双子の姉の婚約者と結婚したくて、姉を亡き者にしました。私は結婚したら幸せになれると思っていたのに……。
「これであなたと幸せになれるのね」
「あぁ、この時を待っていたよ」
「じゃ、行きましょう」
二人の男女が手を取り合い隣国に旅立って行った。
「御姉様ずるい、何で御姉様が王子様と結婚出来るの」とアリーシャが文句を言った。
「仕方ないでしょ、これは家同士が決めた結婚なのです」とマリージュが宥めた。
姉のマリージュと妹のアリーシャは双子の姉妹で、見た目は見分けが付かない程似ている美人姉妹として有名だった。
そして、姉のマリージュが学園の王子様と呼ばれるディーラの婚約者に決まったのだ。
ディーラはいずれ国王となる身で、誰にも優しく見た目も整っていて女性なら誰もが憧れる存在だったのだ。
姉だというだけで、婚約者に決まったマリージュがアリーシャは憎くて仕方なかった。
更にマリージュはしょっちゅうディーラから豪華なドレスやネックレスをプレゼントされていたのだ。
それをアリーシャに自慢して来るので、アリーシャは面白くなかった。
私が姉ならディーラ様と結婚出来たのにと毎日思っていたのだ。
そんなある日の夜、アリーシャが部屋で一人でいると、二階のバルコニーに人影が降り立った。
アリーシャは警戒しながら「誰かいるのですか」と尋ねた。
すると「夜分にレディーの部屋に訪ねて来た事をお許し下さい、私はドナードと言います。是非アリーシャ様にお話が御座います」と男が言うのだ。
アリーシャは男の丁寧な言葉に窓越しに話だけ聞く事にした。
「あなたは姉を恨んでいますね、姉さえ居なければディーラ様と結婚出来たのにと、私が姉のマリージュを亡き者に致しましょう、その代わりこの家に代々受け継がれる宝刀を頂きたい」と言うのだ。
アリーシャは考えた、確かに姉さえ居なくなれば自分が王子様と結婚出来る、そして王子様に愛されて幸せになれると。
「でも、宝刀を持ち出した事がばれたら私は処刑されてしまいます」と言うと、
「大丈夫です、ばれても王家に入ってしまえば捕まる心配は御座いません」と言うのだ。
確かにディーラと結婚してしまえば王家が守ってくれるはずだ。
「解りました、姉を亡き者にした行く末には宝刀を差し上げます」と言った。
すると「契約成立」と男は言って立ち去った。
その夜から数日後、姉のマリージュが行方不明になったのだ。
姉の捜索は内密に行われたが姉は見つからなかった。
その夜、バルコニーにこないだの男が現れた。
「約束は果たした、宝刀を頂きたい」
アリーシャは盗み出した家宝の宝刀を男に渡した。「姉の遺体はどこに?」
「それはあなたが知る事ではない、もう二度とあなたの前には現れないでしょう」といい男は立ち去った。
そして、アリーシャは父と母に呼ばれて部屋に行くと父から言われたのだ。
「マリージュが行方不明のまま見つからない、しかし、王家との結婚は今更白紙には戻せない、アリーシャよ姉のマリージュになりディーラ様と結婚するのだ」と言うのだ。
「今からあたたはアリーシャの名前を捨ててマリージュになるのです、見た目は見分けが付かない程似ているのでばれないでしょう」と母に言われ内心アリーシャは喜んだ。
しかし、表面上は「姉の事は心配ですが家の為にマリージュになりディーラ様と結婚致します」と答えた。
そして、アリーシャはマリージュになりすまし、ディーラと結婚をした。
盛大に国民に祝福され結婚式を挙げ宮殿に入ると、いきなり三人の美女がディーラに駆け寄って来たのだ。
驚いていると、あんなに優しい笑顔を向けていたディーラが冷めた眼差しで私を見て言った。
「以前から言っていたがこれは白の結婚だ。私は一人の女性だけを愛する事は出来ない、この三人は愛人だ。これからも愛人を増やすつもりだし、お前はお飾りだからな」と。
私はショックだった。姉は知っていたのだろうか?でも、今更白紙には戻せない。
だって宝刀を持ち出してしまった事がばれたら罪に問われてしまう。
でも、ここにいれば宝刀を持ち出したのが私だとばれても王家に守ってもらえる。
私はここから逃げられない、一生ディーラ様に愛されずお飾りの妻として過ごす以外に道はなかった。
「今頃アリーシャは後悔しているからし」
「まさか本当に宝刀を盗み出すとはね」
「私を亡き者にしたい程ディーラと結婚したかったのだから幸せでしょ」
「まぁ、結果俺達はこうして幸せになれるんだからな、愛しているよマリージュ」
「愛しているわ、ドナード」