第七話 楽しかった
「私、定時制の学校に通ってるんだよ。色々あってね。」
そうメッセージで送られて来たときはびっくりした。
私はいわゆる進学校に通っていて定時制がない。
まわりに定時制の学校あるんだと言うのも含めて、星奈さんのような明るい星のようなひとでも定時制に通うんだなって意味でも驚いた。
「最初それ知ったときびっくりしたよ。星奈さんみたいな明るい星のような人でも定時制に通うんだなって。」
「え?」
「?星奈さん?」
「...あ、ごめん。そんなこと、言われるなんて思わなくて。それに...」
「それに?」
「ううん。なんでもない。今のは忘れて。」
「あ、うん。」
どうしたんだろ。でもこの感じ...姉さんに似てるし、出会ったときにも見たことがあるような...。
ま、今はそんなのどうだっていいか。
パクっとチョコバナナパンケーキを食べる。
おいしいなあ。
「ね、私のパンケーキと莉央のパンケーキ交換しない?」
「交換?どうやって?」
「え、あ~んするんだよ。」
「あ~ん!?」
「ほら、口開けて莉央?」
「ちょっと待って!せめて心の準備を!!!」
「へえ〜?恥ずかしがってるの?お姫様〜」
星奈がニヤニヤしながらそう言ってくる。
あ、あ~んって恋人同士がするものじゃないの!?
「あれぇもしかして莉央って純粋?キス以上のことわかる?」
「え?キス以上???そんなのあるの?」
「あ、純粋だね。私はその純粋さがうらやましいよ。」
「えっと、ありが、とう?」
「うん。はい、あ~ん」
「え、ちょ、ちょっと待って...」
これは、覚悟決めて!そう、覚悟決めるのよ!佐倉莉央!!!
パクっ
甘いいちごの味が口の中に広まる
「おいしい...」
「ふふ、でしょ?」
じゃあといった星奈さんの顔がなぜかニヤニヤしてる。
とてつもなく嫌な予感がする。
「私にあ~んして?お姫様?」
え?私が?星奈さんに?あ~んを???
「それってされるより恥ずかしいじゃないですか!?」
「フッフッフ。さあ、私にあ~んして?莉央?」
だあああああああ!?
そして私は赤面になりながらなんとか星奈さんにあ~んをするのだった。
**************
「じゃあ。私はこっちだからバイバイ〜莉央!」
「うん。バイバイ」
私は星奈さんと反対方向に歩き出す。
今日は楽しかった。いつまでもあんな時間が続けばいいのに。
でもそれは叶わない。そろそろ家に帰らなきゃ。
『良い子』にならなきゃね。
叩かれるのは嫌だし。
そんなことを考えていたからこそ莉央は気づけなかった。
自分と反対方向に歩いていた星奈が実は振り返っていたことを。
そしてひとりごとを言ったことも。
「明るい星...か。 私は全然そんなことないのにね。」
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