第55話「にげようとした、だがまわりこまれた」
空を飛ぶ敵のことは、想定をしてなかったわけではない
ある程度のことを考えて装甲車には装備をしてきたつもり
だった
あくまで「私自身が対処する」前提で
だが、今現在それを運転しているのは阿部ちゃんで
私は遠くのビルの屋上から見ているわけだ
しかも装甲車は絶賛襲撃中
それも襲って来てるのはドラゴン、だとか
フレイアには一応教えておいた武装だけど
さすがに全速で逃げている最中に使えるものまでは
教えていなかった
アウラムには通用口に大急ぎで向かってもらい
扉を開けて搬入路に逃げ込ませるよう誘導を頼む
「阿部ちゃん、フレイア、聞こえるかい?」
ゴーグルを通して話しかける
「はい、聞こえています!
現在、町に向かっていますが
ドラゴンの群れに襲われています!」
阿部ちゃんが応答してくるが、流石に声が強張ってる
「こっちからも見えてる
阿部ちゃん、通用口開けるから搬入路に逃げ込んで!
それとフレイア!
こっちも援護の準備するけど
フレイアにも使って欲しいものがある」
一度もテストしてない武装が
ドラゴン相手にどこまで効くものか
全く判らないけどやってみるしかない
車両側面後方に設置してある
マルチポッドの使い方を教える
装弾はスモーク弾と催涙弾を選択
それをドラゴンの群れに向かって
交互に間隔を置いて発射する
群れの中で炸裂したそれらは
視界の悪化と目鼻への強烈な刺激を与える
この【世界】のドラゴンがどんな生物かは知らないが
酸素吸ってるし目も鼻もある以上
効果が少しはあって欲しいものだが、果たして
弾倉は当然の如く、自動装填・生成なので
弾切れは心配ないが、あくまで攪乱にしかならない
とにかく装甲車と大豚が搬入路まで逃げ切れば
なんとかなる、だろう
攪乱の効果が出たのか
数匹のドラゴンが蛇行しはじめ群れから遅れている
それでも目視で10匹近く居る大所帯だ
「製作:電磁砲」
屋上にレールガンを作る
ただし、今回のはとんでもなくでかい
おまけに超巨大戦艦の主砲 ―それも恒星間航行する方―
をイメージしただけに、3連装で砲身長が20mほどもある
砲塔も入れたら30m級か?
でかい必要はないのだろうが
未知のものと戦うなら最適だろ?と独り言ちる
艦橋はないので、操作は砲塔内に乗り込む
砲それぞれに席が付いてはいるが
基本フルオートで行けるようだ
モニターを見ると青い点と周りを囲む複数の赤い点
これがドラゴンなのだろう
弥生さんが直接脳内であれこれレクチャーしてくれるおかげで
マニュアル要らずだ
弾選択で「炸裂音響弾」にする
これは魔牛を気絶させたのが爆音だったことから
直撃させても死傷しないだろうと考えて
装甲車にも同じ仕様になるように追加で装備はしていた
ただ今の状況で教えながらでは使えないので、これが初実戦
魔素で生成して3弾同時発射
近接信管だと回避されるとまずいので今回はタイマーセット
距離や高度も含め自動セットなのは凄すぎる
しかも発射は、モニターのタッチパネルに出たボタンだ
押すと、どデカい弾が音もなく目の前から消えた
『あ』
珍しく弥生さんが声を上げた
同時にモニター上の赤い点が、直線状に数個消えた
『アヤノちゃんさんの使う矢と同じく
空気抵抗をゼロにする処理をしていました
ソニックブームが出ない代わりに弾体後方に真空部が出来て
その余波に巻き込まれたドラゴンが叩き落されたようです』
そう告げられた直後、赤い点が一気に消えた
いや、装甲車から少し離れているが一つだけ残っている
タイムラグがあって、連続で3回轟音が砲塔内にも響く
その赤い点は・・・・
こっちに向かってきてる?
『真空波と炸裂音で殆どが脅威外になったようですが
残った1匹は、攻撃元がここだと解ったようですね』
カウンターで弾、撃ち込むか?
『真正面から来ますし、直撃させれば
かなりのダメージかと思います』
「先輩!アウラムさんも拾って搬入路に入りました
全員無事です
大豚も搬入路までは誘導しました」
阿部ちゃんから無事の知らせが入る
「おかえり!
無事で何よりだけど、ドラゴンが1匹
こっちに向かってるっていうから
そのまま地下の魔牛のところまで退避しておいて」
追加で指示を出し、短く「わかりました」と返事が来た
空飛ぶ奴って、障害物ない上に高速度なのが多いから
あっという間に近づいてくるよね
竹刀だけじゃ、サイズ差もあるし対抗できるわけがない
ドラゴンの弱点ってのは逆鱗だとか
ファンタジーでは言うけど
こっちの【世界】でも通用するのかね?
念の為、新しく武器をクリエイトしてから、屋上に上がる




