第三話 雨
ざー ざー
「ざーざー降ってる... 朝から降ってたけどまだ雨、やんでないんだ。」
いつになったらやむんだろ。とは思ってたけどずっと降ってほしいとも思う。
姉は雨が好きだった。だからかな。雨が降ってると姉を思い出す。
こうしちゃいけないと思い、傘をさして家に帰る。
今日は両親はどっちも仕事で夜ご飯は私が作らなければいけない。
確かカレーを作ってくれ。といわれていたはず。
それにしても雨はふっている。一向に晴れそうにない。
...姉さん。 莉花、姉さん。
あーあ。 思い出して来ちゃった。 姉さんのこと。
目の前が歪んで見える。涙がでてきたのだ。
馬鹿だな。姉さんは。
そしてそんな姉さんを思い出して泣く私も馬鹿だ。
たまには家まで傘をささずに行こうか。
こういうときは雨は便利だ。
だって、誰にも泣いてることがバレないから。
顔をうつむきながら歩く。
別に、この世界を受け入れたくないというわけではない。
しょうがないことだって、わかってる。
姉さんが死んだって、残された人は生きなくちゃいけないから。
わかってる、わかってるんだよ。
でも、嫌いだ。 どうしても、私はこの世界を好きになれない。
「こんなところで傘もささずに何してるの?お姫様?」
そう言われた途端、雨に打たれる感触が消えて私は思わず俯いていた顔をあげた。
感触が消えた理由は私が目の前にいる少女の傘の内側にいるからだった。
「泣いてたの? ふぅん。 なんか嫌なことでもあった?」
「いや、誰ですかあなた。 ていうか今私のこと『お姫様』って呼びました...?」
私は思わず私のことを『お姫様』と呼んだ思わず目の前にいる少女から距離を離して言った。
「うん、私はあなたのことを『お姫様』って言ったよ。私の名前は...星奈。」
そう笑顔でいった星奈さんは私に再び近づいて私を傘の内側に入れた。
「あなた不思議な子だね。傘持ってるのにささずに歩いてるんだから。風邪ひくからやめな?」
「たまたまそういう気分だっただけです。気にしないでください。」
「そっかあ。じゃあそういうことにしてあげるね。」
そう言って星奈さんはまた笑った。
「...なんですか。別に私達知り合いとかじゃないですよね?なんで話しかけたんですか?」
「え、なんとなく。」
「なんとなく!?」
思わず声をだしてしまった。少し声が大きかったかもしれない。
「へえ?そんな声もだせるんだ?お姫様は。」
「別に。そんなのどうだっていいじゃないですか。」
少し間が空いて
「...それもそっか。」
と星奈さんはいった。
あれ、私なんか変なこといったか?
「ねぇ、お姫様は雨、好き?」
突然そんなことを言った星奈さんは私じゃないなにかを見るような目でそういった。
なにか、答えなきゃいけないと思った。でも、言えなかった。
「...私ね嫌いなんだ。 泣いても誰もきづけないから。」
そう言った星奈さんはひどく、悲しそうに笑った。