第40話「魔素水はりんご味」
牛のボスになれ
フレイアは確かにそう言った
「どういうこと?」
ちょっとだけ声が上ずった
牛、それもあんなでっかい魔牛なんてもののボスって・・・
アウラムが続ける
「さっき、わたくしは気絶から回復したら
オスにトドメを刺す、と言いましたわ
ですが、オスが居ないと繁殖ができない
というのを失念していましたの
なので、全部の魔牛が気絶から醒めた状態で
改めてオスをケイ殿が倒すのですわ
そうなればケイ殿がこのオスより強い
と認識させれば、オスごと群れが従うはずですわ」
「群れのボスについて行って、その先が放牧場で
安全で餌があればそこで暮らすでしょう
ただ、繁殖に関してはより強いオスが居ると
わかっててできるかどうか」
悩みながらフレイアはそう言い
アウラムも腕を組んでしまう
「それ、もし女性がオスを倒したらどうなるのかな?」
思い付きを口に出す
「なるほど、オスより強いのがメスだとなれば
そのメスとの繁殖は無理だから今いるオスで
となると言うこと、でしょうか?
そうなると倒すのは男女関係なく誰でもよい
ということになりますね」
フレイアは理解が早い
「戦うのは誰?ですわ?」
アウラムがそう言いながら、3人の顔を見回す
「町人で世話する人、が一番いいんだけど?」
そう言いながらおっさんを見るが
「一人で魔牛を倒せるわけないだろう?」
にべもない
魔牛のボスは、人でなくてもなれないものか?
「少し相談があるんだけど、いいかな?」
「どういう話、ですわ?」
アウラムに声をかけた
「アウラムは妖精と意思疎通ができるよね?
ここで魔牛のボス、妖精に頼めないものかな?」
少し考えてから、こう答えた
「とてもじゃないけど妖精が
魔牛のオスを倒すのは無理、ですわ」
即答だった
少し考えて、再度尋ねる
「例えば、実体化して安全に戦える状態を維持できて
武器として魔牛を倒したようなのを妖精用に作って
持たせたらどうだろう?」
「武器は使い方さえ教えれば使えますわ
でも実体化は魔素の消費が激しいので
短時間しか無理ですわ」
「逆に魔素の供給さえ安定して
武装や安全性さえ担保すれば大丈夫、ってことかな?」
彼女は怪訝な顔をしている
「例えば魔素が欠乏しそうになったら
液体魔素をいつでも飲める、とか出来たら?
常時摂取で副作用とか出るかな?」
少し間をおいて、驚いた声を出す
「液体魔素なんか幻の発掘アイテムですわ!
そんなのどうやって入手するか、ですわ」
「伝承では作る方法があったらしいのですが
わたくしも実際に見たのは数度、それも発掘品でした」
フレイアでもレアケース、ってか
「以前仕えていた先では持っていました
戦闘の後に疲弊した兵士の回復に使うとかで
希釈して使っていましたね」
カホル、どこに仕えてたんだよ
「ちょっと時間貰うけど、少し試してみたいことがあるんだ
それで上手く行けば、アウラムに妖精の管理人を
手配してもらいたいけど、どうだろうか?」
装甲車に戻って数分後
ちょっと大きなウォーターサーバーみたいな
【液体魔素自動生成器】を作ってみた
3人娘を呼んで見てもらう
傍から見れば、某滋養強壮剤の瓶を持っているようにしか
見えないんだけどね
「飲んでみてよろしいでしょうか?」
フレイアはそう言ったのには躊躇ないな
「どうぞ」
開けた方が分からなくて四苦八苦していたので開けてやった
「・・・・・美味しい!久しぶりの味だわ」
なんか、目がうっとりしてませんか?
グリーンアップル風味になるよう、イメージしたんだけど???
「美味しいですわ」
「これはリンゴ、という奴の味では?」
意訳とは言え、こっちにもリンゴがあるわけか
カホルが続ける
「長命種はリンゴを食べることで
長生きしている、と聞きます
フレイアの好物でもおかしくありません」
あれま、偶然
「で、飲んでみて魔素の補給という観点ではどうだろう?」
「これをどれくらいの間隔で
飲めるようになるか、次第ですわ」
アウラムが答える
「一応実際に作って見せるよ」
1分1本で出来る設定で魔術で作った製造機だから
劣化は恐らく皆無
「周囲の魔素さえ十分ある場所なら
この位の速度で出来ていくよ」
まあ、理不尽だよね
魔素さえあれば幻とか発掘品とか
希少アイテムの定冠詞が付いたものを
いとも簡単に作り上げるのだから
3人娘は黙ってしまっていた
度重なる出鱈目で理不尽な出来事に遭遇して
呆れているようだ
「で、では妖精から仕事をしてくれそうなのを募りますわ
でも、その前に確認したいのですが
妖精達が安全に魔牛を倒す方法はあるのですわ?」
いち早く復活したアウラムが尋ねてきた
懸念は当然だよね
一応、プランは話しておくが
実際には妖精達の実体化した状態で作って
試して貰わないと、となるから
その時点でダメと判断したら断ってもいい
そういう条件を伝えると即座に動いてくれた
少し待っていると
小さい光がアウラムの周辺に集まってきて
なにやら説明をしている
そのうち光が徐々に離れていき、2つの光が残った
「2人の妖精が、やってくれることになりましたわ」
そういうと光は徐々に人型になっていき、光らなくなった
人型だが背中に4枚羽根がある、典型的妖精スタイルだ
「アウラムと違って私らの思い描く妖精さんのサイズだね」
「かわいいですけど改めて異世界、って感じがしますね」
気を利かせておっさんに紅茶をふるまっていた
阿部ちゃんがいつのまにか戻っていた
おっさんは、と見ると少し離れた簡易テーブルで
ティーカップ初体験なのだろう
すごい持ち方をしてお茶を飲んでいる
「一般的な妖精ですわ
私達妖精種は、人間と妖精の中間みたいなもので
本当に妖精と言われるのはこの子たちなのですわ」
そういう違いがあるのね
「じゃあさ、液体魔素1瓶だと
1回分としては多すぎたりする?」
「かなりの間、使えると思いますわ」
身体のサイズからして
私らに換算すればドラム缶相当だろうから
オーバースペックにも程がある
さて、この妖精サイズの武器で
安全にあの魔牛と戦えるのか?
私らから見て大型トラックなのに
この子たちから見たら相対的に
高級ホテル1棟くらいにならないか?




