イマニュエル・カント
やってられるか!
俺が襖を蹴ると、襖が外れ「痛っ!」という声。中から、小柄でふざけたカツラを被った老人がゆっくり起き上がり、カツラの位置を調整した。
俺は頭の中が疑問符で埋め尽くされた中、その枯れ果てた老人を見た。老人は頭の中より外、カツラの位置調整で忙しそうだった。
やがて、ピタッと、カツラが密着したのを確認すると老人は言った。「私はカント、今内観と外観の一致によりカツラの密着完了!んで何怒ってんの?」
・・・生きてるのが嫌だから
カント先生「生きてるのが嫌なら、息を吸わねばいい」
舐めてんのか、ヅラジジイ
カント先生「舐めてはいない、嫌なら生きてるのをやめればいいと」
何の為に生きてるかわからないの!
カント先生「何の為に?それは定義出来ますか?」
定義?知らねーよ、ただ、沢山イイねもらったりさ、サブスクで儲かったりさ、フォロワー100万、いわゆるインフルエンサーとかかっこいいじゃん
カント先生「それは君の格率、マイルールだ」
マイルールで突っ走るのはおかしいか?
カント先生「格率は必ず他の格率と衝突する、その時は、その勝負は何が決めるか?それは多数決ではない、純粋理性」
わけわからんヅラ野郎、何やねん、純粋理性って
カント先生「誰もが従うべきルール」
「君は、マイルールで突っ走っていい思いをしたいと、しかし、その君の格率に誰も従うわけではない。格率は何の為にそれこそあるか?格率の衝突でも、摩擦でも、同調でも、純化の為にある。その純化したルールが純粋理性の認識拡張へと導く。」
わけわからんヅラジジイ
カント先生
「わけわからんも立派な格率、マイルールで走りたいなら、そのマイルールは認識拡張に役立つのか、言語化できるまで走りなさい。必ず転ぶ事になりますから。わけわからんが分かる必要な契機として、さすれば君はわけわからんでは済ませられる事はない、それが認識拡張。そして、少なくとも、今の君は認識拡張の手段を知らない、想像し、表象し、形象化し、客観化するその為になすべきは、格率の純化。」
「はあー400年経っても、人間理性は進捗なしか、戦争も沢山してるしなぁ・・・やっぱりあの本回りくどすぎたかのぅ」
枯れ果て、木枯らしのようなため息をつくと、老人は襖を閉めて、押し入れへもどり、カツラを取るとまた眠りについた。
俺は、もう少し話を聞きたくなった。




