第四話 見惚れた。
「...私ね雨が嫌いなんだ。 泣いても誰もきづけないから。」
「...」
何も、言えない。
言葉が出なかった。
見惚れてしまっていたのだ。
星奈さんに。雨が嫌いだと言った彼女に。
その表情があまりにも姉さんに似ていたから。
おかしいな。姉さんは雨が好きなのに。正反対のこと、言ってる人と似てるなんて。
どうしてだろう。 どうして、似ているんだろう。
知りたい、そう思った。
「...私は、雨が好きかどうかはわからないです。きっとどっちでもないです。
でも、私の姉は雨が好きでした。」
「そっか。どうしてか、知ってる?」
「雨が降ると、泣いてても誰にも気づかれないからだと言っていました。」
星奈さんは一瞬驚いた表情をしたがすぐに笑顔に戻った。
「ふふ、教えてくれてありがとう。お姫様。」
それじゃ、傘をさして家に帰るんだよ?と言った星奈さんは立ち去ろうとする。
けれど私は彼女の服を引っ張って行けないようにした。
「?どうしたの?お姫様。」
「やっぱり、似てる。姉さんに。そうやって、無理に笑うところ。」
「は...?」
星奈さんは本当に驚いてるようだった。
やっぱり星奈さんも姉さんも、同じ人なんだ。
周りに無理やり混じろうとして、結局心の中ではついていけてない人。
「そんな生き方してると私の姉みたいに自殺するかもしれないのでやめたほうがいいですよ。星奈さん。」
私は星奈さんの目をまっすぐ見てそう言った。
そして少し間が空いて、星奈さんは大爆笑していた。
「なんでそんな笑ってるんですか?」
「いやぁー?面白くて...フフッ。お姫様って面白いね。
ねぇ、連絡先交換しない?お姫様のコト、知りたくなっちゃった。」
「いいですよ。私もあなたのこと知りたかったので。後、私のこと『お姫様』と呼ばないでください。
私には莉央っていう名前がちゃんとあるんですから。」
「ええ—?どうしてもだめ?」
「駄目です。」
第一章 『雨と私、あなたと君』 終わり
第二章 『首かせがついているあなたは』 へ続く