げ回るため、毎日仕事にいそしみ、今すぐできる仕事がない。


「城内の視察をしよう」

「……散歩は1刻で切り上げてください。城の者が緊張しますので」


 やはり容赦がない。

 ギルバートは顔をしかめて、椅子に腰をおろした。


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