第121話「月の女神」
長い長い、それこそ悠久の時を見てきた女神。
それがここまで悩んで、
そして覚悟を決めようとしている
この【世界】では【名前】を付けることで
解決することもあれば、
変わってしまうこともあるかもしれない。
神である彼女であっても、だ
それでも彼女自身が望むなら、
もし【命名】で彼女に変化が生じたときにはどうするか、
ここまで頼まれて、何もしないのは男がすたる。
そんな気がして、私も覚悟を決める。
女神様に【名前】を付けよう
「君の【名前】はアルテミス、というのはどうだろう?」
「アルテミス?」
「そう、私らのところで地球の衛星の名前を月、って
言うんだけど、その「月の女神」と呼ばれることが多い
神様の名前らしいよ
神として祭られてるのって大昔だったらしいくって
今はそんなにメジャーじゃないみたいなんだけどね」
覚えてる限りの知識をここぞとばかりに吐き出す。
「狩猟や貞潔、生殖や出産とかも司る神とも言うらしい
この世界が地球だとすれば、
この世界を常に見守っている月が君だろう?
生きていくのに必要な事を司る神もそうだ
おまけに地球は生まれて46億年、
月は諸説あるけどそれと同じか、
説によってはそれ以上だとも言われている、
長い長い相棒なんだよね」
「私が一番好きな曲名にも【アルテミス】って入ってるんだ
と言ってもそもそも曲ってわかるかな?」
「君の思考を読んでるけどぉ、
この音の変わるのが音楽なのかなぁ?」
「そうだね。音に合わせて言葉を載せるのも
音楽の一つなんだ。
本当に大好きでもうずっと前の曲だけど、
その曲はこれからも聞き続けると思う
それくらい私が一番好きな曲からも貰った名前、
ってのじゃダメかな?」
頭を振り、潤んだ瞳でこちらを見つめる
「ううん、ボクの名前を付けるだけなのに
そこまで考えて、また君の大好きなものから
【名前】を貰えるのは凄く嬉しいよぉ
ボクは今からアルテミスと自分を名乗るよぉ」
刹那、光が弾けた
本当に目が眩むどころか光で目つぶしを受けた
全然視界が回復せず、下手に動かず手探りをすると
掌が柔らかく握られた
「ありがとう、ボクに【名前】を付けてくれてぇ」
握った手を伝って魔術が発動する
一瞬で視力が回復した
手を握ってるのはJC女神改めアルテミス、だ
「え?アルテミス?なのか??」
「そうだよぉ」
そういう声としゃべり方は確かに駄女神だ
だが、どうした?
「ボクも驚いたのさぁ、フレイア達やメイド隊と同じく
【命名】で身体が変化するとはねぇ」
絶世の美少女だったJC女神改めアルテミスは、
絶世の美女と美少女の間くらいに成長していた
人間でいえば16~19歳くらいか?
大人の女と少女の中間くらい
本当に絶妙な年齢の見た目になっていた
もうJCって呼べないよ
「ほら、これで二人にはかなわない、
なんて言えなくなったねぇ?」
握っていた手を取り、自分の胸を掴ませる
確かに
というよりも気にしてたのか
しかし、まだ綺麗になるなんて末恐ろしいな
「うふふ、心でそう思ってくれると嘘じゃないって
わかるからますますうれしいねぇ」
無邪気に抱き着いてくる
「どうした?キャラ変わってないか?」
「本当に本当に、うれしくて仕方ないんだよぉ
みんなと同じに呼ばれるのもうれしいし、
こうやって身体までも変わって嬉しい
なにより君に【名前】をつけて貰えたってのが
うれしくてねぇ」
そういえば消していた神気が復活したどころか、
色が目くるめく変わってないか?
自分の身体を改めてあちこち見廻しながら
「そうなんだよぉ、赤や青、黄色と本当にせわしなく
変わっていくんだよねぇ
他に逢った神でもこんな神気を出しているのを
見たことないんだよぉ」
「どうなんだろ?身体に違和感とか
力が使えなくなったとかないかな?」
「今のところ大丈夫だねぇ」
「それを聞いて安心したよ」
「やっぱり君はやさしいんだねぇ」
抱き着く腕に更に力が入る
「自分じゃない他の人に
なにが起きるかわかってないってのは怖いんだよ、正直
今のところ無事なら幸いだけどね」
「大丈夫さぁ」
漸く離れたと思ったら、
クルっとその場で回って後ろ手を組む
「ボクは神様だよぉ」
胸を張って言い切った




