第86話「朝風呂への乱入者」
殆ど寝れないまま朝
ーといっても終始明るいのだがー
と「思って」行動を始める
優雅に朝風呂に入って寝不足の頭と体を叩き起こす
一応、らせん階段入り口には
「男性入浴中につき女性の侵入を禁ず」
と書いた立て看板は置いてきた
が、この【世界】は文字文化がない
なので看板で階段を塞ぐよう
目いっぱい大きなものにしておいた
ジャグジーと電気風呂もあるので
ゆっくり刺激を入れて目を覚ます
「旦那様~~~~~
おはようなのじゃ!」
阿部ちゃんの説教に懲りず
羞恥心皆無の龍神族が乱入してきた
「階段塞いでたんだけど?」
「飛んできたに決まっておろう?
ここの風呂はまだ入っておらぬのじゃ」
いや、踏ん反り返って威張られても、ねえ?
「尖塔と同じく光る苔の明かりを浴びながら
風呂に入れるとは、なんという贅沢なのじゃ」
感想を全裸の女子に仁王立ちで言われても、説得力皆無だよ
「脱衣所にバスタオルあるから
せめて巻いてから喋ってくれ」
「ん?旦那様は昨日から随分気にしておるの
アヤノが怖いのかえ?」
「そういうわけじゃないのよね
節度、ってもんが大事な時もあるのよ、世の中には」
恥ずかしがる節もないのには色気すら感じないものだよ
「ところでなんでここにいると思ったんだ?
日本語読めないよね?」
「起きたら部屋にいなかったからの
旦那様の魔素を探したらここだったのじゃ」
居場所もばれるのか、魔素で
「さっぱりはしたから上がるよ
シャールカーニはごゆっくりどうぞ」
そう言って上がろうとしたら
どっぼ~~~ん
湯船にダイビングしてきたよ、この娘
しかも大の字で
「あべぶべらべぼべ」
彼女は読めないだろうが
立て看板には「電気風呂」って書いてあるんだよね
電気風呂って当てる位置悪いとめっちゃ痛いんだ
電気パルスとかで筋肉が刺激されて
不随意動作もするから
ドラゴンだろうが人サイズなら効果あるんだろうよ
あ、おぼれた
最強のドラゴンも水中での電撃には勝てない、と
見てる場合じゃない
引き上げて横にして・・・とりあえず両頬をひっぱたく
「はっ!我はどうしてたのじゃ???」
おぼれたってより気を失ったのか
「飛び込んだら目の奥に白い光が見えたのじゃ」
飛び込んだ時に電極板の真横に頭が来たのかね
そんなに電流値高くしてないけど、それでも脳に悪影響あったか?
「ほら、知らないものにはこういう危険があるから
何事もちゃんと考えてやらないといけないんだよ
昨日の露天風呂だって3人とも
阿部ちゃんにいろいろ言われてたでしょうに
5000歳より上なんだろ?少しは落ち着きな」
「むぅ~~~~」
頬を膨らませ、ふくれっ面になる
可愛いけどさ、何度も言うが絵面がヤバイ
まあ、仕方ないし、ついでだから入り方を教えておくか
バスタオルを取ってきてかけてやり
電気風呂の入り方を教える
浴槽に腰を掛けさせて
電極板から離れた位置に足を入れさせて
徐々に近づかせる
「びりぴりくるのじゃ」
「足の裏がびくびく勝手に動くのじゃ」
「ふくらはぎがびくびくして動かせないのじゃ」
普通に私と全く同じ反応をしてるから
人化すれば人の構造と変わらんようだな
「実際こうやって危なくないか確認していくってのは
大事だよ
ドラゴンがいくら天下無敵でも
さっきみたいに溺れてしまえば
呼吸が出来ずに死ぬんじゃないか?」
「動けないままなら、そうなるかもしれんのじゃ」
ほらね
「ちゃんということを聞く、解らないことは無理せず聞く
そのために君のところにも長老とか居て
口伝とかあるんじゃないのか?」
少し考えて
「そうじゃの
旦那様の【世界】は我らの知らぬことばかりじゃ
カホル殿と戦ったときもじゃったが
何をされたのかわからんこともある
今後は気を付けるのじゃ」
少しはしおらしくなった、か?
「ところで旦那様?」
「なんだい?」
「隣でぶくぶく言っているのは、何の風呂なんじゃ?」
次に興味が移っただけだったか
そう思った途端、急に悪寒が走った
「せんぱーーーーーーーーいぃぃぃぃ」
地獄の底から響くような声が、階段側から聞こえてきた




