第二話 馬鹿なやつほど世界では生きやすい
今日は雨だった。姉が死んだときとは真逆のような天気だった。
—姉さんはどんな反応をしただろうか。
一瞬そんなことを思い浮かべたがハッ、として傘をさして歩き出した。
土砂降りだ。 こんな中、自転車で学校まで行くやつがいるのだろうか。
もしやっているやつがいるのならそいつは馬鹿だと、私は思う。
そういうことをやるから風邪をひくのだ。本当に馬鹿らしい。
だが、そういう馬鹿なやつのほうが私よりこの世界で生きるのは楽しいと思う。あっていると思う。
馬鹿だから後先のことを考えずに行動する。比べて私のように物事を考えて行動する人たちはそこまで考えなければならない。
だから、嫌いなのだ。こんな世界。
馬鹿はよけいなことを考えないからこそ『今』ばかりを大切にする。あとのことなんでどうでもいいかのように。
結果、後先のことを考える人達が生きづらい状況が自然にできてしまっているのだ。
でも、そんなこと、今となってはどうでもいいか。
「ごめん。もう疲れた。」
姉の遺書にはそれしか書かれていなかった。
...首吊りだった。
第一発見者は私だった。
生気のない目。 冷たい体。 むせ返るほどの異臭。
今でも鮮明に残っている。
姉がどうしてそこまで追い詰められていたのか、私にはわからなかった。
考えているうちに学校についた。いつもどうりの生活が始まる。
勉強して、クラスメイトと交流して、先生の話を聞いて。
ひどくつまらない。
けれど、そんな私の生活はとある女の子と会ったことによって変わった。